大都市からしめだされた大学と、さびれる自治体が狙った「一石二鳥」。国も後押ししたが、少子化の進行で綻びが……。 ここ数年、税金を使って誘致した大学が撤退を決め、頭を抱える自治体が増えている。「言葉は悪いですが、詐欺に遭ったようなものですよ。相手の負担を軽くしてあげたのに、数年でサヨナラですからね」 西日本の自治体で大学の誘致を担当した職員はそうぼやく。この自治体は過疎化が進み、税収が減り続けたため、私立大学の誘致に活路を見出そうとした。教職員や学生たちが生活すれば、地元にカネが落ちる。定住してくれる人が増えれば、企業も誘致できるかもしれない。ところが、大学は経営不振を理由に数年で撤退。行政は市民から「税金の無駄遣い」と批判され、議会でも「なぜ撤退を認めるのか」と槍玉に挙げられた。首長以下、自治体の職員は、大学に翻意を促す一方で議会への対応にも追われ疲労困憊したという。 トラブルに共通するキーワードは「公私協力方式」だ。地方自治体が土地や補助金の提供を条件に大学を誘致するやり方である。自治体側の狙いは前述したが、大学側にも、より少ない自己負担で新学部を設立でき、学生を呼び込めるメリットがある。だが、その実、公私協力方式で誘致された大学の撤退をめぐるトラブルは後を絶たない。まず、ごく最近、三重県で起こった例からみてみよう。

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