福島第一原発の事故によって数種類の放射性物質が大気中や土壌、海水に漏出しているのは既にご存じの通り。そして事態収拾に関してはまだまだ時間がかかりそうだ、というのが専門家の間でも一致した意見です。

 今回の事故で放出されたのは、放射性ヨウ素やセシウムなどですが、これらの放射性物質はどのような性質をもっているのでしょうか。
 今回は『いまだから知りたい 元素と周期表の世界』(京極一樹/著、実業之日本社/刊)より、原発と深い関わりのある元素の性質を紹介します。
 
■ヨウ素
 常温、常圧では光沢のある黒紫色の固体。昇華しやすく、有毒物質でもありますが、微量のヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に必須の物質です。日本をはじめとした海洋国では海水が源となってヨウ素が供給されますが、内陸国ではヨウ素を摂取できません。そのため、スイス、カナダ、アメリカ、中国などでは食塩へのヨウ素添加が義務付けられています。

 ちなみに、今回の原発事故で注目されたヨウ素131は、ヨウ素の放射性同位体の一つで甲状腺がんの原因となるといわれています。

■セシウム
 セシウムは比較的柔かく、黄色がかった銀白色の金属です。自然界に広く分布し、他のアルカリ金属(セシウム自体もアルカリ金属)に付随して産出しますが、その量は非常に限られています。
 セシウムの粉末は自然発火し、常温の水とも爆発的に反応する危険な物質です。
 安定同位体のセシウム133は原子時計(30~2000万年に一秒しか狂わない精密な時計)に利用されていますが、福島原発の事故で放出された放射性同位体のセシウム137は強いガンマ線を発し、通常は医療用ガンマ線照射用の線源として使われています。

■ジルコニウム
 ジルコニウムは常温、常圧では銀白色の固体で、レアメタルとしても知られています。

 最大の用途は耐火レンガですが、ジルコニウムの酸化物であるジルコニアは透明で、美しい輝きを持つため、模造ダイヤとして宝飾品にも使われます。
 また、金属の中で最も熱中性子の吸収率が小さいため、ジルコニウムの合金は原発などのウラン燃料棒の被膜としても使われています。

 『いまだから知りたい 元素と周期表の世界』には、この他にも様々な元素とその性質、意外な使われ方が紹介されています。

 望ましくないことではありますが、今回の事故は自然界に存在する様々な有毒物質に人々の目を向ける結果となりました。またいつか不測の事故が起こり、聞き覚えのない物質の名前が報道されても冷静に対応できるよう、この世に存在する「危ない物質」について、ひと通りの知識を持っておくべきなのかもしれません。
(新刊JP編集部/山田洋介)

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