青少年有害社会環境対策基本法案 成人ジャンルで活動される作家様へ

著作権について組合の意見

 ここ最近同人誌界でブームになりつつある、プレイステーション2用ゲームソフト「キングダムハーツ」には、ディズニーのキャラクターが多数使用されています。

 まず、あらかじめ著作権法というのは親告罪なのだということをご理解ください。親告罪というのは、著作権所有者がその権利を主張しない限り成立しない法律です。本来「緩さ」や「曖昧さ」で成り立ってきた日本の風土のなかで、慣例的に比較的ゆるやかに解釈され、行使されてきたこの法律も、物事の解釈に「白と黒」といった、はっきりとした解釈を求めがちであり、また、訴訟社会が常となっているアメリカ的な価値観のなかでは通用しにくいと思われます。

 これまでの過程からして、ディズニー社は非常に著作権や商標権に厳しい会社です。今回の「キングダムハーツ」に関しましても、共同開発の立場から、ディズニー以外のキャラクター、ゲームタイトル等にも、著作権ないしは商標権に関する管理が、他の日本作品と比較した場合、よりアメリカ的基準の枠組みで運用されるのではないかと思われます。特に商標権という刑事罰が適用されやすい、グッズ類に関しましては、さらに厳しい基準が適用される可能性が考えられます。

 我々日本から多くの「まんが」や「アニメ」が、世界に向けて配信される一方で、欧米を始めとする世界各地から多くの文化を輸入している今日、「グローバルスタンダード」(汎地球基準)という枠組みの中で、日本的な「緩さ」「曖昧さ」といった価値観で成り立ってきた文化と、欧米的な「白か黒か」といった価値観で成り立ってきた文化の間に、微妙なゆらぎが生じてきたことを我々は認識しつつ、また、そのことによって、昨日までの価値観が今日の価値観でなくなってきているのかもしれないということを、充分に認識してゆく必要があるでしょう。

 以上の特殊な背景を考慮に入れながら、印刷所サイドとしても慎重な対応をしていかざるを得ませんし、場合によっては印刷をお断りしなければならない可能性が生じますことを、あらかじめご了承ください。

2002年5月