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日本のベトナム原発受注 鳩山由紀夫と森喜朗が果たしたのは(下)
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2010年12月 4日 08:00

<主導権争いの鳩山・森>

 この間、政治レベルでは、鳩山政権の仙谷由人国家戦略担当大臣、前原誠司国土交通大臣が5月にベトナムを訪問して原発や新幹線を売り込んだほか、10月にも鳩山氏と松本剛明外務副大臣が最終的な詰め作業に訪越。お膳立てができたところで、菅首相が10月30~31日に公式訪問し、ズン首相との間で、レアアースの開発協力ともども原発建設に合意したもの。
 官民一体による原発商戦での初勝利というわけで、菅首相自身「もっと評価されてしかるべき」と思っているのかもしれないが、先の尖閣での失点が大き過ぎるため支持率アップにもつながっていない。また、高速鉄道(新幹線)ならともかく、原発という特異な商品の輸出には冷ややかな目も多い。放射性廃棄物の処理はいまだ未解決であり、常に事故やテロの危険性と核拡散の問題がある。CO2削減によって温暖化防止につながるというゴア元米副大統領に代表される国際原子力マフィアの主張も、原発の温排水による海水温度の上昇がはるかに深刻という指摘もある。
 それら本質的な問題を別にしても、今回の受注成功は「表の菅・仙谷らより、鳩山・森の働き」(交渉経過を知る関係者)という声がささやかれている。なぜか。
 「2人とも9月に、それぞれメドベージェフ、プーチンと会っているからでしょう」と言うのは、先の畔蒜氏。
 たしかに9月10日、鳩山氏はメドベージェフ大統領、森氏はプーチン首相と会談している。鳩山氏は首相特使として、森氏はモスクワに近い「ヤロスラブリ市建都千年祭」にプーチンの招きで訪露したもの。それが何を意味するのか。
 畔蒜氏によれば、ウラン資源豊富な旧ソ連のカザフスタンからウラン鉱石を調達、それをロシアで原発燃料用に濃縮、精製し、ウラジオストックからベトナムへ輸送すれば互いにハッピーという日露提携である。であればベトナムも日本を受け入れやすい。2人はそのネゴシエーションのために、ロシアの2トップと会ったことになる。
 「プーチンが森氏を大事にしているのはたしか。しかし、鳩山氏がメドベージェフと会ったのはわずか20分。通訳入りだから、実質は10分。『よろしく』程度は言ったとしても、突っ込んだ話はしていないはず。それより、本当の裏の立て役者は、ベトナムに長年食い込んでいる民間人でしょう」(畔蒜氏)。
 ベトナムは共産党一党支配の国。ロシアは旧ソ連時代からの人脈もあるが、日本の政界には見当たらない。ベトナム共産党トップとじかに話ができる隠れた民間人が、日本の政治家をつないだ可能性は十分にある。鳩山、森のどちらが、キーパーソンを抱き込んだか。
 「今後については検討に入ったところで、現段階では白紙状態です」(JINED)というように、建設に向けた段取りは未定。最大の難問は、それぞれ炉型が違う原子炉メーカー3社間の調整だ。12年のロシア大統領選を争うメドベージェフとプーチン同様、鳩山、森両氏の主導権争いが始まりそうだ。

(了)

恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。

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