東京学芸大学教育学部助教授 山田昌弘
「友達親子」という言葉から、我々はさまざまなイメージをめぐらすことができる。キャッチボールを楽しむ男の子と父親、ペアルックを着て一緒に買い物をする娘と母親など。そのような友達親子の姿を否定的に見るか、肯定的に見るかもさまざまである。山田氏は、差異や評価をひとまずは脇に置き、友達親子が増加しているという事実を客観的にとらえ、その社会的背景と友達親子の行方を分析する。 |
潟lクスト・ネットワーク代表 辻中俊樹
親子間の消費文化の共有は、今やティーンエイジャー以上の子どもと親だけではなく、乳幼児とその親を取り込むまでに進んでいると辻中氏は指摘する。中でも氏が強調するのは、消費にかかわる「ことば」、つまりメディア・リテラシーの共有化である。例えば、母親と子どもがテレビの幼児番組を一緒に見ているという場面では、母親にとってそれは子育ての仕事であると同時に、本人の楽しみでもあるという。 |
三菱総合研究所主任研究員 三浦 展
「郊外の親子は友達にしかなれない」と三浦氏は言う。核家族の父親は遠距離通勤のため家庭で子どもと一緒に過ごす時間も少ない。加えて郊外では学歴志向が強いため、親は子どものご機嫌を取って勉強だけをさせようとする。こうした郊外の家庭での親子関係は、もはや「必要に応じて何かをするだけの関係」である。さらに氏は、郊外はすべての人間関係を友達的にしてしまう性質があるという。「なぜなら郊外は、互いに見知らぬ人々が異なる地域からばらばらに集まってきて住んでいる非歴史的な空間であるため、伝統的な地域社会に見られる地縁・血縁、あるいは年齢や職業に基づく支配関係、上下関係がないからだ。つまり、どんな土地から来た人もどんな会社の人もどんな年齢の人も郊外では一人の中流市民として平等になる」。 |
スクールソーシャルワーカー 山下英三郎
ビートルズの音楽、ジーンズに長髪と髭、そして学生運動、そんな社会ムードの中で学生結婚をした山下氏は、まさに「友達親子」を地で行く人である。「そういう時代を生き、新しい様式を取り入れようとする者にしては、子どもが生まれても当然旧来の従属的な親子関係を踏襲することは考えられなかった。子どもは夫婦にとっては新しい仲間であって、決して所有物のように扱われる存在ではなかった」「しかし、私はそのような関係のあり方を少しも恥じる気はない。むしろ、望ましいと思っている。いつもしかめっつらをして言葉さえ交わすこともないまま死別してしまったわが父との関係や、自分が育った会話の乏しかった家庭に比べると、己が今営んでいる家庭の方がはるかに気に入っている」。 |
千葉大学教授 宮本みち子
宮本氏は、なぜ子どもが大人と対等な消費者になれるのかを、家庭内での子どもの地位の変化という切り口で分析していく。家族の収入が家族全体の生活の維持に当てられていた時代から高度成長期を経て、家計は「個計」へと変化した。つまり、家族メンバーが個人のお金を持ち、自分で管理する傾向が家庭の中に生じることになる。加えて、現代の家庭内では、養育・教育費の比重も増し、レジャー、ショッピング、旅行などあらゆる家族の活動は子ども中心、子ども主導型になっている。それに祖父母からの金銭の援助が加われば子どもは容易に消費者になれるわけだ。 |