第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

(解説)抑止について

 一般に、抑止とは、「相手が攻撃してきた場合、軍事的な対応を行って損害を与える姿勢を示すことで攻撃そのものを思いとどまらせる」軍事力の役割とされる。抑止が機能するためには、抑止する側に、軍事的対応を実行する意図と能力があり、かつ、それが相手に正しく認識されることが必要であるとされる。こうした意図と能力に信頼性を持たせるためには、想定される攻撃などのレベルに応じた、さまざまな能力を整備しなければならないと考えられている。
 こうした抑止概念は、懲罰的抑止と拒否的抑止に分類されることが多い。懲罰的抑止とは、耐えがたい打撃を加える威嚇に基づき、敵のコスト計算に働きかけて攻撃を断念させるものであり、拒否的抑止とは、特定の攻撃的行動を物理的に阻止する能力に基づき、敵の目標達成可能性に関する計算に働きかけて攻撃を断念させるものである。また、手段に着目して、核兵器による核抑止、通常兵器による通常抑止とも分類される。
 米国は、核および非核の打撃力や防衛能力を含め、あらゆる種類の軍事力により抑止を総合的に実現する能力を保有している。10(平成22)年発表された「核態勢見直し」(NPR:Nuclear Posture Review)においても、核兵器のみならず、通常戦力やミサイル防衛を包含した抑止概念を提示しており、これらの能力を自身に対する攻撃の抑止(基本抑止)だけでなく、日本などの同盟国に対する攻撃の抑止(拡大抑止)の中核として位置づけている。
 
抑止について

 

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