道田泰司 2001.09 批判的思考の諸概念−人はそれを何だと考えているか?− 琉球大学教育学部紀要, 59, 109-127.

批判的思考の諸概念

−人はそれを何だと考えているか?−

道田泰司

Various Concepts of Critical Thinking

--What do they think it is?--

Yasushi MICHITA

 本論文では,さまざまな研究者が挙げている批判的思考の定義を列挙することにより,批判的思考の定義を考えるうえでの基礎資料を得ることを目的とした。諸研究は便宜的に,初期の研究,その後に出された定義に関する研究,心理学者の定義,日本人の定義,心理学以外の分野における定義,という観点によって分類した。中には筆者なりのコメントもつけているものもあるが,それは最小限とした。それらを大まかに踏まえ,現時点で筆者が,批判的思考の定義に関して,どのように考えているかを,最後に論じた。

 

1.はじめに

 多くの研究者が指摘するように,批判的思考(critical thinking)の概念は,研究者によってさまざまなものがあり,一致をみてはいない(Beyer, 1985; Ennis, 1962; Kennedy, Fisher, & Ennis, 1991; McPeck, 1990)。このことは,一面では批判的思考という概念がもつ豊かさやふところの深さを反映していると考えることもできる。しかしやはり,そのおかげで,研究者間で批判的思考のイメージにズレが生じ,批判的思考に関する議論がうまくかみ合わなかったり,あるいは,批判的思考のイメージがつかみにくいという問題点が生じる。したがって,批判的思考の概念を整理することは,批判的思考研究を進める上で重要なことだと思われる。

 本稿では,この問題そのものに対して一定の結論を得ることは目的としない。その前段階として,この問題を考える上での一助となるような資料を提供することが目的である。そのために,批判的思考の定義や概念に関する各研究者の考えを多く列記し,多少のコメントを加えることによって,今後,批判的思考の定義や概念を整理する上での基礎資料となるようにした。

2.初期の研究

 まずは,初期に行われた批判的思考研究から概観する。井上(1985)はアメリカの教育界において批判的思考が,1930年代に社会科と国語科で主張されだした用語である,と述べている。その後,1960年代には教育の現代化というスローガンとともに脚光を浴びるが,1970年代には基礎学力重視の声にかき消され,1980年代にはいって,基礎学力の中に位置づけられて再登場してきたという。またPaul(1985)も,1980年代半ばまで批判的思考運動は,小さく散発的であったと述べている。これらより本稿では,1960年代までを,初期の批判的思考研究と位置づけることとする。

 Glaser(1941)は,批判的に考える能力として,次の3つのものを挙げている。

  1. 自分の経験の範囲内に入ってきた問題やものごとをじっくり考えようとする態度(attitude)
  2. 論理的な探究や推論の方法に関する知識(knowledge)
  3. これらの方法を使う技能(skill)
さらに彼は具体的に,批判的に思考するために必要なものとして,次のものを挙げている。 そして彼は,民主主義を日常的に実践する上で,論理的探究に関する知識も重要だが,より重要なのは,批判的思考に含まれる「態度」である,としている。この,態度・知識・技能の3側面から批判的思考を定義する考えは,今日でも大きな影響をもっているように思われる(たとえばZechmeister & Johnson, 1992)。

 Dressel & Mayhew(1954)は,「一般教育の評価に関する共同研究」という,複数の大学の教員が6つの大学間委員会を組織して行った研究である。6つの委員会のうち2つの委員会で,批判的思考の概念を明確化する試みがなされている。まず,「社会科学の目的に関する委員会」(Committee on Social Sience Objectives)では,具体的な行動のリストの形で批判的思考を定義するために,授業で観察された行動やテスト項目に基づいて,以下のリストを作成した。

  1. 中心的な問題を明らかにする
  2. 底にある仮定を明らかにする
  3. 次のやり方で証拠や専門家を評価する
    1. ステレオタイプや陳腐な決まり文句はないか
    2. バイアスや感情的要素はないか
    3. 検証可能なデータと検証不可能なデータの区別
    4. 関連あるものと無関連なものの区別
    5. 本質と偶然の区別
    6. データは適切か
    7. 事実が結果の一般性を支持するかどうか
    8. 一貫性のチェック
  4. 正しい結論を導き出す

 また,「批判的思考に関する考委員会」(Committee on Critical Thinking)では,批判的思考の問題解決的側面に関する仮のリストを作り,その内容を十分に審議した上,次の5つのポイントからなる,批判的思考技能のリストを作った。

  1. 問題を定義する能力
  2. 問題を解決するための適切な情報を選択する能力
  3. 明示的/非明示的な仮定を認識する能力
  4. 適切で見込みのある仮説を形成し選択する能力
  5. 妥当な結論を導き出し,推論の妥当性を判断する能力

 この2つの委員会が提出したリストは,大筋においては類似しているが,ぴったりと重なってはいない。それはおそらく,前者が「社会科学」という点に焦点が絞られているからではないかと考えられる。具体的には,社会科学においては,民主的な社会における責任ある市民,という観点が入ってくるため,市民生活を送る上で,「証拠や専門家をどのように評価するか」という点(リストの3のaからh)に非常に力点がおかれる。それに対して,批判的思考を一般的に扱った後者は,一般的な問題解決の枠組み(問題理解−解法探索−解法適用−解法吟味−答案作成(伊藤・安西, 1996))に添うような形のリストとなっているように思われる。特に4の「仮説を形成し選択する」という部分が,前者のリストよりも明示的に入れられている。また,両方のリストに共通する特徴として,「仮定の認識」が挙げられている点は興味深い。というのは,これが通常の問題解決の枠組みの中ではあまり論じられない点だからである。これをどちらのリストでも共通して挙げているということは,批判的思考がいわゆる「問題解決」の枠の中にすっぽりと収まってしまうわけではないことを示唆しているように思われる。

 Ennisは,30年以上に渡って批判的思考に関わってきた,代表的な研究者である。その間に,彼の批判的思考の定義には多少の変化が見られるが,ここでは,最も初期の研究である1962年のものに絞る。この論文では,「命題(statements)を正しく評価すること」(Ennis, 1962)と,批判的思考がかなり狭く,論理学的な観点を中心に定義されている。この定義は,Smith(1953)の,「命題が何を意味しているかを明らかにし,それを受容するか拒否するかを決定する」という表現がもとになっている。

 またEnnisは,批判的思考のうちわけとして,次のリストを挙げている。

その後Ennisは,この定義を拡張して,現在もっとも受け入れられていると思われる批判的思考の定義を提出するが,それは後ほど記載する。

 初期の研究の最後として,批判的思考という語を積極的に使ったわけではないが,それに近い概念を提起しているものとしてDeweyを挙げておこう。樋口(1999)によると,彼は"How we think"の1910年版では"critical/critically"という語を7回使っているが,1933年版ではそれが1回になっている。むしろ彼が積極的に使っているのは「省察的思考」(反省的思考:reflective thinking)という語である。これはDewey(1933)によると,次の2つが含まれる。(1)そこから思考が生まれるところの,疑い,ためらい,困惑,困難。(2)その疑いを解決し,困惑を静めたり片付けたりする材料を探すための,探索,追求,探究。また,省察的思考の5つの側面として,次のものが挙げられている。

  1. 暗示
  2. 困難の知性化(問題設定)
  3. 仮説の構成(観察などの操作を開始するため)
  4. 推論(仮説の精緻化)
  5. 仮説の検証
これは,先に挙げた「一般的な問題解決の枠組み」とかなり対応している。ということは,Deweyの省察的思考とは,批判的思考の中の問題解決的な側面に焦点が当てられたもの,ということができるのではないだろうか。

 さらにDeweyは,『論理学−探究の理論』(1938)では,省察的思考に代えて,「探究」(inquiry)という語を用いている。というよりもむしろこの本では,「探究」という言葉の代わりに省察的思考という言葉を使うことを,積極的に否定さえしている。ここで言う探究とは,「不確定な状況を,確定した状況に,すなわちもとの状況の諸要素をひとつの統一された全体に変えてしまうほど,状況を構成している区別や関係が確定した状況に,コントロールされ方向づけられた仕方で転化させることである」と定義されている。言葉を変えたことについて田浦(1984)は,探究という語のほうが,省察的思考という語よりも,客観的で,より広い意味を包含すると考えたからであろう,と考察している。

3.その後に出された定義に関する研究

 ここでは,1980年代以降に出された,批判的思考の定義や概念を中心とした論文,あるいは批判的思考の入門書から,各研究者が批判的思考をどのように考えているかを探る。なお,心理学者は次の節でまとめているため,ここには入れていない。

 McPeck(1981)は批判的思考を,「問題解決に使われる注意深い的確な思考(careful and precise thinking)」と,まずは広くとらえている。その上で彼は,批判的思考が,懐疑や,賛同の保留を含んでいることを指摘する。しかしそれは,無差別的な懐疑ではなく,「問題の領域内で省察的な懐疑を適切に使うこと」である。この言葉(特に「省察的な懐疑」)は何度も使われることから,これがMcPeckの批判的思考の定義と考えてもよいであろう。ここでは懐疑に「省察的」あるいは「適切」と限定詞がついているが,そのような「無限定でない懐疑」を行うためには,問題の領域について知識が必要とMcPeckは考える。すなわち,どのような懐疑が適切であるのかは,領域によって異なるのである。

 McPeckは,これらの点も含め,批判的思考の主な特徴として次のものを挙げている(要約しつつ引用)。

  1. どんな種類の思考もつねに「Xについての思考」なので,それを離れて抽象的に批判的思考を教えると主張するのはナンセンス
  2. 批判的思考の基準は領域によって異なる
  3. 批判的思考は,単に命題の評価ではなく,問題解決や能動的関与に含まれる思考プロセスを含むものである。
  4. 批判的に考えるようになるためには,形式論理や非形式論理の学習だけでは十分ではない
  5. 批判的思考は知識と技能を含むので,ある領域における批判的思考者は,別の領域においては批判的思考者ではないかもしれない
批判的思考の領域特殊性を強調している点が,McPeckがほかの研究者と大きく違う点である。

 Ennisは1980年代に入って,批判的思考の定義を「何を信じ何を行うかの決定に焦点を当てた,合理的で省察的な思考」(Ennis, 1985)と変更している。この定義の中には,仮説の形成,問題を別の視点から見ること,質問すること,別の解を考えること,計画を立てることなどといった,創造的な思考も含まれる(Ennis, 1987)。この点が1962年の定義から拡張された主な部分である。また,Ennis(1985)では,13の傾性(disposition)と12の能力(ability)からなる,詳細な「批判的思考/推論カリキュラムの目標」が掲げられている(なお傾性に関しては,Ennis(1987)では14に増えている:TABLE 1)。ここでは,批判的思考が傾性(態度)と能力の2側面からなると考えていることに注目すべきである。このうち,傾性とは情意的(affective)な側面であり,能力とは認知的な側面である(Kennedy, Fisher, & Ennis, 1991)。

 またEnnis(1996)は,批判的思考の入門書において,FRISCOアプローチを提案している。これは,Focus, Reasons, Inference, Situation, Clarity, Overviewの頭文字を取ったものであり,これらの点を押さえることにより,遺漏なく批判的思考を行えるようにするチェックリストである。これらの内訳は,Fが現在の問題が何であるか,焦点を当てて明確化することである。議論を分析することとも言える。Rは情報を集め,理由を明らかにすることである。ここでは,情報源の信頼性などが検討される。Iは,手持ちの情報から決定にいたる推論のステップを検討することである。演繹や帰納など,論理学的な知識が使われる。またここではとくに,仮定を同定し他の選択肢を探すことが重要である。Sは状況を理解することである。状況は,物理的環境も,社会的環境も含んでいる。状況には,人,歴史,知識,感情,偏見,集団,興味などがある。Cは,使われている言葉の意味を明確にすることである。Oは概観することであり,これまでの意志決定プロセス(FRISC)を繰り返し行うことである。この本の章立ては,以下の通りである。

 導入/議論分析/情報源の信頼性/観察/演繹(クラス論理)/演繹(命題論理)/演繹的論理の適用/実験・診断・修理/最もよい説明と因果推論/一般化/価値判断を行う/用法による定義と定義の型/恣意的に規定された定義,立場的な定義,定義の方略/批判的思考の適用
基本的に本書は,上記のFRISCOの流れに沿って進められている。

 なお,この概説書をみる限り,Ennisは80年代の定義を修正したり,別の定義を採用したりはしていないが,今後,定義が変更される可能性が,Wheary & Ennis(1995)の論文から読み取れる。この論文では,「批判的思考におけるジェンダー・バイアス」と題されているが,ジェンダー・バイアスそのものについて何か主張をしているわけではない。むしろ,批判的思考においてジェンダー・バイアスが存在する,という主張自体を理解することを目的とした論文である。というのは,現在の批判的思考は,合理性,判断,普遍的原理に基づくガイド,といった男性的特質ばかりが強調されており,感情,文脈への注意,自己と他者の結びつき,ケア,個人的な声(直観)を無視している,というジェンダーバイアスの存在が,何人かの研究者によって主張されているからである。

 Beyer(1985)は,過去30年の間に出された,もっともよく考えられていると思われる8定義をリストアップした(ここには,Dressel & Mayhew(1954)やEnnis(1962)も含まれる)。そして,それらによってコンセンサスが得られていると考えられる10技能を明らかにした。

 また批判的思考には,このような「心的操作」(mental operation)の次元だけではなく,「心的枠組み」(frame of mind)の次元がある。それは,(1)情報を評価する必要性に対する敏感さ,(2)意見をテストする意志,(3)全ての観点を考慮する欲求,である。心的操作が「いつ」「何を」「どのように」問うかであるのに対して,心的枠組みは,そのような問いを発しようとする傾向である。最後に彼は批判的思考を,「情報や主張の信憑性や正確さ,価値を決定する過程」とまとめている。

 Siegel(1986)は,批判的思考のAMR(appropriately moved by reasons)概念を提唱している。彼が考える批判的思考の定義は「理由に焦点を当てることであり,信念や主張や行動の正しさを保証する理由の力」であり,それゆえ批判的思考者とは,理由によって適切に動かされる人である。また批判的思考には,理由を適切に評価する「技能」(理由評価成分)と,自分の行動や信念の基礎を理由におく欲求や傾向(批判的態度)という,2つの中心要素があると述べている。そして,批判的思考者であるためには,理由を評価する技能に加えて,「批判的態度」「批判精神」と呼ばれる態度,傾向,習慣,性格特性が必要である。それは具体的には,次のようなものである。

 Siegelは,技能と傾性のうち,特に傾性を重要視している(Siegel, 1999)。彼は,傾性とはリアルで永続的な人の特性であると考えている。しかし時として,人の行動を傾性によって説明することは,何も説明していないに等しい,と反論されることがある。それに対してSiegelは,すべての思考や行動を傾性で説明するならばそうであろうが,傾性によらない思考や行動があるのであればそうではない,と述べている(たとえば「先生が見ているから」批判的に評価する場合がある)。また,傾性から予測が可能になる点でも,傾性という概念が空虚とはいえないと述べている。

 Hawes(1990)は,批判的思考という語が多くの違った意味をもっているが,それらの意味をつなぎ,理解するために,"critic"や"criticism"の意味から考えている。これらは「批判的」の極端に狭い定義である「間違い探し」とは違い,いずれも論理的,合理的に何か(たとえば映画,芸術,文学,道徳,政治など)を説明し,評価することを指している。そこで同様に批判的(critical)は,合理的な評価によって特徴づけられるものと考えた。つまり彼による批判的思考とは,「ある種の合理的な評価によって特徴づけられた思考」なのである。また,批判的思考の軸である「評価」は,reasoned evaluation / reasonable evaluationと2通りに表現できる。このうち前者は方法に基づく評価,後者は結果(目的)に基づく評価と言うことができる。このことから,批判的思考には,方法の説明/記述と目的の説明/記述という2つの側面があることを論じており,何人かの研究者の批判的思考の捉え方の違いが,この観点の違いであると考えた。また彼は,論理的あるいは合理的な評価思考を適切に行う傾向としての「批判的態度」が重要であることも論じている。

 Paul(1995)は,"Critical thinking"と題する本のglossaryで,批判的思考を次のように定義している。  1)訓練された,自ら方向を決める(self-directed)思考で,思考の特定のモードや領域に適するように完成された思考  2)知的技術と能力の精通を示す思考  3)自分の思考をよりよく,より明確に,より正確に,より防衛力のあるものにしようとするときの,あなたの思考についての思考の技法。批判的思考は2つの形態に弁別できる。一方が「利己的」「詭弁的」,もう一方が「公正な」ものである。批判的に考えるとき,思考要素の命令を使って,自分の思考を,思考のタイプやモードの論理的な要求に調節する。

 このうち,3)に出てくる2つの批判的思考の区別は重要である。Paulは前者を「弱い意味の批判的思考」,後者を「強い意味の批判的思考」と呼んでいる。弱い意味での批判的思考をする人とは,自分と違う視点や準拠枠に共感的に推論しない人であり,単一論理的(monological)に考える傾向のある人である。批判的思考の価値を,言葉の上では信奉するが,本当の意味では受け取っていない人であり,批判的思考の知的技能を,選択的かつ自己欺瞞的につかうことにより,真理を犠牲にして自分の権利を守ろうとする人である。このような人は,他人の推論の欠点を見つけて論駁でき,自分自身の信念を,理由をつけて保持できる(Paul, 1995)。

 それに対して,強い意味での批判的思考をする人とは,自分の思考の枠組みを深く疑う能力を持ち,自分自身の視点や思考の枠組みに反する視点や思考の枠組みの中で最も強力なものを,共感的かつ創造的に再構成する能力を持つ人である。弁証法的(多重論理的)に推論することによって,どのようなときに自分自身の見解が最も弱く,対立する見解が最も強いかを決定する能力を持ち,ふだんから自分自身の視点によって惑わされてはいない。彼らは,自分が視点をもっていることを知っており,それゆえ,自分自身の思考が,どのような仮定や考えの枠組みを基礎としているかを認識している。彼らは,自分自身を覆すことができるような,最も強力な反論に自分の仮定と考えをさらす必要性を知っている(Paul, 1995)。

 もちろんこの2者のうち,本来あるべき批判的思考は,「強い意味の批判的思考」の方である。この概念は,多くの研究者によって引用・参照されている(たとえばBrowne & Keeley, 1998; Walters, 1994など)。

 最後に,研究論文ではないが,批判的思考(と創造的思考)の入門書としてRuggiero(1998)を挙げておく。この本は,「思考の技法」に関する本であるが,その中で批判的思考と創造的思考を分けて取り上げている点が特徴的だと思われる。本書における批判的思考の定義は,「自分が作った考えを概観し,どんな行動が最もよく問題を解決するかや,その問題についてどんな信念が最も合理的かについて,一時的な決定を行い,そしてその解決や信念を評価し磨きをかけることである」というものである。また導入部分ではもう少し簡単に,「自分の考えを吟味・評価し,判断を行い,必要ならば磨きをかけること」と表現されている。本書の章立ては以下の通りである(実際は第1部の前に「思考力を育成する」という導入がある)。

第1部 意識する
基礎を築く/自分の視点を広げる/自分の分析技能を磨く
第2部 創造的になる
創造のプロセス/挑戦を求める/問題を表現する/問題を調査する/アイディアを作り出す
第3部 批判的になる
批判の役割/問題の解法に磨きをかける/問題についての議論を評価する/あなたの決断に磨きをかける
第4部 あなたの意見を伝える
否定的反応を予想する/説得力のある言い分を打ち立てる

4.心理学者の定義

 Greeno(1989)は,批判的思考の定義を主眼とした論文ではなく,思考研究のこれまでと今後について展望した論文である。彼によると,過去20年間,特定の課題の遂行に関する思考心理学には大きな進歩が見られたのに対し,批判的思考,生産的思考,高次的思考,創造的思考の心理学の進歩はあまりみられていない。それは,次の3つの仮定と関係があると彼は考えている。1.思考は,状況との相互作用ではなく,個人の心の中にある。2.思考と学習の過程は,どんな人にもどんな状況でも共通である。3.思考の源は,才能や毎日の経験からくるのではなく,学校での勉強のような単一の成分からなる知識や技能である。したがって,一般的な思考に関する心理学を進歩させるためには,これらとは異なる枠組みとして,状況認知,個人的・社会的認識論(epistemologies),概念的コンピテンスという仮定を導入する必要がある,と彼は述べている。

 この論文の中で彼は,批判的思考を,「ある意見を理解したり評価することなく単に受け入れたり実行するのではなく,省察的に考えられる」ことである,と定義しており,その一側面として,情報を理解し課題を遂行するときのモニタリングというメタ認知過程を挙げている。なお,批判的思考における上記の新しい枠組みの位置づけは,以下のようになる。まず,状況認知の考えからすると,自分のすることや,他人が言ったり,したことをモニターし評価する批判的思考は,いつでもみられるものとは考えられず,状況との直接的な相互作用の中で,何かがうまく行かなくなったときに働くと考えられる。ゆえに批判的思考には,困難を克服するのに省察や評価が役に立つ状況であるという認識が含まれる。個人的認識論の考えからすると,知識についての個人の信念が違うと,課題に対する遂行が変わる,と考えられる。社会的認識論の考えからすると,批判的思考は,個人的なものと言うより,社会的な現象と言える。したがって,アイデアの省察や批判が奨励され,ほめられ,通常のグループ活動として期待されるような社会的環境を作ることで,批判的思考を効果的に生じさせることが可能であると考えられる。概念的コンピテンスの考えからすると,まだきちんとした概念や原理を持っていないことでも,暗黙の理解を持っていると考えられる。これから,批判的思考における直感の役割について考察できる。また,知的相互作用が起きるよう計画されたグループでは,子どもたちは自然に自分の説明や解釈を作るのに直感を用い,自分たちでそれについて省察し,よりきちんとしたものにすることができると考えられる。これらの枠組みは結局,文脈要因を考慮に入れるということである。これらの枠組みによって,批判的思考などの一般的思考についての研究がいっそう進展することが期待される。

 心理学的な観点を中心として,批判的思考についてバランスの取れた入門書を書いているZechmeister & Johnson(1992)は,その著作の中では明確な批判的思考の定義を与えてはいない。強いてあげれば,批判的思考と「よい思考(good thinking)」を同義に使っていること(p.4),Glaser(1985)を引用して,批判的思考は態度と技術と知識からなると述べていること(p.5),批判的思考はDeweyの言う省察的思考と同じ,と述べていること(p.288)ぐらいである。なお,彼らの本は,以下のような章からなっている(タイトルはゼックミスタ & ジョンソン, 1996, 1997による)。

 クリティカルな思考とは何か,いかに学べばよいか/ものごとの原因について考える/他人の行動を説明する/自分自身を省察する/信念を分析する/自分は何を知っているかを知る/問題を解決する/意志決定をする/良い議論と悪い議論/エピローグ

 Smith(1995)は,「心理学について批判的に考える」という副題をもつ本の中で,批判的思考を「証拠を集め,代替案を慎重に評価して結論に達することにより,先入観を排除する,論理的で合理的な過程」と定義している。ただし彼は,批判的思考の定義にコンセンサスはないこと,しかし本書の目的に照らし合わせて,このような定義を本書では採用していることを述べている。また本書には,批判的思考者のもつ特徴として,次の7つが挙げられている。

  1. 批判的思考者は,柔軟である−彼らはあいまいさと不確実に耐えることができる
  2. 批判的思考者は,内在するバイアスや仮定を同定する
  3. 批判的思考者は,懐疑的な雰囲気を維持している
  4. 批判的思考者は,事実と意見を分ける
  5. 批判的思考者は,過度の単純化をしない
  6. 批判的思考者は,論理的な推論プロセスを使う
  7. 批判的思考者は,結論を導き出す前に,利用可能な証拠を検討する
本書の章立ては以下の通り。
 批判的思考のガイドライン/心理学と大衆紙/統計の誘惑/(生物の)解剖学的構造は運命?/見るものは得るものか?/催眠術は思い出すことを手助けできるか?/条件づけと広告/記憶におけるバイアス/IQは一生ものか?/自分自身の動機を理解する/共依存を評価する/読書療法は有用か?/社会的影響戦略
この内容からもわかるように,本書は「批判的思考」の本ではなく,あくまでも,批判的思考的観点を持つ「心理学」の本である。その点で,他の本とは異なっている。

 Halpern(1996)は,批判的思考の入門書で,批判的思考を「望ましい結果を得る可能性を増大させるために,認知的な技術や方略を用いること」と定義している。別の箇所では,critical thinking = directed thinking(目標志向的思考)ということも述べられている。また,Halpern(1998)では,次のようなことが述べられている。

ここには,「判断,分析,統合」を必要とする高次思考,という表現があるが,これは,ブルームの教育目標の分類学における上位3カテゴリー(分析,統合,評価)と類似しているように思われる。批判的思考の入門書であるHalpern(1996)の章立ては,以下の通りである。
 導入/記憶/思考と言語の関係/推論/議論の分析/仮説検証としての思考/可能性と不確実性/意志決定/問題解決技能の育成/創造的思考/結語
「記憶」というトピックから始まっているということもあり,また被覆範囲からしても,本書は,認知心理学的な色彩の強い本という印象である。

 Levy(1997)は,"Tools of critical thinking: Metathoughts for psychology"と題する,心理学色の強い批判的思考入門書のglossaryで,批判的思考を,「能動的で体系的な認知的方略で,正しい推論と妥当な証拠に基づいて,出来事を評価・理解し,問題を解決し,意思決定をするために使われる」と定義している。また,criticalという語についても,説明がある。

  1. 注意深く,正確で,包括的な評価によって特徴づけられる。
  2. 本質的で生き生きとしていて統合していることの質。決定的なポイント。
  3. 傷つけるような,けなす,あらさがしをする態度や行動
本書の各章のタイトルは以下の通り。
第1部:現象を概念化する
言葉におけるバイアスを評価する/物象化の誤謬/記述における多重レベル/名づけ(nominal)の誤謬とトートロジカルな推論/離散(二分)変数と連続変数を区別する/反対を考える/類似性−ユニーク性パラドックス/自然主義的誤謬/バーナム効果
第2部:現象を説明する
相関は因果関係を証明しない/双方向的な因果関係/多重的な因果関係/因果関係の程度/因果関係への複数の道
第3部:一般的な誤帰属
基本的帰属錯誤/介入−因果関係の誤謬/結果−意図の誤謬/「私がそう感じるからそれは本当に違いない」という誤謬/劇的な説明の誤謬
第4部:現象を調査する
演繹的推論と帰納的推論/反応性/自己成就予言/同化バイアス/確証バイアス/信念の辛抱(perseverance)効果/後知恵バイアス
第5部:思考における他のバイアスと誤謬
代表性バイアス/利用可能性バイアス/洞察バイアス
第6部:結論(すべての決定はトレードオフである)

 批判的思考の本ではないが,Sternberg(1997)は,「心理学入門を教える」という,アメリカの著名な心理学者にして心理学入門の著者11人が心理学教育について語っている本を出している。その中で,8人もの著者が,心理学教育の中で批判的思考を教育目標の中に位置づけている。多くの著者は,批判的思考の定義や具体的な教育方法を挙げているわけではないが,以下の2名が挙げている。

 一人はBernstein(1997)である。彼は,心理学研究法を批判的思考の文脈の中で教えている。その際に,次のものを,「分析のための5ステップ」として学生に紹介している。

  1. 私は何を信じさせられようとしているのか
  2. それを支持する証拠として手に入れられる事実は何か
  3. その事実は,他にも解釈できないか
  4. どのような証拠があれば,新しい解釈の妥当性が検討できるか
  5. 最も合理的な結論は何か
これをもちいて,たとえば先生が実演する見せかけの超能力を学生に評価させ,そうすることによって,研究法や批判的思考が日常的にも役立つことを,授業を通して認識させている。

 もう一人は,Wade(1997)である。彼女は批判的思考を,「しっかりとした裏づけのある根拠に基づいて主張を評価し,判断を下す能力(ability)と意志(willingness)」と定義している。この定義の特徴はWade(1995)によると,傾性としての意志とスキルとしての能力の両面が入っていること,判断のベースとして論理的な根拠と経験的な根拠の両方を許容していること,唯一の正しい答えがあるということを含んでいないこと,などである。またWade(1997)は,批判的思考のガイドラインとして,次の8つを挙げている。

  1. 問いを立てよ
  2. 問題を定義せよ
  3. 根拠を検討せよ
  4. バイアスや前提を分析せよ
  5. 感情的な推論(「私がそう感じるからそれは真実」)を避けよ
  6. 過度の単純化をするな
  7. 他の解釈を考慮せよ
  8. 不確実さに耐えよ

 本書の執筆者の一人であるLeftonは,本書の中では批判的思考の育成については少ししか触れていないが,彼が書いた心理学入門書では,批判的思考の育成が重視されている。随所に"Think Critically"という質問がコラムで用意されており,また各章末には"Critical Thiking Connections"という,発展問題と関連章へのガイドが書かれたページが用意されている(Lefton, 1996)。また,本文中では批判的思考について2箇所で触れている。一つは導入の章(研究法の節)で,そこでは「批判的思考は,証拠を評価し,選択肢を検討し,結果を査定し,結論が意味があるかを決定することからなっている」と述べられている。そこで批判的思考者は,バイアスを避け,評価的になり(be evaluative),過度の単純化を避け,事実の関連性を決定し,事実を疑い,全ての議論を考慮すべきである,と述べられている。さらにそれに付け加えて,認知の章(問題解決の節)では,日常的な判断などにおいて批判的に思考するために大事なこととして,次のものが挙げられている。

 Browne & Keeley (1998) は,『正しい問いを問う』というタイトルの批判的思考入門書を書いている(1998年で第5版。2000年には第6版が出ている)。本書はタイトルにあるように,批判的に思考するためには,批判的な質問(=正しい質問)を自分で能動的に組み立てる一連の技術や態度が必要である,という本である。本書では批判的思考を,次の3つを挙げて定義している。

  1. 相互に関係した一連の批判的な質問に気づくこと(awareness)
  2. 適切なときに批判的質問を問い,答える能力(ability)
  3. 批判的質問を積極的に使う欲求(desire)
また著者たちは,スポンジ思考と砂金取り思考という2つの思考を対比させている。スポンジ思考とは無批判的に吸収する思考である。砂金取り思考とは,能動的に関わり,自分で情報を選ぶ思考である。もちろんこちらが批判的思考である。ただし,砂金取り思考のみがいい思考,と一方的に言っているわけではなく,両者は補いあうものと考えている点は興味深い。すなわち,それぞれ長所や短所,力点のおかれ方が違う,というのである。また著者たちは,正しい答えがあるというのは「神話」(あるかどうかわからないし,あってもたどり着かないかもしれない)であるが,「正しい問い」はある,と述べている。以下に挙げるように,それらの問いが本書の各章のタイトルにもなっている。
 問題と結論は何か?/理由は何か?/どの単語や句があいまいか?/どんな価値が仮定されているか?/どんな事実が仮定されているか?/理由づけに誤りはないか?/証拠はどれほど確かか?/他に考えられる原因はないか?/統計がごまかしではないか?/重要な情報が欠けていないか?/どんな結論があり得るか?

 また著者たちは,Paulの強い意味の批判的思考と弱い意味の批判的思考にも言及しており,「ある意見を誇りに思うためには,自分で理解し評価した複数の選択肢の中から選んだ意見であるべきである」と述べている。

5.日本人の研究

 井上は1974年に,おそらく日本ではじめてワトソン−グレーザー批判的思考テスト紹介している(井上, 1974)。批判的思考の定義としてはここでは,Glaserの「態度・知識・技能」をはじめ,Dressel & Mayhewなど複数の研究者の考えが紹介されている。

 井上(1977: 井上, 1989に再録)では,批判的思考が人によってずいぶん解釈の異なる,相当に幅の広い概念であると述べ,Glaser(1941)やWolfなどの先行研究を引用しながら,「批判的思考というのは,論理的思考プラス意味論プラス評価だといっていいように思われます」と書かれている。ここでいう意味論とは,「アイマイなことばと厳密なことばの区別」や,「ことばの内包的な意味と外延的な意味のちがいを理解すること」を指しているようである。

 久原・井上・波多野(1983)では,批判的思考の定義として,「首尾一貫した確かな解釈を構成しようとする過程でなされる推論の適切さ(appropriateness)(形式的妥当性も含む),その推論によって導かれた言明の真偽の度合い(truthfullness)ないしはこの推論と与えられている情報や常識を使って構成された解釈の確かさ(plausibiity)の程度を評価する能力」が挙げられている。この定義の特徴はおそらく,『読書科学』という雑誌に報告されていることから「読解の際になされる推論」に焦点が当たっていること,それに,ワトソン−グレーザー批判的思考テストの内容に依拠した定義である,という点ではないかと思われる。

 井上(2000)では,「国語教育でもっと論理的思考を重視しようというキャンペーン」をかねた本の中で,CTIEという概念を提唱している。これは,「「NIE(教育に新聞を!)運動」にメディアリテラシーの観点や言語論理が盛り込まれることによって,CTIE(Critical Thinking in Education)へと発展していくだろう」という提案である。この本では批判的思考については,以下のように書かれている。

  1. およそ「批判」を伴わない思考というものはありえない。筋道を通して考えれば当然,批判が出てくるはずである
  2. ここで「批判」というのは,ただ揚げ足とりをしたり相手をやっつけたりするということではなく,「一定の基準・尺度に基づいて判断すること」である。
  3. 「思考」については本来は「批判的」などという修飾語は不要なのだが,上述のような事情があるので,私はわざわざ強調して「批判的思考」という名称を使っている。

 また井上はかねてから,批判的思考力育成を目指す「言語論理教育」を提唱している(井上, 2000)。その定義は「情報の真偽性・妥当性・適合性を一定の基準にもとづいて判断し評価できるようになること」である。真偽性とは「情報の中身がホントかウソか」,妥当性とは「考えの道筋が正しいか正しくないか」,適合性とは「情報はどの程度確かであるか(強い理由か弱い理由か),また現実と照らし合わせて適当(適切)であるか」ということである。内容的に言って,これは批判的思考の定義そのものと考えてもいいのではないかと思われる。

 樋口は,教育学の立場から批判的思考について言及している研究者であるが,論文によって挙げられている批判的思考の定義が若干異なっている。樋口(1996)では,岩崎武雄の「われわれが正しく「考える」ためには批判的な構え,すなわち批判的精神が必要である」という主張を紹介し,それと関連づけながら批判的思考を「自らによる判断,事実や意見の分析,すじみち立った手続きと言った特徴を持つ思考」と紹介している。

 樋口(1998)では,アメリカの小学校6年生向けの教材キットを分析した論文の中で「ある主張や現象の中から問題点を感じとり,それに対する自分の考えを根拠にもとに吟味しながら筋道立てて主張する思考」と定義を述べている。

 また,樋口(2000)では,アメリカの高等教育における批判的思考教育の事例分析を行った論文で,「批判的思考とは,情報の誤りや矛盾に気づいたり,合理的に意思決定をし,かつその正しさを吟味できる力のことをいう。そこには,一面的な見方ではない,柔軟な発想や創造性も要求される。」と述べている。

 これら3つの定義に共通の語はないが,強いて共通点をあげれば「筋道立った」(矛盾に気づく)ではないかと思われる。

 楠見(1996)は,認知心理学の概説書の中で「批判的思考」という節を設け,批判的思考について,次のように述べている。

基本的には,「合理的・理性的・論理的思考」「自分の推論過程を意識的に吟味」という位置づけであり,その他の部分は,EnnisやHalpernなど代表的な研究者の意見がそのまま取り入れられているようである。

 宮元(2000)は,批判的思考を中心においた心理学教育について提言した論文の中で,筆者(宮元氏)の考える批判的思考の基本概念として,次のように述べている。「適切な根拠(事実,理論等)を基にし,妥当な推論過程を経て,結論・判断を導き出す思考過程,あるいは,所与の主張・議論について,その根拠や推論過程の適切さを吟味する思考過程」

 また宮元は,介護関係者のための雑誌上の特集で,「さまざまな情報,意見,アイディアを評価し,正しいもの,優れたものを選り分けるための思考法が広義のクリティカルシンキング」と紹介している(宮元, 2001)。また同時に,「クリティカルとは,ある基準でものごとを分ける」こと,とクリティカルの語義を紹介し,「川底の砂から砂金を選り分けるようなもの,とたとえる人もいる」と,Browne & Keeley(1998)のアナロジーを紹介している。この3つ(宮元の定義,クリティカルの語義,たとえ)に共通しているのは,「選り分ける」という面であると思われる。

 なお宮元は,1996年にZechmeister & Johnson(1992)の翻訳を出版するにあたって,単なる翻訳(意訳)ではなく,原書者の了解のもとで,「その内容(考え方)を日本の読者により理解しやすい形で提供」している。具体的に言うと,原書にない説明や例を補足したり,原著の例を日本人が理解しやすいものに書き換えたり,説明がくどい部分は削除しているのである(本書ではこれを「日本語訳」と呼んでる)。そして,先にZechmeister & Johnson(1992)には明確な定義は与えられてはいない,と述べたが,日本語訳に当たって,筆頭訳者である宮元は,批判的思考に「適切な基準や根拠に基づく,論理的で,偏りのない思考」という定義を与えている。こちらや,最初に挙げた宮元(2000)は,先に指摘した「選り分ける」という語はないものの,「適切な根拠を基にし」「基準や根拠に基づく」という,やはり類似した観点(基準の存在)が含まれている。一方,1996年の定義には存在してそれ以降のものにはない部分は,「論理的で,偏りのない」という表現であるが,その理由は不明である。

6.他分野における批判的思考

 では,心理学以外の分野では批判的思考はどのように紹介されているだろうか。ここでは,看護,消費者教育,論文作法の各分野について取り上げた。なおこれらはどれも,筆者の専門外の分野になる。したがって,ここで取り上げたものがその分野における代表的な考えかどうかはわからない。また,同様の事情により,洋書籍に関しては,すべて翻訳本に基づいていることもお断りしておく。

 まずは「看護領域」に関してである。SSCIによると批判的思考に関する看護領域での研究の中で被引用数の多い研究として,Jones & Brown(1991)が挙げられる。この論文は,現在看護教育プログラムで解釈されている批判的思考の特徴を明らかにするために,全米看護連盟(NLN)に認可された看護学部や大学院の学部長や管理者に,近年看護教育の特色となっている批判的思考をどのように見ているかについて調査したものである。調査前の理論的枠組みとして彼らは批判的思考について,「直線的な問題解決ではなく,省察的な思考に基づいて認知を方向づけることであり,あいまいさに耐えることである」と述べている。ここで述べられている「直線的な問題解決」とは,合理的な線形の理想を適用するものであり,理由駆動型のルールや手続きを用いることである。それに対して彼らが提唱しているのは,複雑な意味を分析し,解を批評し,別の解を探し,随伴性と関連した価値判断を行うものとしての批判的思考であり,部分の総和よりも大きいものであり,省察的懐疑や別の解の探索とイメージを重視するものである。

 しかし調査の結果,多くの看護関係者は,批判的思考を想像的な思索や多様性や文脈特異性を含む活動とはみなしておらず,批判的思考をもっと狭く,論理的,還元主義的,法則駆動の意思決定過程とみなしていた。この結果から,批判的思考の過程と適用のメカニズムと操作が十分に理解されていない,と彼らは結論づけている。

 ルーベンフェルド&シェッファー(1997)は,素晴らしい看護(great nursing)を提供するために必要な思考のスキルを看護学生が学ぶための本である。その中で批判的思考は,狭く定義すれば「吟味,すなわち問題に対して疑問を抱くアプローチ」であるが,本書ではより広く,Paulの次にあげる定義を用いている。「あなたの思考を,よりよくするためにあなたが思考する際の,あなたの思考に関する,思考のアート(技術)は,すなわち”より明白に””より正確に””より防御的に”ということである」。また本書では,批判的思考の5つのモードとして,次のものを挙げている。

これらは頭文字をとると,t.h.i.n.k.(考える)となるように作られており,「もっともよく思考する人は,いつでもこれらすべての様式を用いることができる」と述べられている。目的が看護(great nursing)と明確なためかも知れないが,想起や習慣も含んでいるのは,「批判的」思考の定義としては,きわめて異色のものと思われる。

 コーリア,マクキャシュ&バートラム(1997)は,看護学生が系統的で論理的に認知技能(と専門用語)を修得できるように作られた教科書で,批判的思考を,日常的に行われる偶発的な思考(無作為な思考)とは違い,意図的で目的志向的で,常にアイデアや結論,診断を導き出す思考と位置づけている。また,批判的思考は認知技能であり,すべての資源(知力,知識,想像力,経験,直感的洞察力,推理力)を使う情報処理の特殊な方法,とも述べている。看護との関連で言うと,看護過程のすべての段階,すなわち,関連性のある情報を明確にし,診断を早合点したり即決することなく選択肢に留意し,個別的なケア計画を立て,ケアを評価する局面で必要になると言う。また,批判的思考ができる看護婦の特性として,次の6つが挙げられている。

この本では,看護過程の5段階として,アセスメント,診断,計画立案,実施,評価を挙げている。これは,前に挙げた一般的な問題解決の枠組み(問題理解−解法探索−解法適用−解法吟味)に類似しており,そのような,問題解決的な看護の流れの中において批判的思考が位置づけられているように思われる。

 「消費者教育」においても,批判的思考という言葉は頻出する。たとえば中原(1994)によると,1984年に出された,消費者教育の定義ともいえるIOCU(国際消費者機構)5原則の1番目に,批判的思考が出てくる(残りは行動,社会的な配慮,環境的関心,連帯)。ここで言う批判的思考とは,「私たちが使う商品やサービスの価格や品質について本当にこれでよいのかという疑問をいつも抱くという責任」という,きわめて消費者教育に特化された内容である。1981年にECの閣僚会議で決定された「学校における消費者教育」という基本政策では,「消費者教育とは,学際的な科学的アプローチに基づいた,単なる知識の受け売りという伝統的教授方法をこえた,批判的思考能力の開発に力点をおいたアプローチが強調されるものである」と,批判的思考を軸に消費者教育が定義されている。また,ドイツ消費者教育の中心的役割を演じている消費者研究財団は,3つの消費者教育の目標の1番目に,「意思決定と批判的思考の確立」を掲げている。

 しかし中原(1994)の記述を見る限り,ここでは批判的思考の内容が明確に定義されていない。その点,同じ書籍に収められている花城(1994)は,Paul, Halpern, Beyerなどの定義を引用し,批判的思考とは何かについて検討している。そして花城は,まとめると批判的思考とは「知識,論点,何らかの主張が正しいかどうかを,理性の導くところによって分析し,査定するための思考」と定義している。

 「論文作法」に関しては,『批判的思考を通して科学論文を書く』という本がある(モリアーティ, 2000)。この本では,「批判的思考とは「自分が見ているもの」,「見ていると思うもの」,「それが意味すると思うもの」を分別する能力」と,きわめて科学論文に特化された形で定義されている(通常の批判的思考の概念の中では,これは「事実の意見の区別」という,批判的思考のはじめの一歩にしか過ぎないであろう)。ここで言う「自分が見ているもの」とは観察された事実,「見ていると思うもの」はそこに見られる関連性,「それが意味すると思うもの」とは論文における考察(議論)に相当するものである。ただしこの本では,序論にこのような議論があるものの,それ以降の章では,「批判的思考」について直接言及されることはほとんどなく,通常の論文作法の本と大差ないように思われる。

7.1999年の時点における筆者の考え

 以上,古今東西の複数の分野における批判的思考の定義や概念を列挙してきた。冒頭で述べたように,本論文ではこれらを整理して,一定の結論を得ることは目指してない。しかし,全体的な印象を踏まえて,筆者がこれまでに考えてきたことの一部を挙げておこう。具体的にはまず,道田(1999)を元に,1999年の時点で考えたことを示し,次節でそれ以降に批判的思考について考えたことの一部を示すことにする。

 冒頭にも述べたように,批判的思考の定義は,研究者・教育者により一貫しておらず,批判的思考の研究・教育の妨げになっていると思われる。そこで,「具体的な定義か?」「他の名前の思考技能を指していないか?」「批判的という語が考慮されているか?」という3つの観点から従来の定義を概観しつつ,批判的思考の新たな定義を提案する。

 (1)具体的な定義か? 代表的な定義として「何を信じ何をすべきかを決めるための,合理的な省察的思考」,「省察的懐疑を行う傾向と技術」,「認知的技能や方略を使い,望ましい結果を得る可能性を増すこと」などがある。何かを評価して望ましい結果を得るという点は大まかに一致しているものの,どれも概念的な定義である。教育への応用や,批判的思考概念を研究者間で共有することを考えると,より具体的な,批判的思考の内訳が明らかになる定義が必要である。具体的に言うと,たとえば「合理的」「省察的」とはどういうことか,ということである。合理性に関して言うと,少なくとも2種類の異なる合理性があることが指摘されている(エヴァンス&オーヴァー, 2000)。したがって,単に「合理的」と定義するだけでは,具体的とは言えない。少なくとも,合理性の中身を明確にすべきであろう。

 (2)他の名前の思考技能を指していないか? 創造的思考,論理的推論,意志決定,問題解決,ブルームの分類学の上位3技能などを指して批判的思考と称されることがある(Beyer, 1985など)。確かに批判的思考とこれらの思考技能には重なる部分もある。しかし,別の名称で研究されてきた思考技能を指して,批判的思考と考えるのは,適切とは言い難い。また,批判的思考とは日常で適切に問題を解決したり意思を決定するために行う思考と考えられる。従来認知心理学で主に扱われてきたような「特定の課題に基づく限定された個々の思考技能」とは違うと考えるのが妥当であろう。

 (3)「批判的」という語が考慮されているか? 批判的思考は省察的思考,生産的思考,目標指向的思考,合理的思考,高次思考などと同等に扱われることがある。これらは(2)にあげたものと違い,特定の課題や思考技能と直接には結びつかない。しかし(1)にあげた問題点と同じく,幅広い概念的な定義でしかない。また,ここには「批判的」という視点が抜け落ちている。多くの教育・研究者が50年来,「批判的」思考について考えてきた経緯を考えると,定義の中で批判的(critical)という語の意味を考慮することは必須であろう。

 以上の点を考慮したうえで,批判的思考の定義についての一提案を以下に述べる。まず批判的思考とは,単一の思考要素ではなく,「日常で出会うさまざまな問題を評価し解決する」という観点からまとめられる複数の思考技能・態度のパッケージと考えるのが妥当である。その中でも中核をなすのは,適切で合理的な思考・判断であり,それは「論理的思考」と言えるであろう。

 しかし論理的思考技能を持っている人が皆,批判的に思考できるとは限らない。というのは,一般的に論理学では,明確な問題や前提から結論が出されるのに対して,日常の問題では,問題や前提は何か,前提の真偽などが不明である。そのため日常においては,論理的思考ができるだけでは不充分で,それが適切に発動されなければいけない。つまりものごとを批判あるいは懐疑をもって眺める態度が必要である。これが批判的という語の意味であり,批判的思考を批判的思考たらしめる,最重要点であると思われる。

 さらに日常の問題では,論理学のようにある命題が真であるか否かを判断すればいいだけではなく,他にどんな解がありうるのか,さまざまな可能性を考えたり,ひとつの物事を複数の観点から眺めるといった,広がりのある思考が必要である。それは「創造的思考」ということができよう。

 また日常の問題を考える際には,当該領域に固有な知識がある方が,幅広く問題を捉え要点を的確に批判できる。つまり「問題領域に関連した知識」も,批判的思考の重要な要素である。

 まとめると批判的思考とは,「批判的な態度(懐疑)によって解発(リリース)され,創造的思考や領域固有の知識によってサポートされる論理的・合理的な思考」と考えられる。この定義は,現在の教育に求められている「自ら課題を探求し,柔軟かつ総合的に思考し,判断し,解決する能力」に合致する。また心理学研究者にとっては,これらの構成要素を念頭において批判的思考を研究,測定し,育成に携わることが,批判的思考の研究成果の共有につながり,また,学校教育に効果的に思考教育を導入する手助けが可能になると思われる。

 なおこの定義の中に,さきほど問題視した「合理的」という言葉が入っていることに注釈をつけておこう。基本的には,その前に書いたように「論理的思考」が中心と考えていいと思われる。しかし,論理的と言ったときには,いわゆる形式的・非形式的論理が連想される。しかしここで言う論理的思考は,それだけに限定されるものではなく,筋道だった,理にかなった考え全般を指している。しかしそれをあらわす適切な言葉がないため,それらを包括するものとして「合理的」という言葉を,とりえあず使用しているのである。この点は,今後さらに検討し精緻化される必要があるであろう。

8.現時点における筆者の考え

 前節で述べた考えは,基本的には筆者の中では変化していない。しかしそれ以降,もう少し考えが深まった点があるので,それを補足しておこう。

 まず,道田(2000)では,上記の定義に加えて,さらに「見かけに惑わされず,多面的にとらえて,本質を見抜くこと」と,平易に表現している。これは先の定義と,以下のように対応している。「見かけに惑わされず」=批判的な態度(懐疑),「多面的にとらえて」=創造的思考,「本質を見抜く」=論理的・合理的な思考。またこれを,「問題の発見−解の探索−解の評価−解決」という問題解決の流れの中に位置づけている。

 「批判的」という語に関しては,道田(2001a)では,「批判的思考」(批判的に考える)と「批判」(批判する)が異なるものであることを指摘している。批判するとは,日常的には否定的なニュアンスを伴う。また行為の目的は,文字通り「批判」である。それに対して,批判的に考える場合には,行為の目的はあくまでも「考える」ことであり,考えることを通して,よりよい結論を得ることである。そのための方法論が「批判的」なのである。つまり批判的思考とは,批判的になることによって,よりよい思考を実現することである,という指摘である。さらに「批判的」とは,自分や他人のものの見方・考え方を無反省かつ短絡的に受け入れるのではなく,自覚的に吟味することであり,「自分の思考の意識化」である,とも指摘している。

 この「批判的」という点について道田(2001b)ではさらに,何かをじっくり考え,意見するということは,表には現れていなくても,反論や批判(異見)があるということであることを指摘している。それは他人の意見に対する反論だけではなく,今現在の自分の考えに対しても,そこで考えることを終わらせるのではなく,批判という形でさらに深めることであると言える,つまり,批判的思考において,「批判」は重要なポイントになっているのである。

 また道田(2001b)では,ある領域で批判的思考ができる人が,別の領域で批判的に思考できるとは限らないことを指摘し,多くの人が持っている批判的思考が領域特殊的(領域を限定すれば批判的思考ができる)と述べている。そこでは,批判的思考とは広い意味では全ての「良い思考」を指すこと,領域によって良い思考=批判的思考の内容が異なること,しかしそれらが共通に持っている,批判的思考の核とでも呼ぶべきものが存在することが示されている。

 以上が,現時点における筆者の考えの一部である。もちろん批判的思考の概念を模索する作業も,これで終わったわけではない。たとえば批判的思考の中にcaring, imagination, intuition, emotionなども含めるべきであると考えている研究者もいる(Walters, 1994; Wheary & Ennis, 1995など)。またそれに加え,「批判的思考」という名前で呼ばれる,各領域・各研究者における諸概念が,見通しのよいものとなるよう,さまざまな批判的思考の概念全体の見取り図を作り,また筆者自身の考えもその中の適切な場所に位置づけることが必要であろう。

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  42. 宮元博章 2000 批判的思考を中心においた心理学教育のあり方について 古川 治・塩見邦雄(著者代表) 伝統と創造(古川治教授退官記念論文集) 人文書院, Pp.95-106.
  43. 宮元博章 2001 クリティカルシンキング−基礎編 おはよう21, 2月号, 18-32.
  44. モリアーティ, M. F.(著) 長野 敬(訳) 2000 「考える」科学文章の書き方 朝倉書店(Moriaty, M. F. 1997 Writing science through critical thinking. MA: Jones and Barlett Publishers.)
  45. 中原秀樹 1994 消費者教育の展開−21世紀の消費者教育を目指して− 今井光映・中原秀樹(編) 消費者教育論 有斐閣, Pp.299-318.
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  47. Paul, R. 1995 Critical thinking: How to prepare students for a rapidly changing world. CA: Foundation for Critical Thinking.
  48. ルーベンフェルド, M. G. & シェッファー, B. K.(著) 中木高夫・石黒彩子・水渓雅子(監訳) 1997 クリティカルシンキング−看護における思考能力の開発− 南江堂(Rubenfeld, M. G. & Scheffer, B. K. 1995 Critical thinking in nursing: An interactive approach. Philadelphia: Lippincott-Raven Publishers.)
  49. Ruggiero, V. R. 1998 The art of thinking: A guide to critical and creative thought(5th ed.) Longman.
  50. Siegel, H. 1986 Skills, attitudes, and education for critical thinking. In F. H. van Eemeren, Grootendorst, Blair, and Charles(Eds.) 1986 Argumentation: Analysis and practices. Foris Publication: Netherlands, Pp.358-365.
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  59. Zechmeister, E. B. & Johnson, J. E. 1992 Critical thinking: A functional Approach. CA: Brooks/Cole Publishing Company.(ゼックミスタ&ジョンソン 宮元博章・道田泰司・谷口高士・菊池聡(日本語訳) 1996/1997 クリティカル・シンキング 入門篇/実践篇 北大路書房)