ヤリイカの人工飼育

映像:1984年撮影 ヤリイカの巨大神経 (2.5分、約20MB)


1972年当時、全ての動物学者、生物学者がイカは人工飼育できないと断言していた。ノーベル賞学者の故コンラッド・ローレンツ博士は自らの書で「イカは人工飼育できない唯一の動物」と述べていた。生物を何も知らない電子技術総合研究所の若き物理学研究者が3年もの苦労の末、成功した。論文発表と同時に世界的な話題となり、ローレンツ博士自身が早速来日し、自分の目で見るまで信じないと言ったという。ローレンツ博士は1週間水槽に張り付き本当であることを確認すると、この水槽はこれからの全ての水産生物の未来を変えるというコメントを残したといいう。

写真は1998年より稼動している理研BSIの海産生物飼育棟の20トンの大型水槽

写真提供: 読売新聞社


イカの死因
 イカは飼えないとされていた1970年頃、イカの死因は精神的ストレス説が主流だったという。イカを小さい水槽に入れると回遊するうちに狭いので壁にぶつかり、1日ぐらいで精神ストレスのため落ち着かなくなり、さらに壁への衝突が激しくなってついには外傷を負って死んでしまうという説である。

松本先生の仮説 (1980年のイカ水槽での写真)
 生物が生きれないということは、環境が原因に違いない。ならば、徹底的に環境を分析すればいいと松本先生は思ったという。3年の努力の結果、行き付いたのはアンモニア濃度だった。アンモニアを吸着し、測定できないほどに濃度を下げるとイカは何日か飼うことができた。さらに、アンモニアを分解するバクテリアを積極的に培養するバイオフィルターを採用することで、60日の飼育に成功した。

イカの神経の切り出し(参考写真)
 イカの神経は背中のペン(軟骨)の両側にあります。切り出しは頭を切り落とし、腹を割いて開いた状態(丁度スルメイカのように感じ)にし、透過光で証明し、実体顕微鏡下で行います。松本先生の切り出しは田崎一二先生の方法を参考に自力で編み出しだ方法です。