新人アーティスト・キンモクセイを紐解く“歌謡ロック”講座

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新人アーティスト・キンモクセイを紐解く“歌謡ロック”講座

“時代を後どり”“ポピュラーミュージックグループ”なるキャッチコピーで10月24日にメジャーデビューを果たすキンモクセイ

キンモクセイといえば金木犀。その黄色い花の香りに懐かしさや心地よさ、季節の移り変わりを感じてしまう秋の風物詩である。

そんな金木犀と同名のキンモクセイ。彼らのサウンドもやはり、郷愁を感じる少し切なサウンドで作られている。
決して前衛的ではなく、どちらかといえば'70年代の歌謡曲を彷彿とさせるそのサウンドはしばしば“歌謡ロック”という表現で紹介されている。

そこでバークスは“歌謡ロック”というをジャンルを'60年代のフォーク・ブームから振り返るとともに、これを21世紀に受け継ぐキンモクセイ・サウンドを徹底解剖します!

21世紀型歌謡ロックの切り込み隊長になってほしい

デビュー・シングル

「僕の行方」

BMGファンハウス BVCR-19040
2001年10月24日発売
1,260(tax in)

1僕の行方
2
しあわせ
3
逃げろ
4僕の行方(Original Karaoke)




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ロックに憧れるがロックになれず、フォークも歌うが人生語れず、一見ポップスのようでもあるがポップスとも言い切れず…つまり、神奈川県相模原市が生んだポピュラー・ミュージック・グループ、それがキンモクセイであります

日本人は“型”にあてはめるのが大好き。

逆に言うと、これまでのなにかに当てはまらないものを、異常に警戒するのである。しかし、得てして革命を起すのは必ず後者。後の成功者は、当初、疎外された経験や奇人扱いを受けた経験が多いはず。

当然、音楽業界も例にもれず、そういう暗黙のしきたりがあって、それまでの何かの例に当てはまらないものは、なかなか受け入れられづらい。たぶんユーザーはそんなに深くジャンルを限定していないと思うのだが、その前に存在する紙や電波という媒体に関しては、そういう傾向が強いのが現・日本の音楽業界である。

はっきり言ってくだらないしきたり。個人の関心ある、関心ない…はっきり言えば、好きとか嫌いでものを言うのならまだ納得の余地があるが、ジャンルに当てはまらないからなどと言われた日には目の当てどころもない。クソ食らえである。

さて、歌謡ロックという言葉であるが、実にわかりやすい。文字通り、歌謡曲+ロックの造語で、当然、日本ならではのものであるはずである。ポイントが違うが、個人的に発音した場合の“響き”が好きである。

一般的に、これまでにもこういった表現がなかったわけではないが、ロック・バンドを名乗る者にはあまり好意的に受け止められない表現であることが多かったように思う。どちらかというと懐かしものに向けての代名詞で、高度成長期にテレビが普及する過程によくあった日本のヒット曲。渡辺プロダクション全盛だった時代に多く見られたジャンルではないだろうか?(当然ボクもリアルタイムではないので、そんな気がするというものであるが)。

グループサウンズ(GS)
'66年から'69年にかけて日本で盛んだったスタイル。ビートルズ、ローリング・ストーンズ等に影響を受けて登場したジャパニーズロックグ ループの総称。
アーティスト:タイガーススパイダース、ドリフターズ、クレイジーキャッツ、加瀬邦彦とワイルドワンズザ・テンプターズ…他
具体的に例をあげると、'60年代から'70年代にかけて起きたグループ・サウンズ・ブーム。ジュリーこと沢田研二がヴォーカルをとっていたタイガース、堺正章や井上順、かまやつひろしなどが在籍したスパイダースなど、みんな楽器を持って演奏をしているのだが、歌っている楽曲はどう聴いても歌謡曲。そして彼らのことをバンドと言わずにグループという呼び方をしていたのも、まさに歌謡ロックの典型である。

これは当時、常時にて楽器を持たないドリフターズやクレイジーキャッツにも言えたことで、お茶の間向きの一見コメディアン的な存在感の印象しかない彼らこそ、日本音楽史上に堂々記されるべきエンターテイナーたちなのである(最近は知ってる人も少ないかもしれないが、'66年にビートルズが来日して日本武道館で公演を行った際、そのオープニング・アクトには内田裕也やスパイダースなどとともにドリフターズも出演している)。

'70年代『フォーク・ブーム』
ギター一本で世の中の不正、悪事に対して意義を唱えるムーヴメント
アーティスト:はっぴいえんど井上陽水吉田拓郎泉谷しげる岡林信康…他
そんな流れは'70年代に入って、井上陽水吉田拓郎はっぴいえんど、オフコースなどの出現でひとつのジャンルと確立した自作自演組によるフォーク、そして、自ら「ニューミュージックという言葉を作ったのは私」と語る荒井由実松任谷由実)のデビュー。さらに矢沢永吉率いるキャロルが「ファンキー・モンキー・ベイビー」のスマッシュ・ヒットで不良の音楽と言われつつも日本のロックというジャンルを一般的なものにしている。その後は、そこで根付いた各ジャンルのフォロワーたちが、そのジャンルのカラーを強く打ち出していきつつ、歌謡曲にはアイドル・ポップスというものが生まれたり、電子楽器の普及でテクノ・ポップが生まれたりと、現在のJ-POPに至る過程を刻んでいった。

『ジャパニーズロック・ブーム』
'60年代後半~'70年代初期を風靡したGSブームがもつ、“形式的・体制側”と対峙する形 で、'70年初期に台頭。当時のロックに対する認識は“反主流・反体制”であった。
ロックの語源:'50年代半ばにアメリカで生まれた8ビート、スリーコードを基調とするビートミュージック。
アーティスト:サディスティック・ミカ・バンド、キャロル、矢沢永吉、村八分…他

『ニューミュージック
(シティーポップス)・ブーム』
'70年代前半のフォーク・ブーム以降、台頭してきたシンガー・ソングライター達による
ポップス全般の呼称。
アーティスト 
荒井由実、尾崎亜美、ブレッド&バターサーカス、佐藤博、ティン・パン・アレイ、 吉田美奈子、南佳孝、シュガーベイブ、オフコース
たぶん歌謡ロックは、そのどの時代にも根強くあったのだと思うが、その時々のかっこいいものがフィーチャーされる時代には、アンダーグラウンドな存在であったのかもしれない。しかし、'80年代後半に起きたバンド・ブームあたりから、徐々に流れが変わってきた。

当時人気を集めたテレビ番組『イカすバンド天国』(通称:イカ天)などの成功により、商業音楽でないアマチュアで活動するバンド・ミュージシャン達も注目されるチャンスが増えたのだ。そこには今までの商業音楽では聴きなれない、実に多種多様のものがあった。そして、そこにも当然、歌謡ロックも多く存在していた…。 

これまでの歌謡ロックというと、なんとなくだが、コミカルな要素を多分に備えたものが成功してきた例を思い出す。例えば、歌謡曲路線を打ち出したシャ乱Q('92年デビュー)、いかにも関西のロックを打ち出したウルフルズ('92年デビュー)……など、か。また、そこに良き時代のフォークのエッセンスも注入してきたのがフリッパーズ・ギター('89年デビュー)だったり、L→R('92年デビュー)だったり、スピッツ('92年デビュー)やMr.Children('92年デビュー)なんかも言ってみればそうなのかな?  昨年デビューしたクリンゴンなんかも近いかも。要するに、王道なんですよ。屈指のメロディ・メーカーたち!

そんな中で今回デビューするキンモクセイ。もうずばり打ち出しが“ポピュラー・ミュージック・グループ”だって。そして、アーティスト写真&プロモーションビデオは、あのドリフのお茶の間コントに使われたセットを、当時のスタッフにお願いして忠実に再現! 木造2階建ての<キンモク荘>を作っちゃったんですよ。かといってメンバーは、写真で見る限り、いたって普通のお兄ちゃんたち。これがいいんでしょうね。全員、神奈川県の相模原市あたりの小さな町で生まれ育った幼なじみだそうで、このへんがバンプっぽくもあり……。

そんなキンモクセイの楽曲のほとんどを手がける伊藤俊吾くんから出て来る言葉やメロディは、彼自身が大きく影響されたと言う前述の時代のフォーク、ロック、ニューミュージック、そして歌謡曲のミクスチャー。たぶん伊藤くんは、自分の中から出てくる曲を名曲であると信じて、それを歴史に残したいと思っているに違いない。

なにせデビュー曲の「僕の行方」で設定された舞台が、駅の3番ホームですから! イルカ「なごり雪」や太田裕美の「木綿のハンカチーフ」、際めつけに麻生よう子の「逃避行」なんて思い出してしまいます(笑)。ただし、歌の内容は思いっきり前向き……なんだけど、弾けきれない(笑)っていうのが、彼らのいいところだったりするんですよ。そのへんに懐かしさを感じられる癒しの要素があるわけ。だからって100%懐古主義になっておらずに、ちゃんとJ-POPしてる。

どっちにしろもっと曲を聴いてみたい21世紀型歌謡ロックの切り込み隊長になってほしい人たちです。キンモクセイ、注目。

文●星野拓人(01/10/17)


about キンモクセイ

白井雄介(B)、伊藤俊吾(Vo、Key、G)、後藤秀人(G)、佐々木良(Cho、G)、張替智広(Dr)から成るロックバンド。神奈川県相模原市出身の5人組。

リーダー白井の姉が買ってきた1本のエレキギターをきっかけにして、メンバー5人は偶然の出会いを重ね、'99年キンモクセイを結成。

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バンド結成からこれまでに全国で30ヶ所を超えるライヴを展開。2001年には自主制作CD『キンモクセイ約18分』を発売。同年2月よりこのCDを引っさげ初の全国ツアー<キンモクセイの約40分>をスタート。

そして、2001年10月24日「僕の行方」でBMGファンハウスよりメジャーデビューを果たす。

メンバーそれぞれが影響を受けたミュージシャンに、'60年代~'70年代のフォークをはじめとして、はっぴいえんど、山下達郎、井上陽水を挙げているように、キンモクセイの音楽性は、これらのアーティストのフレイヴァーを今に受け継ぐ、どこか懐かしい匂いのする“21世紀型歌謡ロック”である。

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