【解説】


 22日から日本シリーズが始まります。セ・リーグは、広島がリーグ優勝の勢いそのままにクライマックスシリーズでDeNAを下して、25年ぶりの出場を決めました。今年のプロ野球、最大の話題はこの広島の大躍進ですね。「♪カープ、カープ、カープひろしま~、ひろし~ま~カ~プ~」と、応援歌もよく耳にします。

 さてこの「カープ」、言うまでもなく魚のコイを指す英語ですが、「ジャイアンツ」「タイガース」などと違い、複数形の「s」が付かないということも、よく知られています。単数でも複数でもつづりが変わらない単語の代表例として、英語の授業などで耳にした方も多いのではないでしょうか。

 ところが今回取り上げた記事は堂々と?「カープス」としています。これは校閲の出番、カープには基本的には複数形の「s」は付けないんです、と指摘したいところですが……何か事情があるのでしょうか。

 この記事は戦後の1949(昭和24)年秋、それまで1リーグでやっていたプロ野球が2リーグに分裂した頃に書かれたものです。この年、当時のプロ野球の統括団体である日本野球連盟の名誉総裁・正力松太郎は、2リーグ構想を打ち出しました(別記事1)。

 9月に入ると、この構想に呼応して近畿日本鉄道(近鉄)や毎日新聞社などがプロ野球参入を表明(別記事2)。以降続々と名乗りが上がります。

 その中に、広島も入っていました。別記事3は、広島などの参入表明を伝える記事です。この時点では「広島野球クラブ(チーム名カープ『鯉』)」とあります。「ス」はついていませんね。

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

・漢字の旧字体は新字体に
・句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
・当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください

広瀬 集(ひろせ・しゅう)

熊本県出身。就職氷河期世代。非正規の職を転々とした後、2006年にようやく入社。3年半の大阪本社勤務を経て、13年東京本社に復帰。ことばマガジン「昔の新聞点検隊」の言い出しっぺ。関心のある歴史ものやスポーツものを、同コーナーを中心に執筆中。