「結婚式は大安に挙げた方がよい」「友引に葬式をしてはいけない」――。「六曜」にまつわるこうした言い伝えは、日本人の多くが知っています。でも、六曜についてほかに知っていることは?と聞かれたら、はたと困ってしまうかもしれません。また、「先勝」や「赤口」は何と読む?と聞かれたら、自信を持って答えられるでしょうか。

 「人権情報局」で、なぜ六曜の話?と思われる方も少なくないかもしれません。まずは、昨年末のニュースから話を起こしたいと思います。

■「六曜」をめぐって紛糾


 昨年、大分県の佐伯市は、合併による新市誕生10周年を記念して「10年手帳」を市民に無料配布する予定でした。ところが、12月に中止を発表します。同県杵築市も、同時期に配布予定だった「世界農業遺産カレンダー」の再印刷を決めました。

 いずれも、理由は六曜を載せていたことでした。「六曜は科学的根拠のない迷信や慣習であり、ひいては差別を助長しかねない」「公的な配布物としてふさわしくないと判断した」などと両市は説明したといいます。

 しかし今年1月になって、佐伯市は中止を撤回しました。西嶋泰義市長は会見で「私の認識不足で混乱を招いた」と謝罪した上で、日記帳の作製に2500万円と多額の経費をかけていることなどを配布の理由に挙げました。配布にあたっては、六曜をめぐる問題点や配布決定の理由にふれた市長名のおわび文を添えることにしたそうです。

 昨年12月27日付の大分合同新聞によれば、県内の自治体の多くが六曜を科学的根拠のない迷信・因習の一つで差別意識につながる例と位置づけており、職員研修や人権学習会で取り上げている市もあるといいます。その一つである宇佐市は、「使用してはいけないと直接的に指導しているわけではないが、公の配布物に使うときは気を付けるべきだ」。一方で、六曜と結びつきが強い婚礼業界では「六曜を使うことが差別につながると言われても正直なところピンとこない。逆に差別と意識してしまうことの方が、差別を助長する気がする」という意見もあるようです。

森本 類(もりもと・るい)

1986年生まれ、東京都出身。2009年入社、東京本社校閲センター。大学ではクラシックギターのサークルに所属。「校閲のギャンブル担当」を自称するが、馬券の神には見放されている。好きな馬はグラスワンダー。