川口外相は12日、北朝鮮による拉致被害者の家族らと外務省で面会し、拉致事件について「普通の人の感覚で言えばテロの一環ではないか」と述べつつも、テロ行為を認定する国際法や国内法はなく、法的な認定は難しいとの見方を示した。家族側が要望した北朝鮮への経済制裁については、効果が見込めないなどとして「現時点で制裁の準備はしていない」と、否定的な姿勢を示した。
面会したのは「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」の横田滋代表ら。家族会が外相と直接会うのは、昨年9月の日朝首脳会談後、初めて。
家族会側は、先の訪米の成果などを説明したうえで、(1)拉致を現在進行形のテロとみるか(2)テロを理由に北朝鮮に経済制裁を科す準備があるか、などとただし、「政府独自で制裁措置を実施して欲しい」とも求めた。
外相は拉致のテロ認定について、他の被害者や5人の家族の帰国が実現していないことなどから「この問題は続いている」と答えた。ただ、「法律的には国際法にも国内法にもテロをきっちり定義したものはない」と説明した。
経済制裁については、「拉致問題や核問題の解決に、現時点で効果があるとは思われない。国際社会が静かに働きかけることが有効だ」と述べ、米韓中ロなどと連携して対話による解決をめざす姿勢を示した。
外務省によると、日本国内には国家のテロを理由に経済制裁を科す法律や、米国のようにテロ支援国家を認定する法律はない。テロ団体の資産凍結は関連の国連安保理決議に基づいて実施しているが、決議は個人や団体が対象で、国家を想定していない。
(03/12 21:30)
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