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2011年9月10日3時2分
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震災10分後にM9算出 長野の観測室、警報に使われず

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図:地震の規模推定と津波警報拡大地震の規模推定と津波警報

 東日本大震災の本震(マグニチュード〈M〉9)の地震発生から約10分後に、地震の規模をM9と気象庁精密地震観測室(長野市松代町)が算出していたことがわかった。海外の地震の規模を計算するシステムで、本庁が津波警報などに使う仕組みにはなっていなかった。気象庁は巨大地震との判定の遅れが問題になったことから、精密地震観測室のデータを国内用にも使い始めた。

 地震規模の推定は、津波警報を出すための基本情報。今回、地震発生約3分で本庁がM7.9と計算して岩手、福島で3メートル、宮城で6メートルの大津波警報を発表。30分後に沖合の全地球測位システム(GPS)波浪計で観測した津波から、それぞれ6メートル、10メートル以上に修正した。通信が途絶えて警報の修正が伝わらなかった地域もあり、早く正確な規模推定が課題になった。

 世界の地震を監視する精密地震観測室は、2001年から各国の観測データをインターネットで入手して、海外の大地震の規模を素早く計算する「松代マグニチュード」と呼ばれる手法を開発した。試験運用中の04年のスマトラ沖地震(M9.1)では発生約15分でM8.8と算出。05年から海外の大地震の規模を算出して、東京の本庁に送っていた。

 国内の地震規模計算は担当外だが、試算していた。東日本大震災では、7分でM8.9、10分でM9、13分でM9.1と算出した。マグニチュードが1大きいと地震のエネルギーは約30倍になる。

 気象庁の通常システムは3分で地震規模を出せるが、巨大地震を正確に見積もれる地震計を組み込んでおらず、M8.5程度で頭打ちとなり過小評価になる恐れがある。別の地震計のデータを使った巨大地震の規模の計算には15分以上かかる。松代方式は、誤差があるが、早いため、6月22日から国内の地震でも参考にすることにした。使えるデータはすべて参考にして、過小評価を防ぐねらいだ。

 気象庁は「当時、松代マグニチュードは業務の手順に入っておらず、連絡があったとしても使えなかった」という。10分後の連絡では、発生から3分以内に出す津波警報の第1報には間に合わないが、生かせる仕組みがあれば、修正に使える。

 精密地震観測室は、1944〜45年に旧日本軍が大本営を建設するために掘った地下坑道を使って、戦後、地震観測を始めた。安定した岩盤で海外の地震もとらえられ、国際地震観測網の観測点になっており、核実験の監視にも使われている。(瀬川茂子)

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