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「奇跡の一本松」で応援歌 やなせたかしさんが作詞作曲

2011年6月14日20時20分

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写真:5月30日付朝日小学生新聞に掲載されたやなせたかしさんの連載「メルヘン絵本」=(C)やなせたかし拡大5月30日付朝日小学生新聞に掲載されたやなせたかしさんの連載「メルヘン絵本」=(C)やなせたかし

 「陸前高田の松の木はいのちをつなぐ希望の木」――。アンパンマンの原作者やなせたかしさん(92)が、東日本大震災による津波で、岩手県陸前高田市の名勝・高田松原に1本だけ残った松の木を見て歌を作った。

 高田松原には震災前、海岸沿いに約7万本の松の木があった。だが津波に襲われ、残ったのは1本だけ。大切なものを失った被災者のあいだで、いつしか「奇跡の一本松」と言われるようになった。

 今にも倒れそうな一本松。やなせさん自身も92歳になり、学校の同級生は2人しか残っていない。「あとは全部死んでしまった。漫画家の仲間もほとんどいなくなった。わずかに3歳下の水木しげるがいるだけ。僕自身も病気が多く余命はわずかだと思う」。生き残った松が、自分自身と重なった。

 5月30日付の朝日小学生新聞の連載「メルヘン絵本」で、「ヒョロ松さん」と呼ばれる一本松が枝をふるわせて歌っている絵を掲載した。ヒョロ松さんが歌うのが、今回作詞作曲した「陸前高田の松の木」だ。

 〈ぼくらは生きる 負けずに生きる 生きていくんだ オー オー オー〉

 歌が下手な人でも大声で歌えるよう、メロディーは単純に。7月発売予定のCDには、童謡歌手の大和田りつこさん、岡崎裕美さんと一緒に、やなせさん自身の歌声も入っている。発売元などは未定だが、CDの売上金は全額寄付。寄付先は陸前高田市と相談して決める。

 「高田松原を守る会」の鈴木善久会長(66)によると、塩水につかった一本松の現状は安泰ではない。葉の緑が日に日に薄くなり、赤茶けてきている。「何とか生き抜いてもらいたい」。地元の人は木の回りに防潮柵をつくったり、活性剤を与えたりする努力を続けている。

 やなせさんは「我々の人生はいつも厳しい」と言う。「僕を含めて、危機一髪のところを生きていると思う。しかし命のある限りは生きて仕事をしていきたい」。被災した人とともに、困難を生き抜いていく。一本松も、私たちも。(中島嘉克)

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