現在位置:asahi.com>ニュース特集>中華航空機炎上> 記事

ボルト脱落、想像できぬ 中華機炎上で整備士・専門家ら

2007年08月24日07時18分

 「燃料タンクの周囲は、最も安全性を高めておかなければいけない場所なのに。ボルト1本で大規模な火災が起きるとは」。中華航空機の炎上事故で、ある国内の航空会社の整備士は驚く。

 脱落したボルトは、通常の整備・点検はもちろん、数年に1度の大規模整備でもほとんど触ることがない部品だという。「だから、なぜ脱落したのか、ちょっと想像できない」

 想定されるボルト脱落の理由を、加藤寛一郎・東大名誉教授(飛行力学)は、四つ挙げる。

 (1)異物が入り込んでボルトに当たり、傷をつけた(2)航空機の製造時に、紛れ込んでいた強度の足りないボルトやナットを使ってしまい、金属疲労で壊れた(3)ボルトを固定する部品が外れた(4)湿気などの影響でボルトが早く腐食した。

 しかし、いずれもこれまでに起きるとは予想してこなかった事態だという。「今後は、点検対象として重視されるポイントになるだろう」と、加藤名誉教授は指摘する。

 燃料タンクは、ボルト1本で突き破られるものなのか。航空各社によると、燃料タンクはアルミ製。「ボルトは鉄で、タンクより硬い。押し込まれれば破れるだろう」。別の整備関係者は言う。

 ボルトは、いつタンクに突き刺さったのか。

 スラットは、上空で着陸態勢に入ったときに、支柱(アーム)ごとせり出す。そして着陸後、滑走路を出てから駐機場に着くまでの地上走行中に格納される。

 「アームが引っ込んでゆくとき、落ちていたボルトを押し込んだ。そして、タンクに突き刺さった。そう考えると、駐機場直前で出火した今回の事故は説明がつきやすいのではないか」。機長経験者や整備関係者は、そう話す。

 国土交通省からの指示が出て、航空各社は23日夜、問題個所の点検を始めた。整備関係者が言った。

 「これまで何が起きたのかもわからず、不安だった。これで、原因個所は特定された。かえって安心した面もある」

PR情報

この記事の関連情報

このページのトップに戻る