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NHK「朝ドラ」、80作目は埼玉 これで全国一巡

2008年6月17日

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地図朝ドラの舞台になった都道府県

 NHKが来年度に放送する朝の連続テレビ小説「つばさ」の舞台に埼玉県が選ばれ、80作目でついに全都道府県を一巡する。視聴率低下が指摘される「朝ドラ」だが、舞台となったご当地は、地域振興の期待に沸いている。

 「川越の観光地やイベントの場面を、ドラマの中に数多く取り入れて下さい」。5月中旬、埼玉県川越市役所の迎賓室で、栗原博司・市自治会連合会会長らが、説明に訪れたNHKプロデューサーに訴えた。

 「『春日局』以来、20年ぶりのチャンス。川越を全国に紹介できる絶好の機会」と舟橋功一市長。今月初め、観光課内に「つばさ専任担当」として職員3人を配置した。

 89年放送のNHK大河ドラマ「春日局」では、市内にある喜多院の「春日局化粧の間」が注目され、年間観光客が一気に100万人増えた。

 07年の観光客は約598万人。朝ドラの舞台となれば「観光客が3割は増えるでしょう」と舟橋市長はそろばんをはじく。

 初めて福井県が舞台になった07年度の「ちりとてちん」。小浜市は昨年度、市役所に「ちりとてちん室」を設け、視聴者からの問い合わせに答え、撮影を支援した。

 ちりとてちんは関東地区の平均視聴率が15.9%と過去最低だった(総合午前8時15分〜30分の放送)。だが、再放送も含めれば視聴者はもっと多く、発売されたDVDも人気だ。3月まで、ちりとてちん室長だった小浜市の竹田茂芳・現観光交流課長は「連続テレビ小説の力がここまでとは思わなかった」。

 朝ドラの経済効果は大きく、05年度の「風のハルカ」(大分)の際、日銀大分支店が約126億円と試算。NHKは自治体の広報目的ならロゴマークやテーマ音楽などの使用を無償で許可している。「おはなはん」(66年度)の舞台になった愛媛県大洲市では、放送終了日から時報代わりにテーマ音楽を使い続けているほどだ。

 いったん舞台に決まれば、自治体に設置の動きが広がっているフィルムコミッション(FC、公的撮影支援団体)が協力することが多い。

 岩手が初めて舞台になった「どんど晴れ」(07年度)でも02年に出来た「盛岡広域フィルムコミッション」がエキストラ約700人を集め、ロケに協力した。事務局は「設立時の命題は、朝ドラの誘致だった」と明かす。

 もちろん地域おこしが目的ではないため、NHKは過去に誘致の陳情や署名を提出されたこともあるが、場所選びでは考慮しないという。ただ、後藤高久プロデューサーも、誘致に関係ないと断った上で「FCは地元の良いところを知っているので、取材や撮影の際には大きな力になっていただける」と話す。

 ◆東京に近すぎた?

 連続テレビ小説の放送開始は61年。75年から年2本が放映されている。埼玉が全国最後の舞台になったのはなぜか。

 「たまたまです」と話すのはNHKの銭谷雅義プロデューサー。あえて理由を挙げれば「主人公が地方から上京するパターンが多く、埼玉だと東京に近すぎるのでは」。

 朝ドラではヒロインの一代記か半生記が王道だ。かつ地方から上京するか、大阪に行く話が大半。東京か大阪で制作する事情もあり、主な舞台は東京が最多43本、次いで大阪19本だ。関東で最高視聴率60%を超した83年度の「おしん」も主人公が山形から上京する物語だった。

 75年度の「水色の時」など4本の制作にかかわった元NHKプロデューサーの平原日出夫さん(75)は語る。「当時は視聴率が40〜50%もあり、ドラマをどうやって続けるかしか頭になかった。『どこそこの県が舞台の作品はない』といった考えはなかった」

 最近は女性の生き方など時代を反映して脚本も変化。主に地方が舞台の05年度の「ファイト」や、主人公が横浜から岩手に行く「どんど晴れ」も現れた。

 最近10本では9月から放送の「だんだん」や「つばさ」など6本で、主な舞台が朝ドラとは縁のなかった県。空白県を埋めたようにも見えるが、全国一巡りを80作目に合わせる狙いは特にないという。NHK広報は「本気で空白県を埋めるのを急いでいたら、もう終わっているはず」としつつ、「地域の偏りがあまりあってはいけない」と説明した。(小堀龍之、森正美)

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