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自民の約束、実行は 検証・マニフェスト

2007年07月20日

 政党がマニフェスト(政権公約)を掲げて国政選挙に臨む姿が定着してきた。数値目標が示されることで有権者の判断材料が増える一方、政党側はその達成度を厳しく問われることになる。4回目のマニフェスト選挙となる今回の参院選。自民、民主両党のこれまでのマニフェストから、そのあり方を2回にわたって検証する。

図

  

 マニフェスト選挙が本格化したのは03年11月の衆院選からだ。仕掛けたのは当時の民主党代表、菅直人氏。対する小泉首相も実は巧みに活用した。この年9月の自民党総裁選。再選を目指す小泉氏はこう訴えた。

 「総裁選の私の方針が、国政選挙の自民党の公約になる」

 当初、マニフェストの提示を求める菅氏の誘いに「名前を変えても公約のこと」と冷ややかな小泉氏だったが、総裁選が近づくと党内の抵抗勢力をあぶり出す「踏み絵」として利用した。2カ月後の衆院選では130項目のうち約50項目で具体的な目標を盛り込んだマニフェストを提示。冒頭には、持論の郵政3事業の民営化を07年4月に実現すると明記された。

 04年の参院選公約でも冒頭に掲げ、郵政民営化法案の否決を受けた05年の衆院選公約は「郵政民営化こそ、すべての改革の本丸」と位置づけた。半年遅れだが郵政民営化は今年10月、実現にこぎつけることになる。

 03年の自民党公約を見ると、主要銀行の不良債権比率半減や国の補助金削減方針などが達成された=図。ただ、数値目標が達成された背景には、からくりもある。

 例えば「空き交番ゼロ」。3年間で交番勤務の警察官を4400人増やすことで実現したが、6509カ所(04年4月)あった交番のうち、324カ所が統廃合されたことも目標達成を容易にした。

 「2年間で300万人以上の雇用機会を創出」との公約は、05年6月の衆院内閣委員会で竹中平蔵経済財政担当相が「今の時点で創出されたと考えている」と答弁。これは医療や社会人教育など限られた分野での雇用機会増を試算したもので、ほかの分野の雇用減少分は考慮されていない。総務省の労働力調査によると、全就業者数は03年平均に比べて05年6月時点で102万人の増加にとどまっている。

 一方、「待機児童ゼロ作戦」では、毎年5万人ずつ保育所などの受け入れ数を増やす計画は達成された。だが、働く女性を中心に需要は増大しており、待機児童数は昨年4月時点でもなお2万人近くいるのが実情だ。

 未達成の公約もある。海外から日本への直接投資の倍増、若手研究者が能力に応じて使える研究資金の倍増……。

 マニフェストの眼目である数値目標は具体的であるだけに、政党側は検証にさらされることを覚悟せざるを得ない。

 閣僚として小泉政権を支えた竹中氏ですら、今年6月末の公開討論会で03年の自民党公約について、こう語った。

 「06年度に名目2%成長を実現するという政府・自民党の公約は実現できなかった。06年度の成長率は名目1・4%。民主党は自分たちならこうする、ということを打ち出す最大のチャンスだ」

 ■数値目標減る安倍政権

 「安倍内閣、そんなにひどいでしょうか。この10カ月を思い浮かべていただきたい」

 17日、安倍首相に近い菅総務相は大阪市内での街頭演説で声を張り上げた。教育基本法改正、国民投票法の制定……。菅氏は「まさに戦後、先送りしてきたものをしっかり整理しようというのが安倍内閣だ」と政権の実績を強調した。

 今回の自民党公約の冒頭には、憲法改正や教育再生といった首相がこだわる理念優先の政策目標が並ぶ。一方で具体的な目標を定めているのは、2010年の憲法改正発議や、政府が公表済みの年金記録問題対策などを加えても155項目中1割ほど。小泉首相時代の3回のマニフェストに比べ、極めて少ない。

 小泉氏が郵政民営化など分かりやすいスローガンを掲げて実現を目指す「目標設定型」とすれば、安倍首相は「実績主張型」だ。首相は応援演説などで「政権を担うこととは何か。それは、できることしか言わない、約束したことは必ず実行するということだ」と繰り返している。

 数値目標が減った背景には、公約の基礎になる政府の経済財政運営の方向性を示す「骨太の方針」の変質も影響している。小泉政権では「骨太」で改革の方向性や具体的な目標を提示し、公約にも反映させてきたが、安倍政権の6月の「骨太」は具体性が乏しいからだ。実際、与党の反発に配慮して、今年の「骨太」には公共投資の新たな削減目標などは明記されなかった。

 こうした点について、15日のテレビ番組で新党日本の田中代表が「今年の『骨太』は数字が示されていない」と指摘。すると自民党の中川昭一政調会長が「『骨太』は予算編成や税制の方針でもない。数字がないと言われる筋合いはない」と反論する一幕もあった。

 ただ、数値目標を積極的に示さない手法には批判も根強い。各党のマニフェストを検証している「言論NPO」の工藤泰志代表はこう指摘する。

 「首相が今までやってきたこと、これからやりたいことだけで、いま解決すべき課題が書かれていない。その課題への答えを明確な目標で示さなければ『悪いようにしないから任せろ』と言っているのと同じだ」

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