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異色の少年犯罪本、ネット発で好評

2008年02月09日

 「戦前の少年犯罪」(築地書館)が注目を集めている。発売3カ月で5刷が決まるなど、この種の本では異例の売れ行きで、すでに6500部。ネット上のサイトで発信してきた情報をもとにした本で、データの検証も呼びかける。(アサヒ・コム編集部)

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戦前の少年犯罪(築地書館)

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少年犯罪データベース

 著者は2001年からインターネットサイト「少年犯罪データベース」を主宰している。実名は明かしていない。

 サイトでは、戦前に起きた少年犯罪を過去の新聞記事を引用して紹介してきた。少年犯罪の専門家ではない著者だが、図書館で新聞記事を読むという作業を繰り返し、情報を増やしてきたという。

 サイトでは「間違いの指摘は歓迎します」と記述する一方、今日の少年犯罪を報じるマスコミや識者に対し、戦前の凶悪な少年事件への検証が不十分ではないかと、疑問を投げかける。

 具体的なデータを盛り込んだ実証的なサイトに注目したのが築地書館。2007年1月に出版化を打診し、10月に出版した。同社は「書籍化することで、読者層を広げられ、情報の信頼性も高められると判断した」としている。

 掲載されている事件は「18歳の浜松9人連続殺人事件」(1942年)や、「20歳女子(満18〜19歳)ら兄妹が父親毒殺」(1933年)など、衝撃的だ。書籍用として、時代背景などについて独自の考察を加え、メールでのデータの検証を呼びかけている。

 発売当初からネット上で話題となり、著者のサイト経由で購入する人が相次いだ。その後、都内の大型書店が特集を組んだことなどから、サイトを知らない人にも広まり、雑誌などで取り上げられるようになった。

 築地書館によると、ネット上では、戦前を安易に美化して現代の少年犯罪を論じる識者らに対し、以前から不信の声があった。同社の担当者は「見落とされがちだった数々の事件を章立てて解説したのが受けたのではないか」とみる。

 著者自身は少年犯罪そのものよりも、「情報の流れ方」に関心を寄せているようだ。「昔はよかったのに最近は」という調子で、少年犯罪を扱う教育界やメディアには違和感を抱くという。「戦前の事実の検証なしに、根拠のない意見を言うのではなく、基本的なデータを集めましょう」と訴える。

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