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星組 水乃 ゆり

宝塚歌劇105周年となる2019年幕開けの星組宝塚大劇場公演は、菊田一夫氏が宝塚歌劇のために書き下ろした名作の再演『霧深きエルベのほとり』と、スーパー・レビュー『ESTRELLAS~星たち~』の2作品を2月4日まで上演中。 男役に華を添えられるような品のある娘役になりたいと語る第102期生の水乃ゆり、新人公演で初ヒロインに挑戦、令嬢マルギットを演じる。

菊田一夫の名作『霧深きエルベのほとり』。 新人公演で船乗りと恋に落ちるヒロインを演じる

 2019年1月1日、宝塚歌劇105周年の幕開けを飾るのは星組宝塚大劇場公演、Once upon a time in Takarazuka『霧深きエルベのほとり』とスーパー・レビュー『ESTRELLAS エストレージャス~星たち~』の2本立て。2月4日まで上演中だ。1月22日には新人公演『霧深きエルベのほとり』が行われ、第102期生の水乃ゆりさんがヒロインのマルギット・シュラック役に挑戦する。
 『霧深きエルベのほとり』は日本を代表する劇作家・菊田一夫が1963年、宝塚歌劇のために書き下ろした宝塚歌劇史上に残る不朽の名作である。主人公の船乗りカールは言葉づかいが荒く態度も粗野だが、心のあたたかい人物として描かれており、男役の不良っぽい魅力を最大限に引き出した初演の演出が宝塚歌劇の男役の可能性を広げたと言われている。宝塚歌劇105周年の今年、シンプルなストーリーの中に浮かび上がる人間の心の機微と奥深さがこの作品の魅力と絶賛する座付き演出家・上田久美子氏により、時代を越えて甦った。
 「新人公演でヒロインを演じる同期の姿をすごいなと、ただ眺めているだけでしたが、このたびヒロインをさせていただくことになり、驚きや不安などのさまざまな思いが押し寄せてきました。同期からすぐに激励の言葉が届き、とても心強かったです。貴重な機会をいただいたので、いい緊張感を持続させてがんばろうと思います」
 風にゆれる花びらのような風情で話す娘役の水乃ゆりさん。「これまでお稽古場で見落としていたものがたくさんあることに気づき、今は本公演でマルギットを演じられるトップ娘役・綺咲愛里さんの姿をひたすら追い続けています。何気ないふとした仕草や視線の使い方、トップスター紅ゆずるさんのそばにいる時の存在のしかたなど、綺咲愛里さんが心を配っていらっしゃるすべてを学びたいと思います」
 物語の舞台はヨーロッパの港町。年に一度のビア祭りの夜。家出をした良家の令嬢マルギットは、長い船旅を終えたばかりの船乗りカールと出会い、恋に落ちる。「最初はマルギットの方がカールを好きになります。次第にカールがマルギットを愛するようになり、最終的にカールはマルギットの幸せを願って別れていくのですが、その出会いから別れの過程のお芝居に深い真実味があります。マルギットは芯の強い女性ですが、男性に頼らないと生活できないもろさもあります。何色にも染まっていないマルギットの純真さを表現したいと思います」
 水乃ゆりさんは中学生の時に中日劇場で、宝塚歌劇と出会った。「華やかで夢のような3時間でした」
 あの舞台に自分も立ちたいと思い詰めた水乃ゆりさんは、宝塚音楽学校受験に向けてバレエと声楽を習い始めた。「音楽学校入学後はバレエと声楽だけではなく、お芝居、モダンダンス、ピアノなどのレッスンが毎日あり、とても楽しかったのですが、スタートが遅かったので同期生についていくだけで必死。性格的にも自分から前に出ていくタイプではないので、いつも後方にいる。そんな自分ではだめだなと思っていました。同期がいたから初舞台を踏むことが出来たと思います」と音楽学校時代を振り返る水乃ゆりさんだが、初観劇した日からずっと宝塚歌劇の大ファンという思いの強さは誰にも負けないものがある。
 2018年8月から10月、立て続けに宝塚バウホール公演2作品に出演した。「『New Wave! ―星―』では緊張しながらも前列で踊らせていただきました。『デビュタント』では初めて通し役で、沢山の台詞をいただき、一人の女性を生きる難しさを痛感しました」
 それらの経験を生かして挑む、新人公演初ヒロイン役。「宝塚の娘役が大好きです。男役さんあっての娘役だと思いますので、男役さんに華を添えられるような品のある華やかな娘役になりたいです」
 宝塚の男役のそばにいて最も輝ける娘役―。温故知新のテーマのもと、どこかなつかしい新種の花を咲かせる娘役の登場である。

水乃 ゆりさん

2016年『THE ENTERTAINER!』で初舞台、同年、星組に配属。19年『霧深きエルベのほとり』新人公演で初ヒロイン。
出身/東京都  愛称・みずのちゃん

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
(株)ティーオーエー代表取締役、現代文化研究会事務局/主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカという夢1914~2014」(青弓社)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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