「MSはIBMに報復行為を行なっていた」

米IBM社の元幹部の証言によると、米マイクロソフト社は、IBM社がOS市場からの撤退を拒否したことに腹を立て、報復として両社間の親密な契約のいくつかを中止したしたという。

ロイター 1999年05月28日

米IBM社の証人が27日(米国時間)証言したところによれば、同社がウィンドウズと競合するオペレーティング・システム(OS)である『OS/2』を放棄することを拒否したため、驚いた米マイクロソフト社はIBM社へのライセンス料を5倍にし、IBM社はマイクロソフト社に2億2000万ドルを支払うことになったという。

来週再開するマイクロソフト社の反トラスト法違反をめぐる訴訟で、政府側の重要な反証証人となるIBM社のゲイリー・ノリス氏は、ノースカロライナ州ローリーで行なわれた宣誓証言において、マイクロソフト社側弁護士たちの質問に答えた。

宣誓のもとで行なわれた3時間に及ぶ質疑で、1994年と1995年に展開された、コンピューター業界の2大企業間の苦い争いに関する複雑な物語の一部が明らかになった。マイクロソフト社がIBM社のOS/2より優位に立とうと、攻撃や脅迫、そして報復を行なったという詳細が明らかにされたのだ。

この質疑によって、IBM社が一時期、マイクロソフト社への特許使用料に十分な支払いをしておらず、結局この争いは、IBM社がマイクロソフト社に 3000万ドルを支払って決着したことも明らかになった。

IBM社の社員だったノリス氏は、7月24日にゲイツ氏も参加した電話会議で両社が関係を修復しようとした際、ゲイツ氏が問題を説明するのを聞いた、と語った。

「ゲイツ氏はIBM社がマイクロソフト社に対し敬意をもっていないことを怒っていた」とノリス氏は語った。

マイクロソフト社側の弁護士の質問は、IBM社がある時点で、ライセンス料の支払いが足りておらず、この論争は最終的にIBM社側がマイクロソフト社に3000万ドルを支払うことで決着したことも明らかにした。

彼はまた、パソコンメーカーにIBM社のOS/2を販売しようとした際、メーカー側はマイクロソフト社から脅迫されていたため、顧客からの要望があり、OS/2が欲しかったにもかかわらず、これを購入することを恐れていた、とも証言した。

両社の関係が非常に紛争的になったので、ウィンドウズ95が1995年8月24日に発売される15分前まで、両社がこのOSのライセンスの合意に達しなかったという事実も明かされた。

かつてIBM社は、同社のパソコン用ソフトの供給会社としてマイクロソフト社を選んだことで、この若い会社に大きなチャンスを与えた。その数年後には、両社は共同でOS/2を開発したが、その後マイクロソフト社が路線を変更した。マイクロソフト社がウィンドウズに焦点を移した一方で、IBM社はOS/2で独自路線を歩みつづけた。

ノリス氏の証言によると、両社の関係の重要な転換点は、1994年夏、ラスベガスで開催されたコムデックス・コンピューターショーでの会合中に生じたという。

このトップレベルの会合で、ゲイツ氏と、マイクロソフト社でコンピューター・メーカー関係を担当していた幹部、ジョアキム・ケンピン氏は、IBM社に対し、OS/2の出荷を中止し、代わりにウィンドウズを採用するという契約を提案した。

IBM社はこれを拒否した。ノリス氏はこの会合に参加していなかったが、同氏が社内でパソコン部門に転属した際にこれについて説明を受けたと言う。

「ゲイツ氏は驚いていたと聞いた。ケンピン氏は合意に達すると踏んでいた……彼は恥をかいた」とノリス氏は証言した。そしてその後「彼らは報復行動に出た」

ノリス氏はマイクロソフト社から、「そちらが競合製品を出荷している限り」、価格条項や契約条件、サポートプログラムなどで「痛い目に合うぞ」と言われたと言う。

たとえば、IBM社が1995年に支払ったライセンス料は4000万ドルだったが、再交渉を迫られ、1996年には2億2000万ドルを支払うという痛手を受けたという。

加えてマイクロソフト社は、画面の再設計やハードウェアの変更を要求するなど、他にもさまざまな費用のかかる条件を設けた。

さらに、IBM社がマイクロソフト社にしてもらうことが必要だった簡単なテストは、1、2週間で済むところが60日から90日もかかったという。

マイクロソフト社のOSはIBM社との共同開発だったため、IBM社はもともとマイクロソフト社のOSに全く金を支払っていなかった。ウィンドウズ3.1に関しても、1本につき9ドルという、業界でも最も有利な契約を交わしていたという。しかし、状況は変わった。

ノリス氏は証言の一部で、マイクロソフト社がこの価格を、5倍増の45ドル90セントにまで釣り上げたと証言した。しかし彼は、また別の部分では、値引きを含めて1本60ドルだったと証言した。この件に詳しい筋によれば、状況は「複雑」で、今のところ証言で明らかになっているのは部分的なものでしかないという。

マイクロソフト社のリック・ペッパーマン弁護士はノリス氏に対し、1994年から95年の間、マイクロソフト社が10ヵ月の会計監査を行ない、IBM社から5000万ドルのライセンス料が未払いになっていることが明らかになったことについて、彼が知っていたかどうか訊ねた。結局、IBM社はマイクロソフト社に3000万ドルを支払うことで合意し、支払不足が決着した、とペッパーマン氏は述べた。

ノリス氏は、会計監査については聞いていたが、その詳細については知らなかったと述べている。

WIRED NEWS 原文(English)