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野辺山の電波望遠鏡「ヘリオグラフ」太陽観測終了へ 

観測所の敷地内に並ぶヘリオグラフ=南牧村観測所の敷地内に並ぶヘリオグラフ=南牧村
 国立天文台(本部・東京)が所有し、2015年に名古屋大学が運用を引き継いだ同天文台野辺山宇宙電波観測所(南牧村)の太陽観測専門電波望遠鏡「ヘリオグラフ」を使った観測が設備の老朽化のため3月末で終了する。同天文台は、ヘリオグラフのある土地の一部は信州大(本部・松本市)から借りているとし、協定に基づき施設の一部は20年度中に撤去する―と説明。南牧村は、多数の小型パラボラアンテナが整然と並ぶ景観を観光資源として残したい考えだが、先行きは不透明だ。

 ヘリオグラフは1992年に完成し、直径80センチのアンテナ84基で構成。信大が所有する土地の南北方向に220メートル、同天文台が所有する土地の東西方向に490メートルの「逆丁字形」に並ぶ。各アンテナを連携させることで直径500メートルの電波望遠鏡並みの観測データと、太陽の電波の分布を示した詳細な「電波画像」を得ることができるという。

 同天文台は設備の老朽化に伴い観測を終える方針だったが、各国の研究者から延長を求める声が続出したため2014年、名古屋大へ運用を引き継ぐ協定を締結。同大が中心となる研究者の国際組織が年間数百万円の維持費用を捻出し、本年度末の観測終了をめどに運用を続けていた。

 同大宇宙地球環境研究所の増田智准教授(太陽物理学)はヘリオグラフの性能について、完成から20年以上がたった今も「世界トップレベル」と説明。一方、近年は修理を重ねつつ平均7基が使えない中での観測だったとし、「十分役目を果たしてくれたと思う。お疲れさまと言いたい」と話す。

 村は信大から土地を借り受けた上で、ヘリオグラフ全基を維持することを模索する。ただ、同天文台は、信大の土地にある施設は「撤去した上での土地返却が信大との協定」と強調。信大は取材に、土地の借り受けや撤去見直しなど村の希望は「正式に話があれば検討したい」(農学部)と説明する。村総務課は「村としても大切な施設。研究が終わっても施設が維持できる道を探っていきたい」としている。

(3月25日)

長野県のニュース(3月25日)