トップ > 北陸中日新聞から > 北陸文化 > 記事一覧 > 11月の記事一覧 > 記事

ここから本文

北陸文化

【ほくりく昭和モノがたり】 ウォークマン(昭和54年発売)

縦13・4、横8・8、幅2・9センチの初代ウォークマン。電源は単三乾電池2本だった(写真は本体のみ)

写真

「音楽持ち歩き」の衝撃

 これまでの人生の中で何度か衝撃を受けた瞬間がありますが、その一つが今回紹介する「ウォークマン」を初めて聴いた時です。

 かつて、ステレオ装置はステータスシンボルとして応接間やリビングなどに置かれていましたが、徐々に個室に移行し、アンプなどの装置を自分で組み立てるオーディオマニアが生まれました。カセットテープの登場以降は、簡単に放送を録音して再生できるラジオ付きのカセットテープレコーダー(通称ラジカセ)が若者の間で人気となり、オーディオ機器も小型化しました。

 そんな時代背景の中、わずか三百九十グラムで、歩きながら音楽を聴ける世界初のヘッドホンステレオが登場しました。それがソニーの初代ウォークマンです。

 ウォークマンは、昭和五十四(一九七九)年七月一日に定価三万三千円で発売されましたが、当初はあまり売れませんでした。しかし、歌手の西城秀樹さんがウォークマンを聴きながらローラースケートをしている写真が、「明星」に掲載されたのを機に各雑誌で取り上げられ、八月に入ると各店舗で品切れが続出し、営業担当者は注文を断るのに必死だったといいます。

 ソニー社内では、発売決定後も「録音できないものは売れない」などの反対論がありましたが、盛田昭夫会長(当時五十八歳)は「これを作ればいつでもどこでもいい音楽が聴ける。きっと若者の必需品になる」と予言し、その後、世界を席巻する大ヒット商品となりました。

 ちなみに、ウォークマン一号機は、国立科学博物館によって二〇一二年、未来に残すべき製品として、重要科学技術史資料(通称、未来技術遺産)に選ばれました。

 ウォークマンが発売された昭和五十四年は、「インベーダーゲーム」が大ブームとなった年です。石川県は同年六月、青少年の非行化防止策として、県喫茶環境衛生同業組合に対して未成年者のゲーム遊びを禁止するように要望し、受け入れられました。

  (大衆文化研究家=本谷文雄)

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索