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【国際】

ロシア軍空爆1カ月 シリア泥沼 市民犠牲増

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 【モスクワ=常盤伸】ロシアが過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic  State)掃討を名目にシリアで空爆を開始してから三十日で一カ月。ISに対するよりも、欧米やアラブ諸国が支援する反体制派勢力に向けた激しい攻撃が続き、シリアのアサド政権は当面延命する可能性が強まっている。ロシアのプーチン政権はアサド政権存続も含めた早期の政治解決を狙うが、反体制派やアラブ諸国などはロシアへの反発を強めており、妥協点を見いだすのは困難な状況。シリア内戦の行方は混迷を深めている。

 ロシア軍は二十九日までに計一千回以上の空爆を実施。ISをはじめ反体制派の過激派の八百以上の標的を破壊したとしている。効果が薄いとされる米国を中心とする有志国連合の空爆と比べると桁違いの回数だ。最近は攻撃頻度も高まり、一日で最大九十四回と激化。遠く離れたカスピ海から巡航ミサイル攻撃も行い、軍事力を誇示した。

 シリア人権監視団(本部・ロンドン)の二十九日の声明によれば、空爆開始から二十九日までの一カ月間の死者数は五百九十五人。このうち約三割に当たる百八十五人は民間人だった。一般市民の犠牲が多い理由は、ロシア軍がクラスター爆弾を使用しているとされるため。クラスター弾は一発の親爆弾が空中で多数の子爆弾をまき散らす。使用後も不発弾による被害が相次ぎ、全面禁止を訴える声が国際的に強い。

 また、戦闘員の死者四百十人のうち、反体制派側の死者は二百七十九人。IS戦闘員は百三十一人と、反体制派よりも少なかったとみられる。

 ただ、空爆は原油安や対ロ制裁で苦境にあるロシア経済にとって負担。経済紙RBCの試算では一日当たりの戦費は最低一億五千六百万ルーブル(約三億円)。ロシアの独立系世論調査機関の最新調査では53%が空爆を支持すると回答する一方、41%が空爆によって社会保障費などが削減されることに懸念を示している。ロシアが和平へ外交攻勢を強める背景には、介入の泥沼化を回避したいプーチン政権の思惑があるとみられる。

 

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