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 日本人の食文化に定着しているニホンウナギが絶滅の瀬戸際に追い込まれている。国際自然保護連合(IUCN)は、12日に発表した「レッドリスト」の最新版で、絶滅危惧種として掲載した。保護を求める声は世界的に強まりそうだ。

 IUCNが科学的に確かめたところ、3世代(30年間)の個体数減少が50%以上という基準などにあてはまったことから判定した。原因としては、乱獲や生息地の環境悪化、海の回遊ルートの障害、海流変化などを指摘した。

 評価に携わった中央大の海部健三助教(保全生態学)は「もっと早く掲載されてもおかしくなかった。保全しなければいけない、という方向につながっていくことを望む」と話した。

 IUCNレッドリストは、「絶滅」から「軽度懸念」「情報不足」まで8段階に分類している。そのうち「絶滅危惧」は3段階あり、ニホンウナギは中間の「絶滅危惧1B類」とされた。全体の中では、上から4段階目。「近い将来、野生での絶滅の危険性が高い」という分類だ。

 ウナギ類は今回、再評価を含めて12種がリストに並び、うち3種が絶滅危惧種となった。

 ニホンウナギは、養殖ウナギもすべて天然の稚魚から育てられている。太平洋のマリアナ海溝近くで産卵し、稚魚が黒潮に乗って日本や中国、韓国、台湾付近へやってくる。稚魚や親ウナギの漁獲量は、黒潮の流れによって年ごとの変動はあるものの、長期的には激減している。

 絶滅危惧種とされても、輸出入や食べることの禁止には直接結びつかない。ただ、危機にある種だと広く認められるため、野生生物の国際取引に関するワシントン条約で規制対象になる可能性が高まる。将来的に稚魚やかば焼きの輸入が制限される事態も予想される。

■世界の7割、日本人の胃袋へ

 世界のウナギの7割は日本人の胃袋に収まっていると言われる。1990年代から日本で大量に消費されたヨーロッパウナギは6年前に絶滅危惧種とされ、ニホンウナギが続いた。資源を回復させる試みは始まったばかりだ。

 ウナギ稚魚の国内漁獲量は半世紀前は年200トン以上あったが、2012年までの3年間、年3~6トンと過去最低水準が続き、13年はさらに減少。今年は5年ぶりに回復しているが「過去に比べると低水準で引き続き右肩下がりで減少している」(水産庁)という。