イスラム教徒お墓不足、土葬可能な場所少なく日本では、お墓に入れない――。 国内に数多く暮らすイスラム教徒(ムスリム)が、墓不足に悩んでいる。教義で定められた土葬を禁止する条例や地域の反対で、新たな墓地の確保が難しいからだ。永眠の地をめぐるムスリムの悩みは深い。 2006年、札幌市のムスリムの男性が亡くなり、妻と幼い子ども3人が残された。ムスリムの友人らが、北海道余市町の霊園に交渉の末ようやく了承してもらい、遺体を埋葬した。その年、福岡県のムスリムの夫婦が流産した赤ちゃんの遺体をはるばる運び、同じ霊園に埋葬した。夫婦は、泣いて喜んだという。 山梨県甲州市郊外の曹洞宗寺院・文殊院は、数少ない受け入れ先の一つだ。一画にある「イスラーム霊園」には、4800平方メートルの土地に約120基のムスリムの墓が並ぶ。どれも土葬だ。 ここは、文殊院が境内の一部を提供し、宗教法人「日本ムスリム協会」(東京都渋谷区)が管理する。東京や山梨の近郊県のほか、東北、九州などで暮らしたパキスタンやサウジアラビアなど中東出身のムスリム、ムスリムに改宗した日本人らが眠る。故人名をアラビア語で彫った墓も多い。 国内のキリスト教徒は日本の風習に沿って火葬が一般的なのに対し、ムスリムは教義に厳格で、長年過ごした土地に土葬して弔う。協会やムスリムの互助組織「イスラミックセンタージャパン」(東京都世田谷区)が全国各地で埋葬先を探したが、条例に阻まれたり、墓地の管理者らから「土葬はイメージが良くない」などと拒まれたりした。 結局、見つけた土葬可能な墓地は甲州市と神戸市、余市町にある3か所。ただ、神戸は市営墓地で埋葬者は市民に限られ、余市町は縁者が墓参するには遠い。 こうした事情で、多くのムスリムが甲州市のイスラーム霊園を選んだが、文殊院住職の古屋和彦さん(44)は「数年後は飽和状態。住民に『土葬は怖い』と反対する声もあり、新たな墓地の造成は難しい」と話す。 イスラミックセンタージャパンの宣教理事で中央大講師のサリーム・ラフマーン・ハーンさん(54)は「在日ムスリムは推定10万人で、今後も増えるだろう。日本国籍を持つムスリムには行き場さえない」と訴える。 ◇土葬=遺体を焼かず、土中に埋葬すること。墓地埋葬法は国民の宗教的感情に適合するよう墓地や埋葬などについて規定しているが、土葬を禁じていない。しかし、東京都や大阪府、名古屋市などは衛生面などを理由に土葬を禁じる条例や規則を定めている。 (2010年8月14日14時45分 読売新聞)
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