復帰第一弾マキシシングル『本能』が大ヒット!ファーストアルバム『無罪モラトリアム』が100万枚突破!そして遂に、林檎ファンが待ちに待った『ギブス』と『罪と罰』を同時リリース!2000年も林檎ちゃんの快進撃は止まらない!

●今回、何故マキシシングルを2枚同時リリースしようと思ったんでしょうか? ちょと豪華すぎません?(笑)。
林檎:もったいないですよね(笑)。どっちを出そうかすごく悩んで、もう自分で決められなくなっちゃって。それでスタッフに任せたら、スタッフの人達も決められなかったらしく(笑)。

●(笑)。『ギブス』はデビュー当初からライブやイベントで披露されてた曲で、ファンの間では『ここでキスして。』『シドと白昼夢』と並んで“シド三部作”とか言われているみたいですけど。
林檎:ああ〜、曲調的には近いかもしれないですけど、『ギブス』に出てくる男の子というのは、『ここでキスして。』の時に付き合ってた男の子とは別の人ですね(笑)。『ここでキスして。』が16歳で、『ギブス』が17歳の時の曲です。

●そういえば『ギブス』には、シド&ナンシーならぬカート・コバーンとコートニー・ラブの名前が出てますよね。
林檎:う〜ん、そのへんは突っ込まれると辛いんですけど(笑)、それは完全にその時に付き合ってた男の子の受け売りで、私自身はそんなにニルヴァーナに影響を受けたってワケでもないんですよね。今回リリースするにあたって詞を変えようかとも思ったんですけど、「それはそれでその時の私なんだから」と。

●17歳らしい、すごく素直なラブ・ソングですよね。林檎ちゃんの弱さみたいのが出ていてドキリとさせられました。
林檎:「あの時こういう弱い部分を素直に出していたら、別れなくて済んだのにな」という、ちょっと後悔の詞ですね。あ、未練はないですよ(笑)。強がっているわけじゃないんですけど、私は好きな人とかに対して弱い部分を上手く出すことができないんですよね…。母にもよく注意されるんですけど(笑)。

●(笑)。カップリング曲はザ・ピーナッツのカバーで『東京の女』と英語詞の『Σ』という、相変わらずのハチャメチャぶりで。
林檎:ホントに(笑)、アレンジもやりたい放題な感じだし。

●『東京の女』を聴いていると、「『歌舞伎町の女王』の原点はこの辺りにあるのかな?」って感じがしたんですけど。
林檎:うんうん、きっと『丸の内サディスティック』とかもそうなんだろうな。ザ・ピーナッツは父が大好きで、その影響で私も小さい頃からよく聴いてたんですよ。『歌舞伎町の女王』を出した時に「アングラを狙っている」とかって言われたりもしたんですけど、私はアングラなことをやっているつもりは全然ないし、今回『東京の女』を録ってみて、「私にとって『歌舞伎町の女王』っていうのは本当に自然なことなんだな」って思いましたね。

●もう一枚のマキシシングルの『罪と罰』は、全国ツアー「先攻エクスタシー」で林檎ちゃんが「シングル・リリースするように東芝EMIに圧力を!」とオーディエンスを煽って署名運動にまで発展しちゃったという曰く付きの楽曲なんですけど(笑)。
林檎:あれはね〜、初日の福岡だけのリップサービスのつもりだったんですけど、だんだん大事になってきちゃって(笑)。

●まあ、そのお陰かどうか、今回めでたくもリリースされるわけなんですけど、めでたいといえばブランキーのベンジー(浅井健一)さんがギターで参加されているんですよね。
林檎:『罪と罰』は体調を崩して自宅療養していた時に作った曲で、浅井さんにデモテープと手紙を送ったんですよ、携帯電話の番号を書いて。そのへんはしっかりしているんですけど(笑)、そしたら浅井さんが「カッコイイ」って誉めてくれて。

●憧れのベンジーさんとレコーディングしてみてどうでした?
林檎:緊張しましたよ〜!でも、スタジオの空気を和ませようと「大丈夫かな? 俺、練習しよう」とか言ってて、すっごく優しいんですよ。惚れ直しました(笑)。

●はいはい(笑)。サウンド的には、ヘヴィー級の重厚感のある70年代的ロック・バラードになってますよね。
林檎:う〜ん、なるべく70年代っぽくならないように気をつけたんですけど、バックの演奏が上手すぎたのかな?(笑)。

●「頬を刺す朝の山手通り♪」という詞ではじまった瞬間に、懐古趣味じゃない圧倒的なリアリティーが生まれていますよね。
林檎:この詞は、病床に伏してた時の私の日記ですよね。「病気になったりしたのは罰なんだ」って、自分を責める気持ちが一端振り切れちゃった感じ。

●罰って何の罰なんですか?
林檎:『本能』で歌っていたような、自己顕示欲とか嫉妬心とかいう私が思うところの本能に対してかな。だから、『罪と罰』と『本能』は同じことを言っていると思うんですよね。本能を肯定するか罪とするかという違いはあるんだけど。

●カップリング曲の『君ノ瞳ニ恋シテル』は、60年代の名曲中の名曲『can't take my eyes off of you』のカバーですね。
林檎:私、去年の夏ぐらいにリバイバル・ブームだったんですよ。その時に乗ってた車(『罪と罰』のPVで真っ二つになったカラシ色のベンツ)が古くてカセットテープしか聴けないから、自分で古い曲ばっかりを集めたドライブ用のテープを作ってて、その中にこの曲が入ってたんですけど、バっカみたいな詞なんだけどすごく泣けたんですよね。だって、「I love you baby♪」ですよ(笑)。でも、それがすごく切実な感じがして、とにかく泣けたんですよね…。で、「どうしてこんなに泣けるんだろ?」って思って今回カバーしました。

●もう一曲のカップリング曲『17』なんですけど、聴いた瞬間フェアーグラウンド・アトラクションを思い出して。
林檎:あ、嬉しい。私はフェアーグラウンド・アトラクションのエディ・リーダーに憧れていて、エディみたいなヴォーカリストになりたいってずっと思ってたんですよ。でも、声質とかが全然違うから、「私がなるのはエディじゃなくて、ジャニス・イアンだな」って思ったんですよね(笑)。

●どっちも超大物じゃないですか(笑)。じゃあ、この『17』はジャニス・イアンの『At Seventeen』に影響を受けて?
林檎:そうですね。ジャニス・イアンが「17歳の時の私はこうだった」って歌っている『At Seventeen』を聴いて、「今17歳の私はこうだよ」っていう曲を作ったんだろうな。

●『ギブス』も17歳の時の曲ですよね? 林檎ちゃんにとって17歳っていうのはどんな時期だったんですか?
林檎:「まわりの人達が自分を異端視しているんだ」ってことに気づいた歳ですね。高校をやめたのもその頃だし、今までの人生の中で一番悩んでいた時期だったような気がします…。


〈TEXT:ツダケン/unga!編集部〉