中国新聞サンフレ情報
<ペトロビッチ流サンフレ再生・上>選手の特性見抜く名医 '06/12/5

 Jリーグ1部(J1)広島は、13勝6分け15敗の10位で今季を終えた。序盤は一時最下位に沈み、J2降格の危機に直面した。6月中旬、ミハイロ・ペトロビッチ監督が就任し、息を吹き返した。短期間でチームはどう変わったのかを探る。

 ▽3連敗でも明るく

 8月23日のG大阪戦に敗れた直後だった。24日、千葉県成田市のホテル内フットサルコートであった練習は、とても3連敗したチームとは思えないほど雰囲気が明るかった。練習後、DF戸田和幸はDFダバツと守りについて30分以上も話し込んだ。宿舎ではペトロビッチ監督が気軽にイレブンに話しかけたという。その後、鹿島、磐田に連勝して流れに乗る。

 チーム再生のポイントは、「人の心をつかむ能力」と「選手の適正を見抜く力」にあった。監督就任時、「すべての選手を公平な目で見た上で、メンバーを決める」と公言。3年目のMF青山敏弘、新人MF柏木陽介がレギュラーに定着した。リーグ終盤には左ストッパーに入り、不安な面を見せていた盛田剛平をダバツの故障が回復しても使い続けた。「無失点なのに代える必要はない」

 ゲームキャプテンには戸田を指名した。「自分にも他人にも厳しい人はより責任感が強い」。大胆なコンバートも施した。守備的MFが本職の戸田と森崎和幸をDFへ。戸田が守備ラインを押し上げ、森崎和が巧みにボールをカットする。終盤には4試合連続の無失点を記録。潜在能力を引き出した。

 「監督は時には医者でもある」と言うだけに、選手へのケアもきめ細かかった。オーバートレーニング症候群で戦列を離れていた森崎和を、練習に参加させながら早期回復に導いた。戦術面などで疑問を持った選手とは、互いが納得するまで話し合った。

 ▽走り込み200キロ義務

 指揮した22試合で11勝2分け9敗。「こんなに早くチームが立ち直るとは」と喜ぶ一方、「来季はさらに上位を。そのためには控え組の台頭が欠かせない」。このオフ、選手には約200キロの走り込みを義務づける。

 2月初旬からは2週間、トルコでキャンプをする。欧州のクラブと対戦を重ねる中で「選手に球際の強さの重要性と、自分の長所短所を身をもって知ってほしい」。優勝争いするための布石を着々と打っている。(佐藤正明)

【写真説明】就任初日から大きな声と身振り手振りを交えて選手を指導したペトロビッチ監督(中央)=6月14日、吉田サッカー公園(撮影・山本誉)




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