発行日 : 2008年07月03日

世界初!サポーターとともに実現する衛星

超小型感測衛星「WNI衛星(仮称)」打ち上げに向けて本格的始動

株式会社ウェザーニューズ(所在地:東京都港区 代表取締役社長:草開千仁)は、気候変動や地球温暖化に対する取り組みのひとつとして、超小型感測衛星「WNI衛星(仮称)」を2010年に打ち上げ、温暖化の原因となる温室効果ガスや、温暖化によって減少し続けている北極海の海氷などを企業や一般サポーターとともに感測(※1)するプロジェクトを開始します。本プロジェクトは、東京大学、千葉大学、アクセルスペース(※2)とともに研究・開発を進めており、従来の衛星では成し得なかった超小型衛星によるデータ感測を目指します。極域の画像を撮影し海氷を解析するとともに、衛星と世界各地に設置した感測機の間でのレーザー光の減衰を評価することで温室効果ガスを感測する斬新な方法を試みます。当社では、趣旨に賛同する企業や学校、一般サポーターの皆様とともに、WNI衛星(仮称)を利用した高度な情報サービスを実現していきます。

背景

2008年7月に開催される洞爺湖サミット。本サミットでは、気候変動やクリーンエネルギーについて総合的に議論され、地球温暖化を防止するための対応策を考える場として重要なものになると言われています。安全性や経済性を維持しながら環境負荷を軽減することが企業や個人の生活でも重要視されている昨今、当社では、こうしたニーズに応えるための気象コンテンツサービスとは何か、サービスの可能性について挑戦し続けています。また、今回のプロジェクトを通して温暖化や気候変動などの地球の変化を自らで感測し、感じてもらうことが環境問題に主体的に向き合う第一歩となると考えています。

WNI衛星の特徴

当社は、東京大学、千葉大学、アクセルスペースとともに、2010年の衛星打ち上げに向けて2005年より研究・開発を進めてきました。このたび開発を進めている「WNI衛星」には、従来の衛星とは違うさまざまな特徴があります。

WNI衛星の特徴

WNI衛星の特徴

1.企業・学校・一般サポーターの参加による“WITH”型の感測システム

衛星と世界各地に設置した独自開発の地上設置型感測機の間でのレーザー光の減衰を評価して、大気中の温室効果ガスの感測を実現します。感測機は協力者を募り世界各地に設置され、衛星を使ったリモートセンシングだけでは実現できない高度な情報取得を試みます。さらには、海運会社にも協力を呼びかけ、世界中を航行している船舶にも同様の感測機を設置し、海洋上空のデータを取得することも計画しています。利用者としての立場ではなく、企業や学校、個人サポーターからの協力も衛星感測システムの一部として重要な役割を果たすという、従来の衛星システムとは一線を画した世界初の試みです。

2.サポーターの夢の衛星

本プロジェクトは、企業や学校、一般サポーターの皆様とともに、衛星を通じて「地球のいま」を測る感測プロジェクトであり、賛同していただいた方々には、プロジェクトメンバーの一員(サポーター)として衛星の打ち上げから運営までを、ともにサポートしていただきたいと考えています。そこで、当社では衛星の未来を支えてくれる企業・学校・一般サポーターを広く募集することを計画しています。プロジェクトメンバーになっていただいたサポーターの方々には、当社メディアを通じて活動の様子を届けます。同時に、感測して分かった「地球のいま」を受け止めることで、「地球の未来」についてサポーターの皆様とともに考えていきたいと思います。

3.北極海航路の実現に向けた極圏の海氷モニタリング

温暖化が進むにつれ北極海の海氷面積が減少を続けており、極付近の経済活動や船舶の北極海航路に世界中から注目が集まっています。当社では、衛星に可視〜近赤外線カメラを搭載することで、極域の海氷のモニタリングも同時に行います。海氷の感測情報と、気象・海象の感測・解析・予測・分析情報と合わせて北極海航路の船舶の安全な航海を支援する計画です。

4.コンパクトで高性能な超小型衛星を活用

衛星の開発には、国家プロジェクト的に莫大な予算と時間が必要であるとされていましたが、このたび開発を進めているWNI衛星は、衛星で行うことを限定化することにより、超小型衛星を用いたシステムでも高度な感測を行うことが期待出来ます。衛星を小型化することで開発コストと開発期間の短縮を図るほか、ピギーバック方式(※3)での打ち上げを行うことで、打ち上げに伴うイニシャルコストを抑えます。さらには、小型衛星の有効性を確認したうえで、小型衛星と一体的に感測を行う地上系感測機の設置に追加投資を行うことで、サポーターによる感測システムの更なる向上・拡大を目指します。こうしたシステム形式を取ることで、遠い存在とされていた宇宙への扉を開いていきます。

当社では、独自衛星の打ち上げを通じて、気候変動問題に多くの皆様とともに取り組み、対応サービスの実現につなげていきたいと考えています。


※1: 感測:ウェザーニューズ独自の言葉。目や耳など、一人ひとりの人間が持つ身体の能力である五感と、五感を拡張する道具を用いて測ること。五感で「感じ」、「測る」ことを言う。
※2: アクセルスペース:東京大学中須賀研究室発のベンチャー企業として設立が予定されている、衛星の開発から打ち上げ、運用までを実施する小型衛星総合技術会社。
※3: ピギーバック方式:大型の人工衛星を打ち上げる際にロケットの隙間を利用して小型の衛星を搭載し同時に打ち上げること

WNI衛星概要

軌道上の衛星イメージ図

サイズ:20×20×15㎝
質量:2〜3㎏
感測軌道:600〜800㎞(極軌道)
寿命:1〜3年
打ち上げ時期:2010年
打ち上げ場所:未定
打ち上げ方式:ピギーバック方式
衛星利用の目的:
1.温暖化の原因となる温室効果ガスの感測
2.極圏の海氷の感測

今後のスケジュール

2008年 概念設計〜基本設計
2009年 詳細設計〜製作試験、打ち上げ機調整
2010年 運用支援システム整備、打ち上げ/運用開始
2011年 実運用

本件に関するコメント

中須賀真一氏(東京大学航空宇宙工学教授)

「大学で開発中の超小型衛星は従来の衛星の2桁ほど安い価格と2年程度の短期で開発ができ、これまでの宇宙開発のしきいを大幅に下げ、宇宙利用の分野やプレーヤーを爆発的に増やすポテンシャルを秘めています。我々はこれを使って、環境問題など実際の社会に貢献できる草の根的な宇宙開発を目指して行きたいと考えており、今回のウェザーニューズとのコラボレーションはまさにすばらしいテーマです」

石橋博良(ウェザーニューズ会長)

「WNI衛星は、当社のWITHのコンセプトに基づく取り組みの象徴的な存在です。海運業界では、今燃料費の高騰にどう対処すべきかが大きな問題になっています。WNI衛星はまず北極海航路の可能性を探り、氷の状況を船舶に伝えるという仕事を出発点としています。また、地球温暖化については、当社では従来から気候変動という切口で捉えてきましたが、一番大切なのは、この問題は我々の問題であり、他人事で済まされない問題であることです。 “今地球で何が起こっているのか”、“北極海の氷がどの位の量と速度で減少しているのか”など、自ら実感することが出来そうなので、このあたりから始めようと思っています。
WNI衛星は、従来型の宇宙開発という切り口で展開するものではありません。長い間、開発にばかり力点が置かれてきたきらいのある宇宙は、これからはもっとその成果を、デマンドサイドの発想を大切にした利活用技術に焦点を当てることになると思います。このたび多くの仲間にめぐりあって、この学民共同のプロジェクトがスタート出来た背景に、多くのサポーターの力を感じています。前進あるのみです。一緒にがんばりましょう」

株式会社ウェザーニューズ(東証1部 <4825>)について

世界主要国 / 地域に32の営業拠点を持つ、世界最大の民間気象情報会社。
海、空、陸のあらゆる気象現象の世界最大規模のデータベースを有し、独自の予報により、航空、海運、流通、自治体などの各業務の問題解決情報を提供している。
一般個人に対しては、携帯電話、インターネット、BSデジタル放送等のメディアを通じて、個人の生活を支援する各種情報を提供。