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アメリカ合衆国

yasuokaの日記: 電卓と電話のテンキー配列は、なぜ異なっているのか

日記 by yasuoka

ネットサーフィンしていたところ、Richard Louis Deiningerの訃報(IEEE Transactions on Man-Machine Systems, Vol.11, No.3 (September 1970), p.139)に出くわした。1970年3月30日に、42歳の若さで亡くなったらしい。Deiningerは電話のテンキー配列を、電卓と異なる形にした張本人(の一人)なので、ちょっと複雑な気分だ。

電卓のテンキー配列は、Gustaf David Sundstrandが1914年に発売した「Sundstrand Adding Machine」という機械式卓上加算器に遡る。Sundstrandがどうしてこういうテンキー配列に至ったのか、U.S.Patent No.1198487では必ずしも明らかになっていないが、私(安岡孝一)が図版を読む限りでは、「0」のキーが「1」のキーの近くに無いと、ハードウェアが複雑になってしまう気がする。このテンキー配列は卓上加算器でしばしば用いられ、1964年発売の「Canola 130」卓上電子計算機に引き継がれることになる。

その一方で、Deiningerは論文「Human Factors Engineering Studies of the Design and Use of Pushbutton Telephone Sets」(The Bell System Technical Journal, Vol.39, No.4 (July 1960), pp.995-1012)において、卓上加算器のテンキー配列を否定する。この論文でDeiningerは、16種類のテンキー配列について各々実験をおこない、押しやすさと間違いの少なさを勘案した上で、あえて卓上加算器とは異なるテンキー配列を選んでいる。

Notice that the arrangement frequently found in ten-key adding machines (arrangement I-A, Fig. 3) was not the best of the first three arrangements compared. On the other hand, the same geometric configuration with a different numbering scheme (arrangement IV-A) was superior in keying performance when compared in Group IV.

このテンキー配列は、AT&Tの「Touch-Tone」に採用され(cf. H. E. Noweck: The Versatility of Touch-Tone Calling, Bell Laboratories Record, Vol.39, No.9 (September 1961), pp.312-316)、1963年発売の「Western Electric Model 1500」卓上電話機に反映された。その後、電話のテンキーには「⚹」と「#」が追加されたものの、電卓とは異なるテンキー配列を堅持することになるわけである。

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