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■ 判決のインパクト ――― 政府の「情報統制」と「防空法制」を認定
■ 都市からの退去は禁止され、実際に退去は困難だった 一審判決は、膨大な証拠を検討したうえで、次のように認定しました。
■ 疎開を制限し、「身を挺して防火せよ」 ――― 国側の主張を否定 二審判決は、国側の反論を斥けて、次のように認定しています。
■ 政府による「思想の植え付け」も認定 二審判決は、さらに戦時中の政策に切り込み、政府が国民に「思想を植え付けた」と明言しました。こんな判決は珍しいです。
■ 床下に防空壕を作らせる方針 ―――「安全性の低い待避施設」 一審判決は、「逃げるな、火を消せ」という政府指導の一環として、「防空壕」についての政府方針の問題点も指摘しています。
■ 空襲の将来予測は「国民に伝達しない」 ――― 空襲の開始後も、被害実態を知ることはできなかった 一審判決は、空襲に関する情報統制(秘密保護)についても認定しています。
■「焼夷弾は手袋をはめて投げだせ」!?――― 非科学的な指導 さらに二審判決は、政府のトンデモ指導方針を認定し、情報統制によって国民が「危険な状況におかれた」と、はっきり認定しています。とても危険な「安全神話」です。
■ かつての裁判例とは大違い ――― 防空法は国民を危険に追いやった このように、情報統制や防空法制を批判的に認定した大阪空襲訴訟判決。ある意味で当然の判断とも思えます。しかし、かつては防空法制を肯定評価する裁判例があったのです。
■ 退去の禁止 ――― その法的根拠は 防空法が定める「退去禁止と消火義務」。これを具体化したのは通達(通牒)です。防空法と勅令の条文は、内務大臣が「退去を制限できる」と定めるだけでしたが、これに基づく内務大臣通達が、次のように退去禁止の方針を明確に定めていたのです。
■ 空襲被害者の「多大な苦痛や労苦」を認定 ―――「政治解決により救済するべき」というメッセージ 一審判決は、次のように原告ら一人一人の空襲被害者の苦労について、法廷での証言や陳述書面にもとづいて認定したうえで、次のように述べました。
■ 政府のいう「戦争損害受忍論」は否定された ――― 違憲となる「余地がない」から「あり得る」への大転換 かつて最高裁判所は、次のように述べていました。
これはあまりに不当です。要するに、「戦争損害については、どれだけ不合理や不平等があっても、絶対に憲法違反にならない」というのです。そんなことは憲法に書かれていません。この最高裁判決から26年後、大阪空襲訴訟の二審判決は一転して次のように判断しました。
憲法違反となる「余地がない」から「あり得る」へ。大阪空襲訴訟の判決は、最高裁の判断を大きく転換しました。政府の見解は否定されたのです。 ■ なぜ敗訴したか――― 「重大で明白な差別」の一歩手前 このように、戦時中の政策に切り込み、かつての最高裁判例を軌道修正した画期的な大阪高等裁判所判決。ここまできたら、あと一歩、「まったく補償を受けていない空襲被害者と、援護を受けている元軍人との格差は重大であり憲法違反である」と判断してほしい・・・。 しかしこの判決は、「重大で明白な差別とまではいえない」という理由で、原告の請求を棄却しました。そこは残念ですが、この判決には大きな意味があります。「どんなに不平等があっても憲法違反にならない」という政府の主張を全面肯定した旧最高裁判例とは異なり、これ以上、空襲被害者を放置して不平等が拡大したら、次は憲法違反の判断をするという警告を発したに等しいからです。 大阪高裁判決のなかには、次のような一節があります。
問題点を含みながらも、これまでの裁判例と比べると、戦時中の政策に正面から切り込んだといえる大阪空襲訴訟の判決。政府がこれを受け止めて空襲被害者を救済することを、願ってやみません。 ※ 判決が引用している法令の一部を、現代文・仮名遣いに変更しました。 |
当ページ作成 大阪空襲訴訟弁護団 弁護士 大前治 |