次々と新しいアーティストが生まれては消えていくミュージックシーン。テレビの音楽番組やヒットチャートを賑わしているのは「若い世代の音楽」ではあるが、それだけが音楽ではない。むしろ最近、デビュー30周年、40周年を迎えるベテランアーティストたちが元気だ。今でも積極的にライブステージを行ない、その音楽に対する情熱に驚かされることが多い。1977年に世良公則&ツイストでデビューし、原田真二やCharと共に、ロックミュージックをメジャーの場に押し上げた世良公則もその一人。2001年に結成したGUILD9(ギルドナイン)ではハードかつヘヴィなロックンロールを聴かせてくれているが、この8月、待望の初アルバム『WE ARE GUILD9!』をリリースした。これは、音と映像の専門店「WAVE」の創立30周年記念プロジェクトとしてスタートした「ROPPONGI WAVE RECORDS」の第1弾である。デビュー30周年を迎えて、まだまだ突っ走り続ける世良公則に迫ってみよう。

全15曲をたった2日間で完了した驚くべきレコーディング

自身がリーダーを務めるグループGUILD9のニューアルバムをリリースした世良公則

GUILD9はボーカル&ギターを担当する世良公則に加え、ギタリスト&プロデューサーとして活躍する野村義男、ベースは櫻井哲夫(元カシオペア)、キーボードが神本宗幸(元ツイスト)、そしてドラムに横瀬卓哉という、そうそうたるメンバーが集結したもの。確かに実力派ミュージシャンぞろいであり、今まで何度もライブを重ねてきてはいるが、この『WE ARE GUILD9!』はなんと全15曲をたった2日間でレコーディングしたという。

「今回、WAVEさんに、お互い30周年だから面白いことをしましょうとお話をいただいたときに、単純にレコーディングしましたではなくて、ライブとか生ものに対する思いを切り取りたいと思ったんです。そうしたらスタッフが、2日で15曲レコーディングしてくださいって言ってきて(笑)。要するに時間をかければいいわけではないし、上手な演奏をしてみせてもしょうがない。プレイヤーたちにある負荷を与えて、そこでの反発力がエネルギーになるのを見たかった」

そう決めた世良は選曲をしてメンバーに伝えたものの、口頭で打合せをしたくらいで、レコーディングのためのリハーサルは一切なし。スタジオに入ればほとんど一発録りで、テイクは2回まで。楽器のセッティング替えもほとんどなかったというから、まさにライブ感覚。とはいえ、そんなことで動揺するメンバーではなく、聴きごたえあるバンドサウンドに仕上がっているのはさすがとしか言いようがない。

「ボーカルも一緒に歌っていたんだけど、どうしてもドラムの音が被ってしまってバランスが取れない。だからみんなが休憩したり弦を張り替えている間に、歌だけ分けて録りました。みんな疲れてきたなというのを見計らって、じゃあコーヒータイムしてて。俺、歌入れるからって。お前はずっとやってるのかって言われましたけど(笑)」