架空売り上げの計上疑惑

──04年8月末に、宮内さんは熊谷さん、堀江さんと3人で話し合い、「予算が足りない」と言って、ロイヤル信販とキューズ・ネットからの架空売り上げの計上を提案、堀江さんが「やるしかないだろう」と言ったと証言している。

 (言ったことは)ありません。そもそも「やりきる」という言葉は使わない。言うなら「50億死守」と言う。僕はよくニ文字熟語、四文字熟語を使う。とっさに出る言葉は、熟語が多い。

──戦略会議の資料を見ると、20億円ぐらい足りない。50億円にいくと思っていたのか。

 イーバンクだけでも、いくと思っていた。9月にドカンと売り上げがたつことが多かった。多少ショートしても、下方修正しなければいけないほどではない。

──足りない分は、キューズ、ロイヤルから利益を付け替えようと思っていたか。

 思っていません。

バリュークリックジャパン(VCJ、ライブドアマーケティングの前身)の粉飾疑惑

──04年7月の時点で、VCJを買収していたことは知っていたと思うが、VCJの小宮さんは戦略会議に出てきていたのか。

 うーん、覚えていない。

──メディア事業部がVCJに広告を発注していることは知っていたか。

 知っていた。(メディア事業部責任者の)伊地知さんに発注しろという話はしたと思います。

──安く発注しろという話は。

 したかもしれません。

──(業績の件で)小宮さんと(社長の)ジョニーさんが、あなたの席に来たことは。

 ないと思います。あったら絶対覚えていると思う。

──ジョニーさんが一人で堀江さんの席に来たことは。

 なかったと思う。

──四半期、通期ともに黒字にしろと言ったことは。

 新しく来た人に言うことじゃないですね。言うなら伊地知さんに言う。

──あなたの中で、当時の小宮さんの位置付けは。

 当時は社長じゃなかったんじゃないですかね。そのままジョニーが社長をやると思っていた。それを伊地知さんがチェックすると。

──(04年7月7日送信の、堀江被告から伊地知氏へのメール)「若干赤字なので、売り上げつけてあげたら」とあるが。

 「LDから発注している料金が安めになっているんじゃないの?正規料金にしたら」ということだと思う。

──では、なぜ「単価見直せ」などと書かないのか。

 私のメールはいつも1行とか簡潔なので、これで分かるかなと。

──7月12日の戦略会議で、小宮さんや伊地知さんに「直近の四半期が黒字になっていないじゃないか」と強く言ったことはあるか。

 ありえないことだと思うんですよ。(小宮さんは)お客さんだから。LDグループに入って間もないし、一応は年上だから。古くからいる人や年下には強く言えますが。

──その会議で、宮内さんが「ファイナンスから売り上げ付けてあげるから、メディアから利益付けてあげてよ」と言ったことは。

 ありえないことだと思います。

──VCJにからみ、9月13日の戦略会議で小宮さんに「第3四半期通期で黒にしてください」と言った記憶は。

 ないが、言いそうではある。

──あと2週間ばかりで、2000万円近くの売り上げを立てることは可能だと思っていたのか。

 VCJにはアダルト枠があった。また、ポータルサイトはいくらでも枠があった。

──小宮さんに言ってから、岡本さんにも言ったのか。

 小宮さんに言ってから、岡本さんに言うというのは不自然。言うなら岡本さんに言う。

──駄目な時には粉飾してでも“黒”にしてよ、と思っていたか。

 そんなわけないでしょ。(強い調子で)

──ロイヤル・キューズから売り上げを付けてでも、ということはなかったのか。

 そんなことをする人ではないと思っていた。岡本さんのことはスーパー営業マンだと思っていたから、ショックだった。結構、安易なことをやっているなー、みたいな。

──普通の経営者の感覚で答えてもらえればいいが、期末まであと2週間しかない時に「赤字でいい」と言うか。

 赤字でいいと心の中で思っていても、言ってしまったらその場で気が抜けてしまう。

VCJ株式の100分割

──VCJ株式の100分割は、いつから考えていたのか。

 VCJの株を売るようになってから、思っていた。

──(04年11月に堀江被告が岡本被告に香港から送った、100分割の実行を促すメールを示す)

 宮内さんから「100分割を岡本さんにプッシュしてください」と言われていた。

──このメールには、取締役会についても「アイデアありませんか」と書いてある。

 その時は、このことを言わなければいけなかったのかもしれない。宮内さんが取締役会を辞めてしまった直後で、取締役会のことばかり考えていた。3人になってしまったので。1人休んだら取締役会が開けなくなってしまった。

──岡本さんは堀江さんへのメールで「LDの利益とVCJの利益を考えて、腹をくくりましたよ」と書いている。

 岡本さんは「腹をくくる」とよく言う。あの人は、年中腹をくくっている。岡本さんは根拠なく臆病なところがある。香港に行っている時に、こんなメール送ってくるなよ、うっとうしい、と思った。僕にとっては、「取締役会」の方が重要な問題だった。相談できるのは岡本さんぐらいしかいなかった。

マネーライフ

──宮内被告は、04年6月の定例会議で「マネーライフをVLMA2号で買収した」との報告があったと証言している。

 出ていないと思います。

──定例会議で報告すべきことになっているのか。

 なっていないと思います。

──マネーライフをVCJで買うことはいつ知ったか。

 10月のVCJの取締役会。

──グループ内でのM&Aの場合、LDFが(手数料として買収代金の)5%を受け取ることになっていたことは知っていたか。

 決まっていたというより、思い込んでいただけではないか。グループ内のM&Aといっても、大したことはやっていない。身内から高額な金とってんじゃねえよ、と。それで1.5億円と言われたら、しびれるでしょ。

──堀江さんが「どれくらい儲かるの」と言ったことになっているが。

 どういう文脈なんですかね。

──宮内さんは株式交換比率を1:1にすることを、堀江さんに報告したと言っている。

 僕に言ったところで、何を判断しろと。それくらい分かると思うのだか。

──「いくら儲かるの」と言われたので、「4億ぐらい」と答えたことになっているが。

 記憶にない。

──あなたはVCJ株の100分割に賛成だったと言うことだが、株価の急騰狙いか。

 そんなことはない。そもそも流動性を向上させることが目的なので。

──VCJの取締役会で、マネーライフを買うことを賛成したのか。

 最終的には賛成した。

──マネーライフの企業価値をDCF法で算定している。

 細かいことは分からないが、将来を見越して算定することぐらいは知っている。マネーライフは単なる出版社だと思っていたが、「株主優待大図鑑」を出しているみたいで、リクルートモデルをそのまま当てはめられると。顧客は大企業のIRなので利益率は高く、(4億円と算定した企業価値より)もっといくんじゃないかと思った。LDで買収した時より高いかなと思ったが、岡本さんが営業がんばってDCF法での見通しよりかんばってもらえるかな、と。

──価格算定は、日本M&Aマネジメントがやったことになっているが、実際はどこの会社がやったと思っていたか。

 この会社だと思っていた。

──塩野さんが原案を作っていたみたいだが。

 そんなことは思ってもいなかった。

──交換比率については。

 妥当だと思っていた。

──(買収を公表する)リリース内容に関心はあったか。

 ないです。決まったことをリリースするだけなので。

──リリース文は誰が作成したか知っているか。

 知りません。

──リリース文について、指示した事は。

 ないと思います。

──VCJの株価に影響を与えると思っていたか。
 
 思っていない。売り上げ・利益ともにしょぼいから。

──リリース文の最後に「今回の株式交換による当社の当期業績に与える影響は軽微であります」とある。あなたも同じ判断か。

 そうですね。というか、判断すらしていないかもしれない。

──リリース文の2枚目の大株主の欄に「VLMA2号投資事業組合」とある。取締役会でVLMA2号について話し合ったことはあるか。

 ないです。

──もし「マネーライフの本来の企業価値は1億円だが、(LDFへの未払い金など)いろいろ足して4億円にした」とリリースしたら、株価はどうなると思うか。

 うーん、借金がなくなるわけなので、どちらかといえば上げ要因ですね。

つづく

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