おいしさと利便性を追求することで一大ブームを巻き起こしているコンビニコーヒー。今や、ほとんどのコンビニの店頭にはコーヒーマシンが置かれているほど好評だ。

火つけ役はセブン−イレブンの「セブンカフェ」。2013年1月に提供を開始すると、その約9ヵ月後には2億杯を突破。今やコンビニ全体の売り上げを引っ張る存在だ。

「コンビニがいれたてコーヒーに力を入れるのは原価率の低さにあります。コンビニコーヒーの原価率は50%だといわれていますが、単純に100円のうち50円が粗利なのです。コンビニ全体の商品の原価率が約70%ですから、比較しても20%低い。要するにそれだけ儲かるということです」(コンビニ事情に詳しいライター)

また、コーヒーに習慣性がある点も見逃せないという。

「例えば、喫煙者がたばこを買うたびに銘柄を変えないように、コーヒー好きも一度好きなコーヒーを決めると同じものを買う傾向がある。だから、コンビニは自社のコーヒーを買ってもらおうと味と価格で競う。コーヒーを呼び水として、サンドイッチやおにぎりなどの“ついで買い”を期待するわけです」(前出・コンビニ事情に詳しいライター)

ファミリーマートがセブンカフェに対抗し、昨年4月にSサイズ120円を100円に値下げすれば、ローソンも9月にSサイズ100円を新設。すると翌月の10月にはセブン−イレブンが、売り上げ好調にもかかわらず、使用する豆を変更するなどセブンカフェを全面リニューアルした。

では、肝心の味の違いはどうか?

セブン−カフェは「ウォッシュド ハイグレード アラビカ豆」を100%使用。こだわりのダブル焙煎で1杯ごとにペーパードリップを使用し、挽きたていれたての香りとコクが楽しめる。

一方、ローソンはブラジルやコロンビアなどの高品質な豆を、それぞれに適した方法で焙煎してからブレンド。個々の豆の風味を引き立てる。唯一の対面販売だったがセルフ方式も導入した。

マシンにこだわったのはファミリーマート。高い圧力をかけて抽出する、ドイツ製のエスプレッソ抽出式のマシンを使用することで、香りやコクがより引き立ったコーヒーやミルクメニューが楽しめる。

サークルKサンクスは酸味を抑え、苦みとコクを強調したブレンド。1杯ずつコーヒーの抽出を行なう専用カートリッジ「K−Cupパック」を使用し、約30秒で香り高いコーヒーが味わえる。

それぞれに特徴があり、差別化にやっきになっているようだ。コンビニの戦力図すらも塗り替える可能性があるコーヒーの覇権争いから、今後も目が離せない。

(取材/井出尚志[リーゼント])