取材:竹中玲央奈 写真:小沼和希

内山秀一監督



ーまずは、昨季を振り返っていかがでしたか?

去年はだいぶ苦労しました。御存知の通り、下位のほうで競っていたので。1試合2試合の結果にシビアでしたね。落ちるか残るかの中で戦って、結果残留出来たので大きな経験にもなったかなとは思っています。本当に、あと1つ負けていたら降格だった。1部も2部もそうだけど、力の差がなくなっているなと感じましたね。なので1試合1試合が本当に大事になってきていると思います。

ー専修大学が昇格してすぐ優勝しているあたりに、1部と2部で力の差がなくなってきていることを表している気がします。

そうですね。専修はここ3年、4年で力をつけてきていましたし、相手に対策を取らせるような意識を持たせるチームに慣れましたよね。東洋も最近強くなってきているみたいですし。私立大学がどんどん強化に力を注いできているという印象がありますよ。そういう中での競争はなかなか激しいし、厳しい状況がまた増えるのかなと。

ー選手の獲得などは積極的に行なっているのでしょうか。

前任の今川監督がJのユースや高校の試合を観に行って、声をかける形をとっています。今までは高校から選手を取っていたのだけど、最近はJユースからも来てくれるようになって。今年は6人ほど来てくれた。あとは付属校にいるいい選手も、という感じですね。

ー東海大が目指すサッカーとはどういうものでしょうか

パスで崩していけるチームになれれば、というところです。開幕までにどうなれるかはわからないけど、精度を上げていきたいですね。今までは東海大ってどっちかというと大きく展開をするチームだった。でも今はパスで繋いでいくトレーニングを続けています。

ーそういうサッカーに転換したきっかけというのはあるのでしょうか。

12月から、後藤太郎さん(元名古屋、千葉など)という徳山大の前任の監督が来てくれたんですよ。彼は今大学院生なんですけど。Jのチームにもいくつか所属していたんですけど、やめて大学院に来てくれて。それでサッカー部がヘッドコーチとして迎え入れてやっているんです。新しい形ですよね。チームとしての力だけでなく、個人の技術力の向上にも一役買ってくれる方だと思っています。

ー話は少し飛躍しますが、日本サッカーにおける大学サッカーの位置づけはどう捉えているのでしょうか。

基本的には大学それぞれに異なったスタンスを持っているとは思います。ですがサッカー界としては選手としてもそうですけど、サッカーに関わるその他の生き方ですよね、審判だったり指導者だったり。そういった人間を養成していくのが大学サッカーの1つの役割だと思っています。特に東海大のような体育大学には教員や指導者、トレーナーを目指している人が多い。そういう形で日本のスポーツ界、サッカー界に貢献していく役割を持つことが重要。ただ単なる選手の供給源や受け皿にとどまる存在ではないですよね。

ーそういった考えを持っている中で、東海大サッカー部における指導方針とはどういうものでしょうか。

まずは社会に通用する人間ですよね。選手それぞれがアクションを起こしていってチャレンジしていけるような人間や選手になってほしい。でもそれがあまりに自分勝手だと社会では受けられないんですけど。そういう社会でのマナーや常識をわかった上でスポーツを広めて行きたいなと。職業として何をやるかというよりは、生きていく中でスポーツマンシップを発揮して欲しいと思っています。新入生が入ると80人ほどに部員も増えます。試合に出られるのは11人プラスアルファで残りの9割は一生懸命サッカーをやるのだけど全てがうまくいく訳ではない。全員には自分の生きる道を大学時代にしっかりと見つけて欲しいというのはありますよね。

ーやはり、大学で指導をしていて選手の人間的な成長は感じますか?

それは、やっぱり全然違いますね。1年の時は高校生上がりですから。自分のサッカーの形やサッカー観、人付き合いの形は持っているのだけどまだまだ。大学に入ることでそれが広がっていって、4年生になってチームのことをまず考えて、自分が何をしなければいけないかというのがわかるようになる。もちろん1年生のときから分かる子はいるんですけど。だけど、やっぱり成長の過程で色々な誘惑もありますし(笑)サッカーだけというわけにもいかないので。4年間の中で僕らが成長させなければいけない部分ですよ。例えばプロであれば契約を来られると外に出なければいけない。でも大学の場合は大怪我をしたとしても他の形でチームに関わることが出来る。4年間はサッカーに触れ合える、関われる環境があるんですよね。そういう中で僕らが彼らの成長を助けてあげればなと。僕は教員なので大学の学部の中で授業もやっているので、そういう面から言えばサッカーだけやればいいとは全く思わないですし、サッカーが強ければいいとは思っていません。やっぱり人間性の部分は重要ですよね。

ー最後に、今期の目標を教えてください。

関東1部に上がるのが一番の目標です。そのためにトレーニングをしていますので。ただ、個人的には、少し言いづらいのですが(笑) 最後に日本一を取ったのが2000年なので、日本一のチームを目指してやりたいと思います。日本一のチームには日本一の勝率がいて、選手がいて、指導者がいるということの証明になるので。澤登正朗(元清水エスパルス)や磯貝洋光(元ガンバ大阪、浦和)らと後藤さんは同期なんですけど、僕はその頃も見ている。その他、寺田周平(元川崎フロンターレ)、山口素弘(現・横浜FC監督)ら、そのころのOB達にはっぱをかけられつつ応援してもらえるような、輝きを持てるチームになりたいですよね。

小山真司主将(4年・前橋育英)



ー前シーズンを振り返っていかがでしたか?

「去年はいいところも一杯あったんですけど、なんとか残留できたということでした。なのでそれは忘れて。今年になってサッカー自体が変わったサンフレッチェやレッズみたいなサッカーをしようと思っていて。見ていて楽しいサッカーをしようという統一意識を持っています」

ーサッカーの面で変わった点はあるのでしょうか。

(後藤)太郎さんがコーチになって、色々と教えてもらえるようになりました。彼も院生なので、一緒に寮に住んでいて。ビデオを見ながら色々と教えてくれるし、細かいところを教えてくれるのですごく勉強になりますし、サッカーの奥深さをまた知ることが出来るという感じですね。

ー今季の東海における小山主将の役割は。

自分は3-4-2-1の3バックの真ん中です。(広島の)千葉選手の位置ですね。凄い楽しいですよ!DFが3枚になったら一番、あの位置が楽しいと思います。やるのはほぼ初めてですけど、システムや戦術は太郎さんと色々と話して頭のなかに入ってはいるので。それがしっかりとできるかはわからないですけど(笑)

ー大学リーグでこのシステムをとるチームは珍しい気がします。

そうですね、3バックでやっているのは大学リーグの中でもなかなかいないと思います。そういった意味で言うと、今までとは異なった「新しい東海」になろうと。リスクを掛けてでも楽しめるサッカーをしよう、と。そういう感じですね。本当にそこを、魅せるサッカーを求めています。

ー"サッカーを楽しもう"という強い思いが小山選手から伝わってきます。

去年は怪我が多くて、あまり出られなかったんですよね。それで外から見ていて「本当にみんなサッカーを楽しめているのかな?」という思いはありました。その中で前のキャプテンが色々なものを背負ってやっているのを見て、大変そうだなと感じた想い出はあります。自分がキャプテンになったのは、監督から言われてという感じですね。高校時代もやってたんですけど、大学とは違いますね。大学生だと自分達である程度は作って行かなければいけない。なので上の学年で色々と話し合って、いい方向に向けようとしています。

ー主将から見て、今年のチームの注目ポイントはどこでしょうか。

けっこうたくさんあると思いますけど、やっぱり見て欲しいのは湯川と峰(ともに新3年生)のコンビネーションですね。彼らはなかなか凄いですよ。湯川は前橋育英の1個下なんですけど。チームは彼次第っていう部分が正直、あると思います。

ー開幕に向けてのチーム状態はどうでしょう。

みんなが1つになってやろうとしているので、ちょっとづついい方向に向いているという感じです。新体制になってから今のサッカーをし始めたので、まだ全然なところはあります。細かいところがまだまだですよね。守備時のスライドとか、前からのプレスのかけかたとか、試行錯誤をしているところです。さっきにも行った通りこのシステムをやっているところはあまりないと思うので、4-3-3の相手を上手くはがしながら、前に進めていきたいです。

ー最後に、意気込みをお願いします。

チームで言うと、今までサッカーを楽しめたかどうかというところがありました。もちろん結果は大事だけど、内容により重きをおいて充実させたいです。それこそサンフレッチェみたいに選手が試合中に笑ってたり、自分達の思い通りにボールを動かして相手を操るような、そういう部分を求めて行きたいです。やっぱりさっきも言ったんですけど今年は"魅せるサッカー"を目標に、ですね。個人的には高校時代の仲間の慶哉(中美-・流通経済大学4年)とか皆川(-佑介・中央大学4年)に負けないように。あとは、怪我をしないように。2人に関しては今まで一緒にやっていた仲間ですけど、今はいい意味でライバルなので、彼らから刺激を受けながら成長していきたいです。

【writer】
CSParkサッカー班
【プロフィール】
CSParkの大学サッカー取材班です。