ボストンマラソンの1回目の爆発現場で負傷者を助ける人々(4月15日)。

Photograph by John Tlumacki, Boston Globe/Getty Images
 アメリカ、マサチューセッツ州ボストンで15日に開催されたボストンマラソンのゴール付近で2回にわたり爆発が起き、アメリカ全土を震撼させた。これまでに少なくとも3人が死亡、負傷者も多数出ている。 しかし、世界的に見てスポーツイベントはこうした攻撃の標的となってきた長い歴史がある。その多くはテロ行為とみなされた。以下、スポーツイベントを狙った過去のテロ攻撃をいくつか紹介しよう。

◆1972年ミュンヘンオリンピック

 ミュンヘンオリンピック開催中の1972年9月5日、パレスチナ武装組織「黒い九月」のメンバー8人がオリンピック村に侵入し、イスラエル選手団の2人を殺害、9人を人質に取った。

 1日にわたって交渉が行われたが失敗に終わり、犯行グループは人質を連れてエジプトの首都カイロまで脱出することを要求した。旧西ドイツ当局は飛行機を手配することを合意したが、実際には人質の救出作戦が立てられていた。しかし救出作戦の決行中、人質9人全員とドイツ人警察官1人、犯行グループ8名のうち5人が死亡する惨事となった。

◆1996年アトランタオリンピック

 アトランタ夏季オリンピックの開会式から8日目の1996年7月27日午前1時20分頃(現地時間)、アメリカ、ジョージア州アトランタ市内にある五輪100周年記念公園(Centennial Olympic Park)の屋外コンサート会場で爆発があり、2人が死亡、100人以上が負傷した。

 犯人のエリック・ルドルフ(Eric Rudolph)は元アメリカ陸軍兵士で爆弾に詳しく、公園の映像スクリーンの前に爆弾を仕掛けたことを認めている。

 ルドルフは2003年に逮捕され、現在コロラド州の刑務所で仮釈放なしの終身刑で服役している。

◆1996年マンチェスター爆発事件

 1996年6月15日午前、イギリスのマンチェスターの中心街でトラックに仕掛けられた約1500キロの爆薬が爆発し、およそ200人が負傷した。1996年はUEFA欧州選手権がイングランドで開催された年であり、事件の翌日にはマンチェスター市内のスタジアムでドイツ対ロシアの試合を控えていた。

 報道によると、アイルランド共和軍(IRA)の犯行とみられている。

◆2002年マドリード・サッカースタジアム爆発事件

 2002年5月1日、スペイン、マドリード市内のサッカースタジアム「サンティアゴ・ベルナベウ」付近で、車に仕掛けられた爆弾が爆発した。レアル・マドリード対バルセロナの欧州チャンピオンズリーグ準決勝の数時間前の出来事だった。1回目の爆発から約30分後には、1.6キロ先でもう1台の車が爆発した。

 同国北部のバスク地方の分離独立を目指す民族組織「バスク祖国と自由」(ETA)の犯行とみられ、17人が負傷した。CNNの報道によると、試合はおよそ7万5000人の観客が見守る中、無事行われたという。

◆2008年スリランカ、マラソン

「New York Times」紙によると、2008年4月6日、スリランカの中心都市コロンボ郊外のウェリベリヤで開催されたマラソン大会のスタート時に自爆テロがあり、ジェヤラージ・フェルナンドプレ高速道路・道路開発相を含む少なくとも15人が死亡、約100人が負傷した。

 反政府勢力「タミル・イーラム解放のトラ」(LTTE)の犯行とみられている。

◆2009年スリランカ・クリケットチーム襲撃事件

 2009年3月3日、パキスタン北部のラホールにあるカダフィ・スタジアム付近の環状交差点で、スタジアムに向かっていたスリランカのクリケット代表チームを乗せたバスと、審判団を乗せた後続車が、12人からなる武装集団の襲撃を受けた。



 当初の報道によると、警察官6人と市民2人の計8人が死亡し、少なくとも選手6人が負傷した。AP通信によると、武装集団は短機関銃、携行式ロケット弾、拳銃、手榴弾、プラスチック爆弾を携帯していたという。一部の襲撃犯はオートリクシャーと呼ばれる三輪バイクで逃走した。

 スリランカ代表チームは、パキスタンでの開催試合への参加を決意した数少ない各国代表チームの1つだった。「New York Times」紙によると、インド、オーストラリア、イギリスは安全を懸念し、パキスタンへの遠征を拒否していたという。

◆2010年ワールドカップ観戦者を狙ったウガンダ爆発事件

 2010年7月11日午後10時半頃(現地時間)、ウガンダの首都カンパラにある飲食店とラグビークラブで少なくとも3回の爆発が起きた。どちらもサッカーW杯南アフリカ大会決勝のオランダ対スペイン戦を観戦する客で混み合っていた。

「New York Times」紙によると、死者は50人以上に及ぶという。「The Washington Post」紙の報道では、ソマリアの反政府勢力シェバブが犯行声明を出しており、国際テロ組織アルカイダとの関連が指摘されている。

Photograph by John Tlumacki, Boston Globe/Getty Images

文=Jane J. Lee