前回(「毎日が帯状疱疹!?チョロい疾患と侮るなかれ」)に続いて、今回も帯状疱疹について。何とか帯状疱疹らしいと診断したら、つぎは治療だ。
まず、抗ウイルス薬の投与となる。バラシクロビル(商品名バルトレックス他)、ファムシクロビル(ファムビル)の2種に加え、もう少ししたら 「飴舐めビール」 じゃなかったアメナメビル(アメナリーフ)が発売になるらしい。
この新薬。腎機能、すなわちクレアチニンクリアランスのことあまり考えなくてよいらしい。おまけに服用は1日1回。なんと便利なお薬でしょう(「患者急増! 帯状疱疹攻略の3つのポイント」、「投与量調節の必要がない帯状疱疹治療薬」)。
バラシクロビルやファムシクロビルの高齢者への投与は厳重注意である。腎機能障害患者への投与と同様に高齢者もクレアチニンクリアランスを考慮しないと大変なことになる。実際の外来では通常量の半分、ないしは3分の1程度の総投与量で、投与回数も1日に1~2回程度にするとよい。減量しないで投与した場合、水分摂取が不十分などの理由で尿細管にトラブルが生じ、急性腎不全で気絶して救急外来に担ぎ込まれることがよくあるらしい(そんな心配も遠い昔になる日が来るとは、感慨深い)。
とはいえ、アメナメビルが登場したとしても、帯状疱疹の治療は抗ウイルス薬だけでは終わらない。
問題は、神経痛である。昔は帯状疱疹後神経痛という言葉が有名だった。しかし、臨床現場では、皮疹とともに激しい疼痛を訴える患者が多く、「後」の神経痛という概念がだいぶ怪しいと考えられるようになった。今では帯状疱疹にからむ痛みを全てひっくるめて、帯状疱疹関連痛と呼ぶことになっている。もちろん「後」の痛みが強く、後神経痛と診断できる患者も多いので、誤解のないように。
この神経痛は実に不思議なのだ。外来をやってみると分かる。読者にも体験してもらおう。
例えば、次の症例のうち、神経痛が「強そうなもの」はどれだろうか? 神経痛が強いと思われる順に番号を付けてみてほしい。
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著者プロフィール
中村健一(ドクターケンクリニック院長)●なかむら けんいち氏。信州大医学部卒。宇治徳洲会病院、北里大皮膚科、聖路加国際病院皮膚科を経て、1993年におゆみの皮フ科医院を開業。2018年に移転、医院名を変更。著書に『診療所で診る皮膚疾患』『診療所で診る子どもの皮膚疾患』(いずれも日本医事新報社)など。
連載の紹介
【臨床講座】ドキュメント皮膚科外来
患者はヒタイに病名を書いて来院するわけではない。検査結果を待ってじっくり診断する余裕もない。立ち合い勝負の無慈悲な診療科—それが皮膚科である。教科書に載っていない、皮膚科診療における思考過程を再現してみよう。
本連載が書籍になりました!
『一般内科医が知っておきたい皮膚科の話』
『一般内科医が知っておきたい皮膚科の話』
皮膚疾患を診たい、診ざるを得ない非専門医向けに、身近な皮膚疾患について解説する書籍です。患者数が多く、かつ診断に迷うことが多いものの、皮膚科の教科書にはあまり記載がない疾患を中心に、豊富な症例写真を掲載しつつ、診断に至るまでの皮膚科専門医の思考経路を共有します。さらに、患者満足度を挙げるために押さえておきたいコツも紹介します。
この連載のバックナンバー
2022/05/10
2021/10/26
2021/04/22
2020/09/17
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