日経メディカルのロゴ画像

大腸癌診断後にアスピリンを定期服用すると死亡率が半減する可能性

米マサチューセッツ総合病院のAndrew T.Chan氏

 以前から、シクロオキシゲナーゼ-2COX-2)の活性を阻害する作用を持つアスピリンには、大腸癌予防効果があるのではないかと期待されてきた。このほど、大腸癌と診断された後にアスピリンを定期的に服用すると、死亡率の大幅な低下がみられることが分かった。米シカゴで5月30日から6月4日まで開催されている米国消化器学会(第40回米国消化器病週間DDW2009)のプレナリーセッションで、米マサチューセッツ総合病院のAndrew T.Chan氏が発表した。

 Chan氏らは、Nurses' Health Study(登録者12万1700人)とHealth Professionals Follow-up Study(登録者5万1539人)の2つの研究への参加登録者から、ステージ1~3の大腸癌患者1279人を登録、2008年まで平均11.8年間追跡した。この間に480人が死亡し、うち222人が大腸癌による死亡だった。

 大腸癌と診断される前にアスピリンを定期的に服用していた場合、大腸癌による死亡率についても、全死亡率についても、服用していない場合と比べて特に差はみられなかった。一方、大腸癌と診断された後でアスピリンを定期的に服用すると、服用していない場合に比べ、大腸癌による死亡率が29%も有意に低下した(95%CI:0.53-0.95、p=0.02)。全死亡率についても有意に改善した(p=0.03)。

 特に、大腸癌と診断される前にアスピリンを服用していなかった患者719人については、診断後にアスピリンを服用しなかった536人に比べ、診断後にアスピリンを服用し始めた183人では大腸癌による死亡率が47%低下(95%CI:0.33-0.86)と、ほぼ半減した。さらに、免疫組織学的評価が可能だった459人について、COX-2の過剰発現の有無と大腸癌の関係を調べた。その結果、COX-2が過剰発現していた患者314人では、アスピリンを定期的に服用していた132人で、服用しなかった182人に比べ、大腸癌による死亡率が61%と大幅に低下した(95%CI:0.20-0.76)。

 Chan氏は、「COX-2が過剰発現している大腸癌患者では、定期的なアスピリン服用による予後改善効果は高い可能性がある。ただ、この治療に関しては限られたデータしかなく、より大規模な試験による検証が望まれる」と結んだ。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ