焦点:訪日外国人、東南アジア急増も韓国は伸び悩み

焦点:訪日外国人、東南アジア急増も韓国は伸び悩み
10月23日、訪日外国人数は政府目標の年間1000万人達成が射程に入ってきたが、外国人観光客の4分の1を占める韓国人は汚染水問題による風評被害で伸び率が急低下している。写真は2010年1月撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 23日 ロイター] - 9月の訪日外国人が前年同月比31・7%増の86万7000人(推計値)となり、1─9月累計で773万人と政府目標の年間1000万人達成が射程に入ってきた。
安倍晋三政権は経済政策の一環として観光を重視し、タイなど東南アジアからの観光客の査証(ビザ)発行要件を7月から緩和。その成果が早くも出た格好だ。だが、外国人観光客の4分の1を占める韓国人は、東京電力<9501.T>の福島第1原子力発電所の汚染水問題による風評被害で伸び率が急低下しており、政府関係者の懸念材料となっている。
<タイは前年比56.1%増>
日本政府観光局によると、9月の国別訪日外国人の増減率は、タイが前年比56.1%増、ベトナムが同31.9%増、マレーシアが同23.9%増、フィリピンが同17.7%増、インドネシアが同8.8%増と東南アジア諸国からの訪問増が目立つ。
この背景には、日本政府が今年7月から始めた東南アジア5カ国向け観光ビザ発給要件の緩和がある。具体的には、タイとマレーシアはビザ取得を免除。ベトナムとフィリピン、インドネシアは、期限内であれば何度でも訪日できる数次ビザを発給できるようにした。
政府は訪日客数を2013年に前年比2割増の1000万人にする目標を掲げており、今回のビザ発給要件の緩和は、その目標達成のための手段の1つ。9月のデータをみると、その効果が出ているのが歴然だ。
<観光政策は経済政策の一環>
安倍政権にとって外国人観光客の誘致拡大は、円安メリットを活用し日本の魅力を海外に発信するという重要な経済政策の柱。
ビザ要件緩和については、菅義偉官房長官が今年8月、東南アジア5カ国に加え、ラオス、カンボジア、ミャンマーからの旅行客の観光ビザを対象に、年内をめどに要件緩和する意向をに示している。中国、ロシア、インドに対しても「要件緩和の是非を今後議論していく」(政府関係者)方針だ。
また、家電などの耐久消費財に限定されていた免税品の対象を、菓子や衣服など外国人に人気の高い消耗品にも拡充する方針で、早ければ2014年度に実現する方向で検討している。
<銀座で存在感示すタイの富裕層>
東南アジアからの観光客増加は、現実に日本国内での商品の売れ行きに大きな影響を与え出している。日本の代表的なショッピング・スポットである東京・銀座でも、中国人観光客に代わりタイ人の富裕層の姿が目に付くようになってきた。
三越伊勢丹ホールディングス<3099.T>によると「10月1─20日のタイ人向け免税売り上げは、前年比倍増。以前はラグジュアリーや化粧品が多かったが、今は日本の雑貨などが人気」という。
<韓国からの流入ペース鈍化、目標達成のネックになる懸念>
年内1000万人の目標を達成するには、毎月前年比で2割の増加が必要。これまでのところ目標達成は射程内にあるようにみえるが、観光庁は慎重だ。
最大の訪日国である韓国からの客数の伸びが低下傾向にあるからだ。6月は前年比39.0%増だったが、7月は同28.6%増、8月は6.9%増、9月12.9%増となっている。「汚染水問題の深刻化が、韓国では盛んに報じられており影響が出ている」と観光庁は分析する。
韓国からの訪日客は訪日外国人の4分の1を占めるため、伸び率が低下を続けると、年間1000万人目標は未達に終わる可能性もある。

ロイターニュース 竹本 能文、清水 律子 編集;田巻 一彦

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