影響広がる米「ピンクスライム」肉問題、過剰反応の側面も

影響広がる米「ピンクスライム」肉問題、過剰反応の側面も
4月4日、通称「ピンクスライム」とも呼ばれるアンモニア水で防腐処理された加工肉をめぐり、米国では先月以降、消費者の間で安全性に対するパニック的な懸念が急速に広がっている。写真はカリフォルニア州リバーサイドの食肉加工工場。3月撮影(2012年 ロイター/Alex Gallardo)
[ニューヨーク 4日 ロイター] 通称「ピンクスライム」とも呼ばれるアンモニア水で防腐処理された加工肉をめぐり、米国では先月以降、消費者の間で安全性に対するパニック的な懸念が急速に広がっている。
ただ、一般的には良く知られていないかもしれないが、米国では食品へのアンモニア添加は約40年前に当局が認可しており、実際にチーズを含む多くの食品に使われている。先端技術を使った食品製造の現場では、専門家の手によって少量のアンモニアで食品を加工するのは珍しいことではない。
ジョージア大学食品安全センターのマイケル・ドイル所長は「食品原材料に対する消費者の懸念には最近大きな変化が見られる。(ピンクスライム問題は)その一例に過ぎない」と述べた。
牛ひき肉に混ぜて使われる「ピンクスライム」は、牛の塊肉に比べて細菌汚染が疑われる余分な肉片を水酸化アンモニウム(アンモニア水)で防腐処理して作られる。
米農務省(USDA)や専門家は安全性に問題はないとの見解を示しているが、米ファストフード大手のマクドナルドに続き、スーパーマーケット・チェーン第2位のセーフウェイと同3位スーパーバリューも取り扱いを中止するなど波紋が広がっている。
また、同加工肉を製造する米ビーフプロダクツ・インク(BPI)が先月、3工場で操業を一時停止すると発表。今月に入ってからは米食肉加工AFAフーズが、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。
専門家の多くは、「ピンクスライム」という気味の悪い呼び方が消費者の不安を増大させていると指摘。食品安全関連の訴訟を多く手掛ける法律家ビル・マーラー氏は「これは健康問題ではない。『このせいで気持ち悪くなった』という問題だ」と述べた。
ただ、「ピンクスライム」やそこに使われるアンモニアは有害でないにしても、食品添加物に対する消費者の懸念はますます広がると指摘する声もある。
米食品医薬品局(FDA)は、水酸化アンモニウムを1974年に安全食品に認定しているが、商品の原材料としての表示は義務付けられていないため、これまでは消費者の目には付きにくかった。
公衆衛生問題を手掛ける法律家で、食の安全を監視するコンサルティング会社イート・ドリンク・ポリティクスの代表を務めるミシェル・サイモン氏は「食料供給システムには、消費者が知らないあらゆる種類の化学添加物でいっぱいだ」と語っている。
米食品大手クラフト・フーズも、製品の一部に非常に少量のアンモニウム化合物を使用している。どの製品に使っているか具体的には明らかにしていないが、同社広報担当は「原材料の名前はしばしば、実体以上に複雑に聞こえる」と指摘。窒素と水素から生成されるアンモニアは自然界にも存在し、牛乳など一部食品にも含まれており、チーズ製造には酸を抑える目的で少量の水酸化アンモニウムが添加されるとしている。

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