イスラエルのオルメルト首相は11日、記者のインタビューに答えた際、イスラエルを核兵器保有国に含める発言を行いました。これは、この半世紀、イスラエルの首相が初めて核兵器の保有を公に示唆するものです。このニュースが伝えられると、イスラエル国内では大きな論議を呼び、各大手メディアはいずれも、トップニュースとして首相のこの発言について報道しています。さらに、一部の野党指導者はオルメルト首相の辞任を要求しています。オルメルト首相は再び政治的波紋の渦中に陥っています。
このこの論争は、ドイツの衛星テレビ「SAT1」が放送した、オルメルト首相のインタビューから始まりました。イラン核問題に関して問われた際、オルメルト首相は英語で、「イスラエルは、他国を脅かしたりしない。しかし、イランはイスラエルを地図上から消滅させると公言している。そのイランが核兵器を保有しようとしていて、フランス、アメリカ、ロシア、イスラエルと同じレベルで話し合えるはずがない」と述べました。
このインタビューの放送後、オルメルト首相の補佐官たちは相次いで、その発言の趣旨を訂正しています。イスラエル首相府は声明を発表し、「オルメルト首相の発言は断片的にとらえられた。メディアは首相の意思を曲解している」としました。12日、オルメルト首相自身もドイツのメルケル首相との合同記者会見で、「イスラエルは、最初に中東に核兵器を導入することはしない」と3度述べて、強調しました。また、「インタビュー中の発言はイスラエルの核問題における一貫した政策に反していない」と述べました。
しかし、メディアはいずれも、オルメルト首相の発言はイスラエルの核兵器保有を示唆するもので、イスラエルが50年近く維持した「あいまい」戦略を変更したと見ています。長年、イスラエルは核兵器保有を否定も肯定もしませんでした。その意図は敵対国を威嚇すると同時に、地域の軍拡競争を防止することにあります。アメリカなどの西側諸国もイスラエルのこの政策を黙認しており、イスラエルが沈黙を保ちさえすれば、これらの国は核問題においてイスラエルに制裁を加えるなどということはない。しかし、イスラエルが核兵器を保有しているのは公然の秘密となっていました。ある専門家によりますと、1960年代から現在までに、イスラエルはすでに、80個ないし200個の核弾頭を製造しました。オルメルト首相の発言の前、アメリカのゲーツ次期国防長官も議会の上院で証言し、この情報をもらしました。ゲーツ次期国防長官はイランの核兵器開発の動機を説明した際、「イランは核兵器保有国に囲まれている。その中には西側のイスラエルも含まれている」と述べました。
オルメルト首相の発言はイスラエル国内での批判を招きました。一部の野党は首相の辞任をも要求しています。野党リクードのスタイニッツ議員は、「オルメルト首相は国防上の問題で何度も口を滑らした。敏感な問題で注意が効かない首相は引責辞任すべきだ」と述べました。
また、アラブ諸国もオルメルト首相の発言に反応を示し、アメリカと国際社会に対し、イスラエルを制裁するよう要求しています。
今のところ、オルメルト首相の発言はイスラエルと彼自身にどのような結果をもたらすか分りませんが、イスラエルの新聞「ハーレツ」は、「オルメルト首相の発言は少なくとも、イスラエルのメディアに大いに役立った。我々は今後、イスラエルの核能力について言及する場合、軍当局の審査に配慮して『海外ニュース』を引用する必要がなくなったから」としています。
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