マイクロソフトは2008年7月25日,外来語カタカナ用語の表記ルールを変更し,末尾が「-er,-or,-ar」などで終わる英単語のカタカナ表記における末尾の長音(ー)を表記すると発表した。今後出荷する製品やドキュメントで新表記ルールを適用する。第一号は8月中にリリースする「Internet Explorer 8 Beta 2」となる。

 マイクロソフトではこれまで,外来語カタカナ用語の表記ルールに関して,「JIS Z 8301(規格票の様式及び作成方法)」に基づく,自然科学や工学,学術論文の分野で主に利用されている「2音の用語は長音符号を付け,3音以上の用語の場合は長音符号を省く」というルールを採用していた。例えば「Computer」は「コンピュータ」と表記される。

 今後は,国語審議会(当時)の報告を受けて告示された「1991年6月28日の内閣告示第二号」に基づいて,「英語由来のカタカナ用語において,言語の末尾が-er,-or,-arなどで終わる場合に長音表記を付けることを推奨する」というルールを採用する。前述のComputerの場合,「コンピューター」となる。

 外来語カタカナ用語の表記ルールに関しては,自然科学や工学,学術論文の分野で「長音符号を省く」というルールが採用されているのに対して,一般の新聞や雑誌,テレビ番組などでは「長音符号を付ける」という内閣告示に基づくルールが採用されており,一般社会でも2つの表記ルールが混在しているのが現状である。

 2005年には,技術マニュアルなどの表記を検討する民間団体で,専門家や研究者,メーカーなどによって組織される「テクニカルコミュニケーター協会(TC協会)」が,内閣告示に基づく表記ルールのガイドライン(原則として長音を表記する)を公開。国内メーカーでも既に,富士ゼロックスやリコーなどが,長音符号を表記するルールを採用している。マイクロソフトでも2003年から表記ルールの統一を検討しており,今回,一般に採用されている長音を表記するルールに改めた。

 今回の表記ルールの変更によって,製品のユーザー・インターフェースや製品マニュアルなどにおいて,300を超える用語の表記が変更されるという。もっとも,新しい表記ルールでも「慣例に基づいて長音無しのまま変更しない」とする単語もあり(一般的な用語では,アウトドアやインドア,シニア,ジュニア,スリッパ,ドア,ボランティアなど),マイクロソフトが使用する技術用語でも,一部に長音無し表記が残る。

 長音表記無しが残る技術用語とは,アクセラレータ,エンジニア,コンパイラ,スケジューラ,センチメートル,トランジスタ,バリア,フォーマッタ,プレミア,プログラマ,プロセッサ,ミリメートル,メートル,ラジエータ,レジスタなど。これら例外の一覧は「マイクロソフト日本語スタイルガイド」で参照できる。

 なおマイクロソフトでは従来も,ゲーム機「Xbox」「Xbox 360」のような消費者向け製品に関しては,「コントローラー」「ドライバー」といった具合に,長音を表記していた。今回の表記ルールの変更によって,Windowsとゲーム機とで,表記が統一されることになる。

 表記ルールの変更によって,システム上の混乱が起きる恐れは小さいが,マイクロソフトでは「ユーザー・インターフェースの表記をトリガーに動作するプログラムにおいては,影響が出る恐れがある」と注意を呼びかけている。