2001 年 62 巻 10 号 p. 2502-2505
門脈塞栓,十二指腸穿通にて進行胆嚢癌との鑑別が困難だった黄色肉芽腫性胆嚢炎を経験した.症例は70歳男性,持続的な心窩部痛,嘔吐にて来院した.腹部CT等にて胆嚢壁肥厚,門脈右枝の塞栓を認め,進行胆嚢癌あるいは慢性胆嚢炎に胆管炎を生じたと考えられた.その後の上部消化管内視鏡,超音波内視鏡,腹部血管造影等にて明らかな悪性所見は認められなかった.開腹所見は,黄色肉芽腫性胆嚢炎が最も考えられたが,胆嚢粘膜の術中迅速病理診断にて一部胆嚢癌が認められ,範囲の同定と深達度診断ができず幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術中Doppler echoにて門脈塞栓内には血流を認めず,門脈内血栓除去術を施行した.病理所見では,病変の主体は黄色肉芽腫性胆嚢炎で,門脈塞栓に腫瘍細胞を認めなかった.炎症による門脈塞栓と腫瘍塞栓との鑑別にはcolor Doppler imagingやpower Doppler imagingでの塞栓内の血流測定が有用とされている.