日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脊髄アテローム塞栓症の病理学的研究
汪 寅橋詰 良夫稲垣 俊明
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1996 年 33 巻 12 号 p. 935-939

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抄録

高齢者における脊髄血管障害の病態を明らかにするため, 病理解剖で得られた604例の脊髄について, アテローム塞栓症の病理学的検討を行った. 組織学的にアテローム塞栓症を認めたのは604例中7例 (1.2%) であり, その平均年齢は76歳で, 基礎疾患として高血圧, 大動脈硬化症, 腎不全, 心筋梗塞, 糖尿病を示す患者の頻度が高かった. アテローム塞栓症は他臓器の, 特に腎, 脾, 膵, 大腸に高頻度に認められた. アテローム塞栓による閉塞した血管は, 特に腰仙髄のクモ膜下腔の小動脈に頻度が高かった. 脊髄の梗塞は2例に認められ, 1例は下位胸髄の側索に小梗塞巣を認めた. 他の1例は頸髄と胸髄の側索に小梗塞巣を認めた. アテローム塞栓による脊髄梗塞の頻度は低く, その原因は, 脊髄血管系の豊富な側副血行によるものと考えられる. 頻度は低いが高齢者の脊髄血管障害の一つの原因として, 大動脈硬化に基づくアテローム塞栓症を考慮する必要があることを指摘した.

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