日本臨床免疫学会会誌
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W7-3  乾癬の病態と生物学的製剤の治療効果
青木 類佐野 信也岡本 崇原田 和俊川村 龍吉島田 眞路
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2013 年 36 巻 5 号 p. 353

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抄録

 乾癬は難治性の慢性炎症性皮膚疾患であり,紅斑,痒み,関節痛などの症状により患者のQOLを著しく低下させる.乾癬の病態論は他の自己免疫性疾患と同様に時代とともに変遷してきたが,妥当な動物モデルが存在しないため,この病態論の変遷は基礎研究よりも臨床的な治療効果によってもたらされてきたといっても過言ではない.著明な表皮肥厚を特徴とする乾癬は,古くから表皮細胞の異常に起因すると考えられてきたが,シクロスポリンの有効性が示されたことでT細胞へ焦点が当てられ,Th1説(アトピー性皮膚炎=Th2に対して)が提唱された.さらに近年の研究により,IL-12よりもTh17細胞の増殖維持に必要なIL-23を産生するTNFα and iNOS-producing dendritic cell (Tip-DC)が乾癬の発症に深く関与することが明らかとなり,最近開発されたより特異的な生物学的製剤:抗IL-12/23 p40抗体や現在治験中の抗IL-23 p19抗体,抗IL-17抗体,抗IL-17R抗体の優れた有効性から,Th1説は完全にIL-23/Th17 axis概念へとシフトした.Th17の重要性は同細胞が産生するIL-22が表皮肥厚促進作用を有することからも支持されている.一方,乾癬においてTNFαは様々な細胞から産生され,Tip-DCの活性化維持にTNFαが重要であることが示されており,抗TNFα抗体は劇的な効果を上げている.生物学的製剤の治療効果から類推される乾癬の免疫学的病態について概説する.

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© 2013 日本臨床免疫学会
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