太陽黒点と地震の関係

毎日新聞に、こんな記事が掲載された。
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110926k0000m040147000c.html
太陽活動と地震の関連を示唆する統計的研究である。
太陽フレアについては以前このダイアリーでも取り上げたことがあるが、その時の結論としては「特に関係が見られない」であった。しかし九州大学の宙空環境研究センターによれば、黒点の活動状況とも太陽フレアとも、地震は関係するという。
実に興味深い、というか第一印象は「眉唾もの」であった。だって(素人の粗い検証とはいえ)はっきり無関係を示唆する情報が既にある上に、電磁気的な影響である太陽風が地殻に影響を与える理由がちょっと思い当たらない。
しかし、既にこの話は「地震の前兆現象」「地震予知」方面などでかなり噂になっているようだ。これまでも度々「地震の前兆ではないか」とされつつ、その度に棄却されてきた太陽活動が俄に前兆としての可能性を持ったんだから、当然ではある。


で、これについて検証しておられる記事を発見した。mixi日記なので許可を得て全文転載する。


太陽の黒点 巨大地震と関係か
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1754517&media_id=2
> 太陽の黒点数が少ない時期ほど巨大地震の発生頻度が高いことが、湯元清文・九州大宙空環境研究センター長(宇宙地球電磁気学)のチームの分析で分かった。東日本大震災黒点数が少ない時期に起きた。太陽の活動が地球内部に影響を及ぼす可能性を示す成果として注目される。11月3日から神戸市で開かれる地球電磁気・地球惑星圏学会で発表する。

これはひどい研究費詐欺
 要点は
「1963〜2000年の太陽の黒点数の最小期(幅2年)に、
 M8.0〜9.9では、28回発生した地震の79%が集中していた。」

というもの。
太陽黒点と巨大地震が連動するなんて信じられないので、ちゃっちゃとネットで「黒点の数」と「地震の数」のデータを拾ってグラフを作ってみた。

確かに、1963年〜2000年の範囲では、黒点の少ない時に巨大地震が起きている。
でも切りよく1900年まで遡ったグラフを作ってみると、まったくのデマ。

 1900年代前半の巨大地震は「コンスタント」に発生している。
 そして、2000年以降に発生している大地震も、黒点の最小期を外している。
 これ以上ないくらい、絶妙に都合のいいデータ範囲で、計算している。

 九州大宙空環境研究センターって、税金使っているの?
こんな1時間程度で暴露資料が作れるような論文でノルマを稼ぐのは勘弁してほしい。科学者としての良心が欠如している。

つまり、この研究は何故か「直近のデータではなく1963〜2000年と謎の区切り方をしたデータを使って誤った統計を出し」「科学の常識とはかけ離れた結論を、より広い範囲のデータを取り直すなどの自己検証もなしに」発表した、ということになる。1963年以前には太陽活動と地震に一致は見られないし、2001年以降も同様だ。明らかに「一見すると関係があるように見える」期間のみを切り出している。
手法としては典型的な統計詐欺で、トンデモ科学にはよく見られる手口なのだが、何故それを国立大学の研究センター長ともあろう人がやってしまったのか、そこが理解できない。