『十二夜』主演、音月桂インタビュー

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『十二夜』、いよいよ開幕が近づいてきました!
げきぴあではシェイクスピアのロマンチックで美しいこの喜劇の魅力を多角的に追ってきていますが、本日は主人公の双子の兄妹、ヴァイオラとセバスチャンに扮する音月桂さんのインタビューをお届けします。


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――稽古も佳境ですね。何度か稽古場を拝見させて頂いていますが、稽古場自体、素敵な空間でした。

「そうなんです、空間が広い稽古場で、物語の世界をイメージしやすいんです。陽射しも入って、外の寒さを忘れて心が温まる、喜劇にぴったりな感覚で稽古が進んでいて、心地がいいです」


――音月さんはずっと宝塚で活躍されていましたが、退団後は映像がメインで舞台出演は2作目ですね。

「昨年『ブラック メリーポピンズ』に出演して、今回は2回目の舞台出演です。ずっと舞台で育ってきたので、久しぶりに舞台に戻ってきて、その楽しさをまた噛みしめています」


――シェイクスピアというと、どうしても"古典"のイメージがあります。退団2作目で、よくこの作品へのご出演を決意されたなと思うのですが...。

「シェイクスピア、しかもジョン・ケアードが演出する作品に出演するというのはなかなか経験できることではないと思いましたし、私はもともとひとつの役を没頭して作っていく作業が好きなんですね。ですので、ふたつの役を演じてくださいとお話を頂いて、それが2倍になり、しかも男装もしますので2.5倍? これはやりがいがあるし、充実感が得られるお仕事なんじゃないかなと思ったんです。私も最初は"シェイクスピア"、"十二夜"という響きだけで堅いんじゃないかな、難しい作品なんじゃないかなと思ったんですよ。でも実際稽古がはじまると、そういう不安は全然なくなりました。あっという間にこの世界にどっぷりはまって、今すごく楽しいです。ジョンが生きた情報をどんどん提供してくれるのも楽しくて、シェイクスピアをもっと早く知っておけばよかった! ...って思うくらいです。もし彼が生きていたら、いいお友だちになれたんじゃないかな...というのはあつかましいですね」
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――今のお話にありましたが、やはり今回見どころは、音月さんが双子の兄妹のふた役を演じられるというところ。稽古場で拝見したところ、鮮やかに演じ分けていらっしゃるように思いました。

「実は自分としては、実感がつかめていないんですよ。男の子と女の子をどう演じ分ければいいのかと、頭で考えてしまっている部分が多くて。ジョンには、自分だけで頑張るのではなく、もっとセリフの素晴らしさや、セットや衣裳、共演者の方に助けてもらうことも大切だよと言われました。ですので、ジョンの言っていることを信じてやっていくうちに、おのずとふた役に分かれているという感じで、あんまり自覚として「きっちり変わってます!」という感覚ではないんです」


――ではヴァイオラ(妹)が男装しているシザーリオ、セバスチャン(兄)の演じ分けも、意識してはいない?

「多少は自分の中で、仕草や声色のスイッチを切り替えるようにはしているのですが、そこまではっきり切り替えてはいないです。柔軟にやりたいと思っています。稽古の最初の方にジョンに言われたのですが、セバスチャンにもどこか女性的な繊細な部分があるし、ヴァイオラにも女性だけどしっかりとした逞しい、どこか男性的でさばさばした部分がある。だからこそセバスチャンを助けたアントーニオ(山口馬木也)が友情を超えた何かを彼に感じるのだろうし、ヴァイオラの方も強い芯があるからこそ男装ということを決意する。そういう意味では、表面上をどう作るかというより、役として内面を作っていれば、出来てくる部分はいっぱいあるよ、と。それを聞いたときに肩の荷が下りた気分でした。ですので今は逆に、わざとらしく変えないようにしています」


――ちなみに今、男の子、女の子とおっしゃったんですが、彼らは何歳くらいなんですか?

「特にきっちりとは決まっていないのですが、ジョンとも話したところ、ティーンではあるだろうと。まわりのキャラクターの年齢設定との関係性で変わってくるとは思うんですが、私の中では17・18歳くらいの気持ちでやっています。でも日本人に比べてヨーロッパの方はだいぶ大人っぽいですし、時代もあると思いますので、今の日本人の実年齢では考えないように、とらわれすぎないようにしています」


――その、ジョン・ケアードさんですが、どんな方ですか?

「なんか...シェイクスピアの生き写しなんじゃないかと思いますね(笑)。シェイクスピアがもし生きていたらこういうことを言ってくださるんじゃないかという言葉をくださいます。ジョンの照らす道についていったら間違いがないと思わせてくれます。でも、「これはこうじゃなきゃ」と押し付ける感じはまったくないんですよ。あつかましいのですが、教える立場と受ける立場という感覚ではなく、一緒にひとつの作品を創る仲間、という感覚で、だからこそみんなが信じてついていっているのがわかります」


――ジョンさんの言葉へのこだわりもすごいですよね。彼にとっては日本語は異国の言葉なのにそこまでこだわるか、って思いました。実は日本語わかるんじゃないか、ってくらいで。
(※その一例は「稽古場レポートPart1」でどうぞ)

「私も、ジョンは日本語をわかっている気がします(笑)! やっぱりジョン自身がこの作品が大好きだし、すごく楽しんで演出されているし、それが伝わってくるんですよね。丁寧に大切に作り上げたいという思いがわかるからこそ、私たちもすごく真剣に取り組むし、楽しむところは楽しむし。だからみんなが笑顔で、気持ちが明るくなるようなすごく素敵な作品になっています」
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――その"言葉"というところでは、シェイクスピア劇ならではの大変さもあるのでは?

「そうなんです。ジョンにも今回、"言葉を大切に"と言われています。でも私はこれまで、セリフから入っていくお芝居の作り方をしたことがなかったんです。どうしても感情から入ってしまう。大げさに言うと、その気持ちが自分の中で消化できていないと動けないし、セリフも出てこなかった。例えば「好きです」という言葉も、"好き"という気持ちがないと言えないと思っていたんですね。ですので、その気持ちが出来上がる前にまずその言葉を言う、という今回の形は最初はすごく戸惑いました。でもシェイクスピアのセリフって、歌のように流れが出来ていて、スピード感があって、大げさに言えば棒読みで言っても感情が乗っているようになるのがいいところなんだ、と思いました。私も15年も舞台に立っていますが、今回初めて気付くことがいっぱいあるんですよ。いまはジョンのアドバイスを信じ、言葉から入るという新しい挑戦をしている最中です」


――流れにそってやれば自然と感情がついてくる...というのは、ミュージカルに近い感覚でもありますね。

「そうですね、テンポもなめらかで、スピード感もあり、あっというまに終わってしまうような作品。実際に音楽も劇中にたくさんありますし、ふだんストレートプレイをあまり見ない方にも、楽しんでいただけるんじゃないかなと思います」


――そして、『十二夜』は"ロマンチック・コメディ"と銘打たれていますが、日本人が言うところのコメディ、喜劇とは少し異なっています。

「たしかに、上質な笑いとでも言いますか。たぶん個々のキャラクター、どの役も共感できるところがあるんです。そんな登場人物たちを真面目に演じれば演じるほど、クスっときてしまう。笑わせようと思ってやっているわけではなく、その役を真剣に生きている上で起こってしまったハプニングだったり勘違いだったりが、お客さまにとってすごく楽しいものになってくる」


――ちょっとまぜっ返させていただくと...橋本さんは笑わせようとしているような...(笑)。

「(笑)。ちょっとしているかもしれませんねぇ。でもさとしさん演じるマルヴォーリオの場面は本当に素晴らしく、いち観客としていつも観てしまっています」


――「マルヴォーリオいじめ」と呼ばれるシーンですね。稽古場でも拝見しましたが、あそこは観る人に「ひどい」と思わせず、笑いに持っていかなければコメディでなくなってしまいますので、その点橋本さんの楽しさは素晴らしかったです!

「そこはシェイクスピア・マジックといいますか、すごくなめらかに大らかになっていますし、さらにさとしさんの演技で、"まろやか"になっていますね。...さとしさんご本人は「俺が一番の被害者だよ!」って仰っていますが(笑)」
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――ところで、シェイクスピア作品は宝塚時代にも『ロミオとジュリエット』に出演されていますね。

「はい。でもあれはミュージカルということもあり、シェイクスピアの言葉の楽しさをそこまで感じながら演じていなかったので、今回は本当に初めてに近いと思うくらいに、シェイクスピアならではのリズム感や言葉遊びに触れています。やはりどうしてもなかなか日常生活に使わないワードや言い回しがいっぱい出てくるので、最初は壁にぶつかっていたんですが、そこをきちんと納得いく状態にしてからジョンが進めてくださっています。気になったことやわからないことはジョンと相談して、日本語としてあまり変なものは使わないように、でも原作に忠実にとひとつひとつ確認する作業を重ねてきましたので、今はしっくりきているし、もっと慣れてくればもっともっと楽しめそうな気がします」


――シェイクスピアに、ハマりそうですか?

「これはもう、ハマりそうですね...! 今は『十二夜』にどっぷり浸かっていますが、物語によって色が違うでしょうから、ちょっと重たい悲劇とかもやりたいですね」


――音月さんにとっても新しい扉が開きそうですね。

「すでに新しい引き出しがいっぱい増えてきている感覚があります。ジョンが導くお芝居の作り方もそうですが、初めてのキャストの方との化学反応もあり、刺激を受けていますし、今すごく充実しています。観てくださるお客さまの期待もいい意味で裏切っていきたい。やっぱり宝塚時代から観てくださっているファンの方は、"宝塚の男役・音月桂"というものをイメージしていらっしゃると思いますが、今回男性を演じるというのは同じでも、ぜんぜん違うものになるような気がしていています。同じ舞台上にホンモノの男性がいらっしゃる中で嘘はつけないし、宝塚の男役としての美学とはまたぜんぜん違う。ただ、やっぱり宝塚での男役を経験していて良かったとも思います。立ち回りもありますしね。でもそこに頼りすぎちゃいけない。宝塚の男役はやっぱり美しく描かれた男性像ですので、今回求められているのは多分、そこじゃないんです。いいものは残しつつ、でもそこに寄りかかりすぎずにちゃんと自分の新たな男役というのを確立していけたらいいなと思います。...もちろんそれだけでなく、女性役も演じますしね。せっかくシェイクスピア作品に出演するという機会をいただいていますので、楽しみたいです!」

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取材・文:平野祥恵
撮影:源賀津己



【公演情報】
3月8日(日)~30日(月) 日生劇場(東京)
4月7日(火) iichiko グランシアタ(大分)
4月10日(金)~12日(日) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)

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限定公演に限り、S席1名9000円(2名18000円)のお得な「ペア割」を発売中です。
※定価=S席-12000円
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