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先日の「どこどこ日記」で「ドイツでは『子ども施設の子どもの騒音への特権付与法』という記事に対して、たくさんの反響をいただいた。そこで、ドイツの事情に詳しい友人のジャーナリストにお願いして、その背景を調べてもらった。「子ども騒音」に対する判決で幼稚園が閉鎖に追い込まれる事態に、自治体が条例で対抗し、また議論が大きくなって、法制定に至ったという流れがあったようです。それでは、さっそく報告を紹介しましょう。

[友人のジャーナリストの報告]

  ドイツで「幼稚園がうるさい!」の議論が激しくなったのは、2007〜2008年頃から。近隣住民が閉鎖・移転を求める裁判が複数あり、2008年10月にはハンブルク・オトマルシェン地区の幼稚園が地裁により使用差し止めとなりました。定員60人くらいの規模でしたが、居住区に指定される地区にあったため、高等行政裁判所がこの程度の規模でも静閑を乱す施設は許されないと判断したものです。

 2009年5月にはベルリン市フリーデナウ地区の「ミルヒツァーン幼稚園」が移転せざるを得ない事態になりました。商業・住居用建物に幼稚園が入っていたため、地方裁判所が目的外使用と判断したためです。

 さすがに、子どもの遊び声そのものを違法とはできないので、その地域や建物が静閑を期待する場所であるかどうかが問われたようです。

 ハンブルクではその後も(幼稚園側が)敗訴し、やはり規模縮小・防音壁でとの妥協案も浮上したのですが、判決自体がスキャンダルだ、と言う声が強まり、結局、市の条例で子どもが原因の音は騒音として扱わないと言うことを決めたようです。

 ベルリンも同様の対応を。その当時の雑誌の記事を訳出しましょう。

独誌「シュテルン」電子版2010年1月16日記事

「ベルリン市が新州法 ”子ども騒音”を保護」

記事リード;

 ドイツにおいて子どもの遊び声は近年、美しき調べとは響かなかった。だがこのたび、ベルリン市はドイツ連邦各州に先駆けて新たなルールを作ることとした。今後、首都ベルリンにおいては子どもによる騒音は法的に保護される。子どもたちの成長は、もはやこれ以上妨げられない。

記事本文;

 連邦各州で初の取り組みとして、ベルリン市は子どもによる騒音を法律上明確に保護し、近隣住民の便宜は後回しにする。市環境局は「子どもが原因の音は、今後、法的にも社会的にも受け入れられ、容認すべきものと判断されることになる」としている。

 関係するベルリン州環境侵害防止法の改正は、この水曜日に施行される予定だ。これにより、幼稚園、休暇施設など子どもの使用が想定される施設は、その存在が保障される。

 州環境政策担当のカトリン・ロンプシャー州上院議員は「音を立てずして子どもたちが健康に育つはずがない。遊び場だろうと、家だろうと幼稚園だろうと、子どもの騒音は子どもの心身の育成に属するものだ」と言う。「もし、子どもの有する成長の権利に貢献したいのなら、近隣住民は、耳障りでも子どもによる音は基本的に容認しなければならない。子どももまた、自分の周りの許しによって存在していることを学ばねばならない」とも述べた。

 一方、連邦議会ではFDP(自由民主党)などから批判が出ている。連邦議会FDPのユディス・スクレドゥニー議員は「子どもの音が子どもの成長に属するという点に焦点を当てた点は歓迎する」としながらも、連邦政府全体の取り組みがなければ「ベルリン市だけが突出するのは誤ったシグナルを送る」と言う。各州がバラバラな対応を取れば、かえって目的に反する結果になりかねない、という主張だ。「ドイツは全体が家庭により優しくならねばならない」と同議員は言う。「よって、子ども騒音の問題は、連邦政府全体のテーマとして扱うべきだ。権利が各州で分かれている状況を許せば、子どもに優しい、あるいは優しくない州に連邦を二分することになる」と同議員は警告した。

(友人のジャーナリスト訳・報告終わり)

 そして、連邦政府全体への法制定につながっていったのでしょう。ただ、この問題が表面化したのが、2007年とまだ歴史が浅いことにも着目したいと思います。それまでも、幼稚園からの子どもの声はあり続けていたことだろうし、住宅街の静穏という住民の要求と衝突する事態もあったことだろうと想像する。なぜ、この時期に司法判断で排除されかけた「幼稚園騒音」が、条例や法によって「騒音」から外されたのでしょうか。そのあたりを、さらに調べてみることにしたい。



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