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初音ミク・ワンカップPが語る「休止宣言の真相」

2009年07月13日 12時00分更新

文● 全農連P、広田稔/ASCII.jp編集部

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泣きながら音楽機材などを捨てた

── ニコ動以前も、作品作りはされていましたか? 例えば、音楽など……。

わP:子供の頃にエレクトーンをやっていましたけど、すぐに辞めました。のちにオプコードの「Vision」というソフトに出会って音楽作りを始めます。Visionはかなり使いやすかったんですよ。「Aメロ」「Bメロ」「サビ」という感じで各パートの音を作って、それらをブロックのようにくっつけると、それだけで1曲が完成してしまう。作ったMIDI音源をニフティのフォーラムで公開したりして遊んでいました。

 でもWindows XPのパソコンを買ったときに辞めてしまった。VisionがXPに対応しなかったんですよ。前に使っていたパソコンのOSはWindows Meだったんですが、なかなか大変なOSだったので「そこに戻ってはいかん」と苦渋の決断で音楽作りを中断してしまった。

 それでも「やっぱり音楽をやりたい」という気持ちはあって、リサイクルショップなんかに行ってはアナログシンセを買ってきて部屋に並べていました。その頃は物欲に支配されていましたから。ACIDもそのときに買いましたが、「これは難しいぞ」と放置してしまいましたね。


── その後も音楽作りを続けていたという?

わP:いや、その集めた機材は全部捨ててしまったんです。ニコ動に動画を投稿する前くらいに、あまりに趣味を広げすぎたので「こんなオッサンじゃダメだ」と思い立って、人生の軌道修正をすることにしたんです。それで、今までため込んでいた物を一切合切、廃棄してしまった。もう泣きながらほとんどすべて捨てましたね。

 物との別れが辛かったわけではなくて、「今までの人生、何でこんなことに時間を割いていたんだろう。こんなことやっていたから、こんな『腐ったおっさん』になっちゃったんだ」ということに泣いたわけです。きれいさっぱり捨て終えて、「これで仕事を頑張って、休みの日は趣味のローラースケートでもしよう」と思っていました。


── そこからニコ動でデビューするまでに、何があったんですか?

わP:2007年の夏頃、ニコ動に上がっていたワンダーモモーイのアイマスMADを友人に紹介されて、それに衝撃を受けたからです。「何事だこれは!」と。


アイマスMAD ゲーム「THE IDOLM@STER」のダンスシーンなどを使ったマッシュアップ作品。「THE IDOLM@STER」は、ニコ動内で非常に人気が高い。


わP:そこからアイマス動画を散々見てハマっていきました。この時点では、アイマスがゲームであることすら知らなかったわけですが。まあ、それがニコ動を見るようになったきっかけですね。

 その後、8月くらいにMEIKOに某ゲームのオペライベントを歌わせた動画にショックを受けて、MEIKOを買いました。もう即決でしたね。

 8月31日に新しい「初音ミク」が発売されるというのを知って、「これはブームの予感がする。そしてスタートダッシュが重要だ」と直感して、すぐにAmazon.co.jpで予約しました。仕事も休みを取って、万全の体制でミクを迎えたわけです。


初音ミクが届くのが怖かった

わP:そうしたら「konozama」だった。「届かないぞ!」と。「ゲーム音楽に馬鹿みたいな歌詞載せてみたいんだ」と思っていたのに、一番キャッチーな素材であるミクは届かない。でも時間はあるし、恨みは募るし……。そういう切々とした思いをMEIKOに歌わせて投稿したわけです。



konozama オンラインショップ「Amazon.co.jp」で注文した商品が中々届かない状態を指すネットスラング。「Amazon ok」を皮肉って逆さ読みで「konozama」と呼ばれている。


── でも、その動画にアンサーが来ましたよね。

わP:基本「構ってちゃん」なので、すごく嬉しかったです(笑)。ニコ動は、そうやってダイレクトに反応が来るのがいいですよね。当時は「こんな構われ方は鼻血出ちゃうよ」というような感じでした。

 でも、そこからが戦いです。「初音ミクが届くのが怖い」という。じきに来るのだから、それまでにドラマ的な展開を作って盛り上げようと、矢継ぎ早に作品を投入しました。そういう作品の中でひとつやりたかったのが「気分よく歌を聞かせているときに、ブチッと曲を切る」ということ。臨時ニュースという感じです。


── 例の「ママローヤルα」の歌ですね

わP:あの動画で使っているファイナルファンタジー4の「愛のテーマ」という曲は、ママローヤルαのCM曲と似ているなぁと思っていたんです。CMと愛のテーマ、どちらを先に聞いたのかはよく覚えていませんが。



  ── 最後の「大団円」の曲に「迷宮組曲」を持って来たのはなぜですか?

わP:もう絶対これでやろうと思っていました。曲自体が、途中でふたつの音が掛け合って出てくる構成で、展開がすごくドラマチックなんですよ。

 それまで「初音ミクが来ない来ない」と言ってきたのに、途中からコーラスでミクが入ってきて、最期にMEIKOとの掛け合いにする──。そうした最終回にふさわしい流れだなと。でもこれやったらもう「ミクが来ないシリーズ」は終わりで、引きずることはできないなとも思いました。


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