MR(Mixed Reality)が産業にもたらす可能性と未来―MRの利活用に向けて

MRとは何か?

1994年にカナダ・トロント大学のポール・ミルグラム氏*1らによって提唱されたMR(Mixed Reality:複合現実)は、XR(eXtended Reality)という言葉に含まれる概念の1つであり、現実空間と仮想空間を融合させ、相互にリアルタイムで影響し合う空間を構築する技術を指します。CGで表現された仮想世界に没入するVR(Virtual Reality:仮想現実)、透過型ディスプレイやスマートフォンに、カメラでリアルタイムに撮影された映像とデジタルコンテンツを重ね合わせて表示するAR(Augmented Reality:拡張現実)といった技術との相違点は「現実空間を認識する仕組みを備えているか」という点にあります。MRは、透過型のディスプレイ上に表示されているCGの人形を実在する机の上に飾り、周囲のさまざまな視点から眺める、といったことを可能にします。

VRやARが人間の入力したデータをコンピュータ処理し、ディスプレイへ表示するまでを基本的な仕組みとするのに対し、MRはセンサーやカメラにより現実空間の位置関係を把握し、立体音響の再生といったことを可能にします。

MRとは 何か?

MRを実現するデバイスはすでにプロダクトとして販売され、私たちにも入手可能になっており、さまざまな産業分野で利用され始めています。

MRデバイスの歴史と現在点

MRを実現するプロダクトとして初めて市場に流通したのは、2015年1月に発表されたHoloLensでした。外部接続を必要としないスタンドアローン型のヘッドマウントディスプレイで、コントローラーが存在せず、ハンドトラッキングと音声入力で操作できました。光学式カメラと深度センサーで周辺環境を認識し、透過型ディスプレイを通して現実空間にコンテンツを重ねて表示するという、新しい体験を提供するデバイスとして市場に認知されました。

続いて、Magic Leap Oneが2017年12月に発表されます。データを処理する機器のリソースを外部の独立した演算デバイスに移し、ディスプレイ部分を大幅に軽量化。視野角を拡張したり、視線に応じて映像の見え方を切り替えたりする機能など、デジタルコンテンツをより現実になじむ形で表示することを可能にしたことで、先行するHoloLensの地位を脅かす製品となりました。

そして、2019年11月にはHoloLensの後継機となるHoloLens2の販売が開始されます。初代HoloLensからディスプレイの視野角、アスペクト比、解像度、演算や着用感など多くの性能が向上しました。また、センサーが追加されたことで、装着者の5本の指の動きをすべて検出できるようになり、ホログラムをつまんだり、握ったりするといった操作を実現させ、実用性も向上しました。

これらのMRデバイスは高額かつ高性能で、主に産業向けでしたが、2020年8月に登場したNrealLightは、主に一般消費者向けとして開発されました。スマートフォンとの接続を前提とし、データを処理するリソースを外部に移すことで軽量化に成功。カメラの数や表示ピクセル数、環境把握や各種トラッキングの精度などの性能面では産業向けデバイスに劣るものの、大幅な低価格化を実現し、手軽にMRを体験できるデバイスとして注目されました。

2021年6月現在、市場に出回っている主なMRデバイスは前述のHoloLens2、Magic Leap One、NrealLightの3製品で、それぞれが独自の強みを持っています。

 

HoloLens 2

Magic Leap One

NrealLight

ヘッドマウントディスプレイ部の重量

566g

316g

106g

解像度

2K(片目あたり)

横1280p*縦960p(片目あたり)

横1080p(片目あたり)

外部機器

なし

専用演算デバイスコントローラー(6DoF)

スマートフォン
コントローラー(3DoF)

トラッキング

  • ヘッドトラッキング(6DoF)
  • ハンドトラッキング(6DoF)
  • アイトラッキング
  • ヘッドトラッキング(6DoF)
  • ハンドトラッキング(6DoF)
  • ヘッドトラッキング(6DoF)

主な特徴

ハイスペックで重く高価。完全なスタンドアローン型で、主に産業用途に適する。

スペックと価格や重量のバランスに優れ、産業用途からエンターテイメントまで幅広く適する。

性能面では劣るものの圧倒的な軽量さと低価格を実現。主に一般消費者向け。

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執筆者

岡本 弘毅

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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板橋 清周

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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