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山口組ナンバー2・高山清司若頭が出所 分裂キーマン…再統一に動けば抗争激化か

JR名古屋駅に到着し、迎えの車に乗り込む高山若頭(中央)=18日午前、名古屋市中村区

 国内最大の指定暴力団山口組ナンバー2の高山清司若頭(72)が18日、刑期を終えて府中刑務所(東京都府中市)を出所した。高山若頭が服役中に山口組は神戸山口組など3団体に分裂し、互いに対立。10日には神戸市の同組系組事務所前で組員2人が射殺され、山口組系幹部が逮捕された。警察当局は高山若頭の出所を契機に山口組が分裂団体への圧力を強め、抗争が激化する恐れもあるとみて警戒を強めている。

 午前6時前、小雨が降る府中刑務所。20人超の機動隊員や報道陣が見つめる中、高山若頭を乗せたワゴン車が出発した。

 午前7時すぎ、JR品川駅に到着。黒っぽいジャンパーに帽子姿の高山若頭は東海道新幹線のホームへ。首にコルセットのようなものを巻き、つえをついてゆっくりと歩き、車両に乗り込んだ。

 午前9時前、名古屋駅で下車。「お帰りなさい」。声を掛けた組員や警察官数十人に取り囲まれて移動。利用客で混雑する構内は騒然とした。その後、市内にある出身母体、山口組弘道会の傘下組事務所へ。篠田建市(通称・司忍)組長(77)と面会したとみられる。事務所には重箱が運び込まれ、出所祝いも行ったもようだ。

 高山若頭は「類いまれな指導力と集金力」(警察幹部)で、弘道会を山口組の最大勢力にした中心人物。篠田組長が2011年4月まで5年以上服役した際は、組の運営を実質的に担い、直系組長を山口組総本部(神戸市)に頻繁に集まらせるなど強硬姿勢で統制を強めた。

 傘下組織には毎月、高額の上納金を義務付けた上、組員にフロント企業から水やたばこなどの日用品を買わせるなどして収益基盤を強化。金は服役した組員への手当などに充て忠実な部下を増やした。だが、厳しい取り立ては傘下組織の不満と反発を招いた。


 高山若頭は10年、京都市内で男性から4000万円を脅し取ったとして恐喝容疑で逮捕。14年5月に恐喝罪で懲役6年の判決が確定、翌月に収監された。これを契機に山口組は分裂。15年8月に神戸山口組、17年4月には神戸山口組の一部が離脱して現在の任侠山口組を結成。団体間の抗争がスタートした。15年8月以降、3団体が絡む抗争とみられる事件は今月16日までに計129件発生、9人が死亡した。

 高山若頭は山口組の再統一に動くとされ、抗争が激化する可能性がある。捜査関係者は「高山若頭は『やられたらすぐにやり返す』という暴力団のおきてを重視する。攻撃は激しさを増すだろう」と不安を隠せない。

「高山若頭としては、自分の服役中に発生した組の分裂を収拾して、再統一を図りたいと考えているだろう。だが、今の情勢では不可能だ。今年は皇室の一連の行事、来年は東京五輪・パラリンピックの開催があり、時期的にも抗争を自粛しなければならないからだ。

 暴力的に他団体を締め付けることもできない。実行犯の組員ばかりか組長も逮捕される組織犯罪処罰法で、高山若頭や篠田組長も捕まる可能性がある。組員が死亡した場合、遺族に民事で組長の使用者責任を問われれば、億単位の損害賠償が発生しかねない。

 同じことは他の2団体にもいえるため、事態が一気に片が付くということはない。ただ抗争自体は続くはずで、事件はポツリポツリと起きるだろう。今後の展開は長い目でみないと分からない。」

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